生産管理・在庫管理 “うそ”発見! その③

Webをググってたら見つけたものです。
<うそ発見!その③>
「安全在庫の古典理論計算式は科学的な誤りであることが判明しました」

結構衝撃的なメッセージですね。その説明もちゃんとあります。
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統計的安全在庫の理論(古典理論)として、半世紀以上の歴史を持ち、大学で教えられ、国家試験でも出題されている下記の安全在庫計算式は、科学的な誤りであることが判明しました。
安全在庫=安全係数×√(リードタイム)×需要の標準偏差
科学の基本であり、法則の正誤チェックに物理学者がよく用いるディメンジョンチェックをこの計算式に適用すると
[N]=[√(TN)]
N:個数・回数
T:時間
となって、左右両辺の単位が一致しないので、この計算式は科学的に誤りであると結論づけられるからです。
?????????????????????

安全在庫の式って、在庫管理の本には必ず出てくる式です。これが科学的な誤りだ、といううんですから、これまでの本やら、論文やら、みんな直さなくちゃいけなくなりますよね。これは、結構大ごと。で、この珍説を“カンシキ”

小売店を覗いてみます。ある商品に着目します。今、簡単にするために、1人の客は1個しか買わないとします。そうすると来客数=売上数(需要)となります。客はランダムに来ます。例えば、ある日は2人、次の日は7人、、、、平均客数/日は5人/日としますか。客数/日の分散もエクセルかなんかで簡単に計算できます。では、1週間での平均客数とその分散はどうなるか。

先ず、平均は、
平均客数/週=平均客数/日+平均客数/日+・・・=7 ×(平均客数/日)
と簡単。では客数/週の分散は、、?

その前に、前提条件を確認しておきます。来客間隔の母集団は同じ、とします。もうひとつ。来客間隔は過去の経過とは関係ない、という条件です(これをマルコフ性とか言ってます)。つまり、前の日の来客が多かったので今日は、、、とか、ここ1週間客が少なかったので来週は、、とか、ということはなく、来客間隔はもともとの母集団に従う、ということです。言い方を換えると、昨日の来客数と今日の来客数は独立である、ということができます。

客数/日の分散は独立だとなれば、分散の加法性が成立します。で、
客数/週の分散=(客数/日の分散)+(客数/日の分散)+・・・=7×(客数/日の分散)
となります。

ここまでまとめますと、ある一定の観測時間の間にランダムに到着する客数の平均と分散は観測時間に比例する、ということになります。上の例で言えば、来客数を数える日数に比例する、ということになります。安全在庫を求めるときは、分散ではなく標準偏差が必要です。標準偏差=√分散、ですから、客数/週の標準偏差は次のようになります。
客数/週の標準偏差=√7×√(客数/日の分散)=√7×(客数/日の標準偏差)

√7の7は、7日という時間単位を持つわけではなく、集計時間が7倍(1日が7日)になったという比率を表し、従って、ディメンジョンはなし、です。

で、安全在庫の式を、もう少し、正確に書きますと次のようになります。
安全在庫=安全係数×√(リードタイム/単位時間)×単位時間での需要の標準偏差

ディメンジョンチェックをしてみます。安全在庫のディメンジョンは個数。安全係数はディメンジョンなし。標準偏差のディメンジョンは個数。で、√の中のディメンジョンは? √の中身は、(リードタイム/単位時間)で、時間の比ですからディメンジョンはなし。つまり左辺のディメンジョンは個数、右のディメンジョンも個数、、、でしょ。どこもおかしくありませんね。

安全在庫の計算はある期間の需要分布の計算と同じです。背後にある前提条件は需要分布は正規分布する、っていうことですね。これは経験的に、納得。正規分布であれば、平均値と標準偏差がわかれば任意の範囲の確率が簡単に計算できます。2σでは2.28%、3σだと0.13%とかうやつです。

「安全在庫の古典理論計算式は科学的な誤りである」とした根拠は、式の左右でディメンジョンが合わないから、と。その式が、
安全在庫=安全係数×√(リードタイム)×需要の標準偏差
この式だけみれば、ルートの中のリードタイムは時間のディメンジョンを持つと思ったのでしょう。しかし、ある一定の観測時間の間にランダムに到着する客数の平均と分散は観測時間に比例する、というメカニズムから、正しい安全在庫の式は、
安全在庫=安全係数×√(リードタイム/単位時間)×単位時間での需要の標準偏差

となり、√の中は(時間/時間)で、ディメンジョンはなくなるんですね。

同じところにこんなのもあります。
????????????????????
「リードタイムを、0.5ヶ月、2.3日、、、などと数えて安全在庫を計算するのは論理的な誤りです」
古典理論が仮に正しいと仮定しても、その安全在庫計算式において√の中のリードタイムを0.5ヶ月、2.3日などと数えるのは大きな間違いです。
古典理論では、「分散の加法性」を数学的な基礎としているために、このようにリードタイムを数えることは、論理的な破綻であるからです。
リードタイムが15日なので、月数にすると0.5ヶ月になると計算するところまではよいのですが、この0.5ヶ月という値を安全在庫計算に用いるのは間違いとなります。在庫理論をきちんと理解しているコンサルタントやエンジニアは、決してこのような計算方法を教えることはありませんので、ご注意ください。
????????????????????

これも同じ穴の貉。「うそ」ですね。既述の説明をみれば、「うそ」だっていうのが、すぐわかりますよね。ルートの中のリードタイムは時間のディメンジョンではなく、時間の比ですから、0.5だって、2.3だって、まったく問題はありません。

でも、このくだりは引用させていただきたく、、。
<<在庫理論をきちんと理解しているコンサルタントやエンジニアは、決してこのような計算方法を教えることはありませんので、ご注意ください。>>

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100のうそ;うそつきはトランプ大統領だけではない!

「トランプ大統領の100のうそ」。ニューヨークタイムズの記事です。一方トランプ大統領は、すべてのメディアのニュースはフェイクニュースだ、って。お互いに、お前の言っていることはうそだ、って罵っているわけですが、いやはや、なんとも、品のない大統領がでてきたもんです。

100のうそは、うそだという根拠も示しているようですので、一般の市民はニューヨークタイムズの方を信じるんじゃないかと思うんですが、どうも、そうでもないらしい。メディアへの不信感がトランプ大統領へのそれを上回るんだそうで。こうなると、何が本当で、何がうそかわからなくなりますね。

うそか本当かわからない、という話は、生産管理や在庫管理の世界でも、あります。結構ありますよ。思いつくまま、挙げてみようかと思うんですが、、、TOC(制約理論)が提唱する生産方式であるBDR(Drum Buffer Rope)関連の話から始めてみますか。

<うそ、その①>「バランスのとれた工場に近づけば近づくほど、倒産に近づく」
これは、ラインバランスが100%に近づくと、生産ラインは混乱して、生産性が大幅に低下する。そのような会社は倒産する。だからバランスのとれた工場はこの世に存在しないのだ。と「ザ・ゴール」の中で表現しているくだりです。これはすぐに“そうおぉ?”ってなりますよ。トヨタって、ラインバランス100%を目指してる。倒産どころか、世界のトップクラス。
こんなの、シミュレーションをしてみればすぐわかるのに。ボトルネックラインと比べて、ラインバランス100%のラインが不安定だというわけでもなし、生産性が悪いわけでもないし。

<うそ、その②>「システム改善の5ステップ」
改善の5ステップとは、次のようなものです。
1、システムの制約条件を見つける
2、制約条件を徹底的に活用する
3、制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
4、制約条件の能力を高める
5、制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る。但し、惰性が次の制約条件にならないように注意する
(ここでは、システムは生産ライン、制約条件はボトルネックと考えてください)

「制約条件の能力を高める」と、、、ラインバランスはよくなりますね(100%に近づく)。「制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る」んですから、1~5のステップを繰り返しながら生産性を上げていくということになります。「システムの制約条件を見つける」とありますが、ラインバランスが100%に近づくと、どこが制約条件なのか、わからなくなりますので、そこでこのサイクルは止まります。で、どういう状態かと言いますと、そうそう、「バランスのとれた工場に近づけば近づくほど、倒産に近づく」。

「改善の5ステップ」というよりは、「倒産に至る5ステップ」、、ですか。

ちょっと、視点を変えて。生産能力の低い工程から改善するというのは合理的だと思います。そして、このステップ。ラインバランスを100%に近づける方法でもあり、それはトヨタ生産方式の目指す方向と一致するわけです。ですから、「5ステップ」のうそ程度はそれほどでもない、のかもしれません。

しかし、この5ステップ、TOCの基本概念のひとつなんですよ。TOCは思考プロセスとかプロジェクト管理などの分野もありますが、5ステップの意味がかなり歪んでいるとなれば、少なくても、DBRは有効な生産管理手法ではなさそうだ、ということに、、、。

“生産管理・在庫管理 うそ 発見!”  おもしろそうな“ネタ”なので、、、少し続くかも、、、

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適正在庫論にだまされるな!

在庫管理と言えば、「適正在庫」。欠品と過剰在庫に悩む在庫管理者にとってはお馴染みの言葉ではないかと思います。表現はいろいろあるようですが、「欠品を防止(欠品率をある値以下にするという意味を含んでいます。以降同じ。)ししつつ保持する最少在庫」、といった意味のようで、その平均をいうようです。で、式であらわすと、

適正在庫=サイクル在庫+安全在庫

だと、説明されています。

在庫管理とは、言ってみれば、適正在庫を実現するための管理方法。だとすれば、適正在庫論は在庫管理のコアの部分です。逆に言えば、適正在庫論をみれば在庫管理がわかる、ということ、ですかね。

で、この適正在庫とやらを、鑑識! その前に、ひとつ、確認しておくことがあります。適正在庫とは、在庫管理場所(倉庫、仕掛置き場、小売店、、)に存在する実在庫を指しているようなんです。そこに在庫がなければ出荷できずに欠品となる、ということは、実在庫を指していますよね。

時間軸上でも確認しておきます。過去の実在庫はそのものですが、未来の実在庫は、在庫があるわけではないので、予測実在庫ですね。

実在庫は入庫、出庫のたびに増減しますので、その都度在庫数量を記録して、ある期間で平均値を出すわけですが、実務的には日ごととか週ごと、月ごとに在庫数量を記録することになります。入出庫ごと、日ごと、週ごと、月ごとと記録条件が違えば、算出される平均値も異なりますが、まぁ、こんなのは、些細なこと。

もっと重要な点を、少し、詳しくみてみます。おなじみの発注点発注方式を例に。発注点の式は次のように説明されています。

発注点=納入リードタイム間の平均需要+安全在庫

安全在庫は、
安全在庫=(単位時間での需要量の標準偏差)x安全係数x√納入リードタイム

適正在庫と同じような言葉ですが、理想在庫っていうのがあります。適正在庫とおんなじ式で表されていますが、より具体的に、次の式で説明されています。

適正在庫(理想在庫)=(発注量/2)+安全在庫

発注量は、EOQ(経済的発注量)っていうのがありますが、最近はあまりはやらないようです。じゃ、どうやって発注量を決めるか。取引条件だとか、在庫スペースとか、発注作業だとか、が関係してくると思うんですが、はっきりしてないんです。これまでの惰性で、なんとなく、ということもあるかもしれません。根拠が曖昧。ということは、適正在庫もはっきりしない? 適正在庫、適正在庫って、言っておきながら、、適正かどうかの根拠が不明。

発注点の式と適正在庫の式を眺めて、変だな、と思うところがもうひとつ。発注点と発注量の関係についての記述がない。これって、すごく大事なことじゃないかと思うんですけどね。すぐわかることですが、発注量を発注点以下にすると、在庫補充されても発注点を超えませんので、その後の発注は行われないことになってしまいます。在庫補充が機能しない。こんなことについても、説明はどこにもない。

発注点方式では納入リードタイムが長くなると、発注点が上がってきます。発注点が上がれば、前記した理由で、発注量も多くなる。そうすると適正在庫ものこぎりの歯のように上下して、多くなる。何とか、発注量を減らそうと工夫するわけですが、例えば、補充発注して入庫されるまでの間に、その前に補充発注した分が入庫されるようにする。発注残が納入リードタイムをまたぐようになり、発注点よりも少ない発注量で回るようになります。

こうなると、欠品しない条件が実在庫だけではだめで、発注残も含んでおく必要がでてくるわけです。こういうことも、どこにも書いてありません。

適正在庫とは、理想的な在庫であって、在庫管理は適正在庫を目指す、わけです。が、適正在庫論とは、実に、いい加減というか、お粗末ですね。ところどころ部分的に正しいところもあり、まったくデタラメでもないところが、悩ましいところで、だまされる人も多いんじゃないでしょうか。

じゃ、正解は? 正しい在庫理論の基本は、「かんばん方式」にあります。欠品を防止するためには、適切なかんばん枚数を設定する。このかんばん枚数が適正在庫に相当します。部品を使う場所でかんばんとともにある現物が実在庫、その他のかんばんは発注残や発注待ちとなります。適正在庫論は実在庫だけに注目しているようで、実在庫の量をみているだけでは欠品は防げないんですね。実在庫、発注残、発注待ちを包括してみなければならないんです。かんばん方式がすぐれている理由は、在庫補充の理屈にちゃんと合っているからなんです。

かんばん方式がいいのはわかっているが、平準化だ、変動は3%以内だ、とか、条件がうるさい、と嘆かれている方も多いと思います。しかし、理論に合っているかんばん方式が、平準化だ、変動が3%以内だ、という理由で使えない、というのは、逆に、理屈に合わないわけです。

平準化や変動が大きいことは、かんばん方式の論理性を崩すことにはなりません。変動が大きくても、かんばん方式は立派に成立します。なぜ、かんばん方式が、バラツキの大きい一般の在庫管理に使えないかというと、バラツキをうまく処理できていないからだと思います。つまり、
*かんばん枚数の変動
*収容数(かんばん1枚の数量)の変動
*補充時間(かんばんがはずれて、部品とともに戻ってくる時間)の変動
を許容すればいいわけです。

「そんなこと、簡単にできんの?」

えぇ、簡単にできるんです。

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日産は本気で、100%受注生産をめざしているのか

トヨタ生産方式(以下TPS)ばっかし、取り上げているので、今回は日産生産方式をまな板の上に。

もう20年も前のことです。こんなニュースを目にしました。

“日産は、1997年5月に100%受注生産を目指す受注生産型『同期生産』;NPW(Nissan Production Way)を発表した。”

当時、日産の経営状態はよくありませんでした。純利益は赤字基調。この発表は経営改善の一環だったんでしょう。で、効果は? ぜんぜん出ませんでした。業績は悪化の一途。結局、ルノーとの資本提携、カルロス・ゴーンの登場となるわけです。1999年3月、同年度の純利益は6,840億円の純損失。しかし、その後、見事に復活を果たすわけです。ご承知の通り。最近は、「日産って、つぶれそうになったことがるの?」と、知らない人も多く、過去のはなしになってしまいましたが、、。

1997年5月と言えば、業績悪化に喘いでる最中のこと。何とかしなくちゃ、との思いが強かったんでしょうね。「100%受注生産、同期生産」。現実離れし過ぎたスローガンに違和感を覚えました。車の生産って、見込生産じゃないの、と思っていましたので。

そういえば、私事で恐縮ですが、初めてのマイカーは日産のチェリー。FFで4輪独立懸架。当時としては進んだ車でした。その後はカリーナ、クレスタとトヨタ社を乗り継ぎましたが、ブルーバードSSS、スカイライン、ローレルなどトヨタ車との差は紙一重。デザインのトヨタ、技術の日産という感じかな。拮抗してました。

バブル崩壊後、日産は元気がなくなりました。私の印象を決定的にダメにしたのが、「100%受注生産、同期生産」のNPW宣言でした。一瞬、量産はやめて、1台々々、受注生産するのかな、と思いましたが、そうでないことはすぐにわかりました。量産車を100%受注生産するっていうんです。日産がなんでこんな“嘘”をつくのか。これ以降、日産車が買い替え車の候補に上ることはなくなりました。嘘をつく日産の車に乗る気分にはなれなかったんです。

日産の幹部がまじめに「100%受注生産」の実現をとうとうと語っていたのを覚えています。「単なるキャンペーンのお題目だよ」と流せばいいのかもしれませんが、生産管理への関心が強かった私にはそうはいきませんでした。

日産とは関係ありませんが、巷では、他にも似たような言葉が聞かれました。

「垂直立ち上げ」
「在庫ゼロ生産」
「売れた分だけつくる;1台売れたら1台ライン投入」

この並びに「多品種少量一気通貫生産方式」「日産100%受注生産・同期生産」が連想されるわけです。このような表現がまかり通る時代だといえばそれまでなんですが、どれも誤解を招く過大表示、、いやいや、ほとんど実現不可能で、フィクションじゃないの? と。

振り返ってみれば、1970、1980年代の右肩上がりの時代は、そんな表現が多かったように思います。そんな表現も問題にはならなかった。いやむしろ、成長ですべての問題が隠され、士気向上、場の盛り上がりなどプラスの効果に目がいったのかもしれません。

1990年代に入り、バブルがはじけても、スローガンの過大表示化は続きました。続いたというより、さらに、過激になったんじゃないかな。その象徴が「日産 100%受注生産・同期生産」だと、私には映るんです。

「NPWにおける生産システム再構築」という資料を見つけました。
http://www.sjac.or.jp/common/pdf/info/news103.pdf

この資料をみて、使う言葉は多少違うが、TPSの焼き直しとすぐにわかりました。工場管理 2011/12号にこんなくだりが。

[特集 日産「モノづくりの底力」に迫る]

生産システムを意識しだしたのはこのころで、実はJIT の導入からであった。JIT の導入により生産システムという概念に気付いたのであった。これがNPW を始める大きなきっかけになった。JIT の導入によって生産システムの構成要素である「モノと情報の流れ」を見える化する道具が開発され、これを活用して製品や部品の初工程から完成までの工程分析が行われるようになった。そこでわかったことは、「なんと工程がたくさんあることか」「そのうち、停滞や運搬が大多数でないか」…などである。そしてこの現状の生産プロセスをどのように変えていけば良いのかという検討が現場と技術スタッフの間で行なわれ、生産システムのめざす姿が描かれるようになった。

この記事を書いたのは、「NPWにおける生産システム再構築」と同じ、日産のNPW改善コンサルティング室 室長です。

JITはTPSとほとんど同意語。道理で、NPWには新しいものがないのかわかります。よく見るTPS導入秘話的な、三文レポートにしか見えません。もはや、NPWのスローガン「100%受注生産・同期生産」なんていう虚偽スローガンとは決別したのかな、と思いきや、、、。9ページ「受注-納車のパイプライン」という図があります。受注してから生産し、納車する、という受注生産の図が。そして「同期」という言葉がやたら、多い。こだわりすぎですよ。「品質の同期」「コストの同期」。この資料の日付が2012年8月となっていますから、NPW発表から15年経っても、嘘をつき続けている、、、。ちょっと、言い過ぎ?

実は、受注生産と見込生産とは、生産管理において、非常に、いや、極めて重要なんです。世の中では、正しく識別されてないようで、これが生産管理を“ぐちゃぐちゃ”にしている主要因のひとつです。決してややこしい話ではないんですが、ねぇー。

受注生産とは、誰(買い手)が、いつ(買う日)、何(仕様)を、いくつ(数量)買うかが決まってから、生産を開始する生産方法。客の仕様の製品が多い、多品種少量生産が多い、在庫が少ないとかは、そんな傾向があったとしても、本質的な条件ではありません。

見込生産とは、買い手が決まらないときに、作り手側が何を、いつまでに、いくつつくるかを決めて生産を開始する生産方法。少品種大量生産、汎用製品が多い、自社設計の製品が多いとかは、関係なし。

もうひとつ紛らわしさに拍車をかけているのは、受注生産品も見込生産品も「発注―受注」という商取引で売り買いしていることです。受注生産品も、もちろん、見込生産品も受注して出荷。これが、受注と見込の区別を曖昧にしているんじゃないかと。

受注生産と見込生産は、生産管理においては、明確に区別しておかなければならないんです。その区別は非常に重要なんです。受注生産は時間管理が主、見込生産は在庫(仕掛含む)が主。つまり、“時間”の管理と“もの”の管理の違いです。物理的に、“時間”と“もの”とは全く異なるでしょ。だから、管理方法もまったくと言っていいほど違うんです。でも共通するところは、もちろん、あるんですよ。我々が住む時空(時間と空間)では時間とモノの動き(仕掛、在庫)は切っても切れない関係がありまして、、

だから、NPWの「100%受注生産・同期生産」という表現は許せないんです。上記の資料をみても、それを実現する科学的根拠はどこにもなし。虚偽表現と言われて、反論できますか。

そして2018年11月、日産復活の立役者カルロスゴーンの逮捕劇が報じられました。1年後、日本を秘密裏に出国し、逃亡。

「やっちゃえ、NISSAN」

やましきことを浄化する”おまじない”なんでしょうか。

うそ” がまかり通る日産の企業文化が、カルロスゴーン事件の背景にあるような感じがしてきます。[この部分 2020年2月追記]

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不確定要素を扱える生産理論はあるか

DBR(ドラム・バッファー・ロープ)を支える理論はありませんでした。というと、TPS(トヨタ生産方式)には理論はあるのか、と聞かれそうです。実は、TPSにはきちんとした理論があるんです。

1をみてください。P1~P1010工程直列ラインを例に、TPSの生産理論についておはなしします。TPSはバランスラインを目指します。理想的にはラインバランス100%。なので、P1P10の各工程の処理時間は全部同じ。生産ラインは各工程の処理時間(PT)と工程数(Np)で定義できるんです。

1  10工程直列生産ライン

PTNpで定義された生産ラインで重要な特性は何か? と聞くと、、。生産能力に工数、治工具、部品に工程仕掛、生産リードタイム、それから、、歩留まりに機械の故障、生産計画の変更、特急オーダーの飛び込み、、いやいやまだまだある、、。つぎからつぎと出てきます。が、本当に必要な特性項目は次の3つ。

①フロータイム(FT);投入から完成までの時間

②生産率(TH):単位時間当りの完成数

③工程仕掛(WIP

FTは次の式で求められます。 FT=PT x Np

THは次の式で求められます。 TH=1/PT

FTTHWIPの関係は次のようになります。 WIP=TH x FT

これだけ。簡単でしょ。ほんとかな、って疑ってますか? 数値を入れて確かめてみましょうか。

1工程の処理時間PT=10分、工程数Np=10 としてみます。投入はPTに合わせて10分ごとに1個投入することにします。FTTHWIPを計算してみます。

FT=10() x 10 = 100()

TH=1/10()

WIP=100() x 1/10()10()

生産率は10分間に1個、生産リードタイム100分、その時抱える工程仕掛は10個、ということになりますね。10分間に1個投入するということは、生産能力に対しては100%の負荷をかけている、ということになります。 

投入負荷率をρとすると、FTTHWIPは次のようになります。

FT=PT x Npt

TH=(1/PT) x ρ

WIP=TH x FT

ρ=50%とすると、次のようになります。

FT=10() x 10 = 100()

TH=1/10() x 50(%)=1/20()

WIP=100() x 1/20()5()

ρが100%以上ではどうでしょうか。この場合、投入口で待ち行列ができるだけで、これをWIPの増加ともみれますが、工程には入っていきませんので、投入が制限されるとみることもできます。ここでは後者の視点で捉え、上記の適用範囲をρ100% としておきます。

これって、理論というほどのものじゃありませんね。ちょっと考えればわかる、常識の範囲。これに、かんばん方式のかんばん枚数を計算する式を加えれば、TPSの理論武装は、まぁ充分でしょう。

平準化、バランスライン、ムダの排除、一個流し、標準作業、サイクルタイム、、、TPSで出てくる格言めいた言葉の数々は、どれも、この簡単な生産ラインの原理が働くようにしているのだ、とみると、TPSの理解も進むのではないかと思います。

現実には、変動がまったくない、なんていうことはありえません。TPSでは実用的な許容変動幅は3%以内、なんて言ってますが。それが5%になったからって、急にTPSが成り立たなくなるわけではありませんが、変動をありのまま受け入れるとなったら、それはダメ。変動が大きくなると、前記の簡単な生産ラインの基本式が成り立たなくなるんです。

一般の生産環境は、TPSが成り立つ場合よりも、成り立たないほど変動が大きい場合が圧倒的に多いんです。そのような環境にTPSを導入すると、全然ダメかというとそうでもなく、めちゃくちゃな生産ラインが多少はましになったり、の効果はあるわけです。が、トヨタを再現するほどうまくはいかないんですね。

変動を受け入れた生産理論を探し求めた背景は、TPSの限界に気付いたことでした。で、TOCDBR(ドラム・バッファー・ロープ)に興味を惹かれたわけです。約10年、TOCを研究してきましたが、生産理論らしきものは何も見つからなかったというわけです。

DBRだけじゃなくて、他の生産方式も調べてみました。一気通貫生産方式っていうの、ありますね。説明は次のようになっています。

==

一気通貫生産方式とは、多品種少量生産の進展や商品ライフサイクルの短期化に伴い、短納期化のニーズが高まっている時代背景の中から生まれた生産方式である。初工程から最終工程まで停滞を排除し一気に生産を進めることから一気通貫生産方式と命名された。

==

「多品種少量生産の進展や商品ライフサイクルの短期化」はさまざまな変動を伴います。一方、「初工程から最終工程まで停滞を排除し一気に生産を進める」ためには変動を排除しなければなりません。この矛盾をどのように解消しているのか。背後に、変動を許容する生産理論があるのかな、という淡い期待をもって調べてみました。

やっぱ、何もありませんでした。当該会社にも問い合わせてみましたが、的外れな回答だけ。一気通貫生産とは、フィクションによってカモフラージュされた幻想である、と言ったらいいすぎかな。

生産スケジューラー。使っている方も多いんじゃないかと思います。効能書きをみますと、多品種少量生産に対応し、日程計画等の変更に柔軟に対応、、、といった説明が、どのソフトにもあります。不確定要素をどのように取り入れているのか、興味がありますよね。こちらの方は、論理ロジックを使ったコンピュータソフトですから、一気通貫生産のようなフィクションとは違って、ちゃんとした理論や方法があるんじゃないかな、と。

何社か、スケジューラーのメーカに聞いてみました。こんな質問で。

「納期を確率でだせますか?」

例えば、105日の納期なら70%の確率、107日なら95%の確率、というような。できる、と答えたところはどこもありませんでした。OKかダメかの答えしか出せないとのこと。

変動分を見込んで、加算する程度のことならどのスケジューラーもやっているようですが、不確定要素を入れたスケジューラーというのは、まだ世の中にはないようです。人工知能がもっと発達したら、出てくるのかなー。いやいや、その前に生産理論みたいなものがないと、プログラムの組みようがない、、のかも、、。

変動(不確定要素)を排除したTPSの生産理論は、常識で考えてもわかるほど、簡単ですが、不確定要素が入ってくると途端にむずかしくなる。コンピュータをもってしても、うまくいかない。まだ、発展途上にあるんですかね。

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DBRを支える理論はあるのか

TPS(トヨタ生産方式)の失敗例が増えるに従い、TPSの限界が知られるようになってきました。バラツキ、変動を許容しないTPSは、変動が避けられない生産環境ではうまくいかないんですね。そんな時、出てきたのが、TOC(制約理論)のBDR(ドラム・バッファー・ロープ)。バラツキ、変動があってもいいよ。ボトルネックに集中して管理すればいいんだよってすごく簡単。

知りたかったのは、DBRを支える理論でした。バラツキ、変動を許容しながら、生産ラインをうまくコントロールする論理的根拠は何か? しかし、理論らしきものは何も見つかりませんでした。

DBRって、本当に機能するのか? 巷でも疑問の声が聞かれました。「多くの生産ラインは、ボトルネックは複数あり、しかも動き回る。どうするんだ?」

タイムバッファーも、入り口工程とボトルネック工程間だけではなく、流れが集中する工程には組立バッファー、出荷スケジュールを守るための出荷バッファーと3種類あって、ちょっと規模の大きな生産ラインでは、バッファーの数がたくさん出てきてしまう。タイムバッファーごとにスケジューリングをしなくちゃいけません。タイムバッファーの時間をどのように設定したらいいのか、バッファー間の整合性をどうとるのか、、、。ボトルネック工程だけスケジューリングすればいいよ、なんていう話ではなくなって、複雑怪奇なことになってきたんですね。

で、タイムバッファーを出荷バッファーだけにするS-DBR(Simplified DBR)が登場するわけです。DBRの簡易版なんですが、私の関心事は、根本問題が解決されたかどうか。

S-DBRでは「計画負荷」という考え方が出てきます。すでに投入済みのオーダーがどのくらいあって、ラインアウトまでどのくらいの時間がかかるのかを知り、出荷予定が守れるかどうかをみるわけです。計画負荷の算出基準は、ボトルネック工程の能力です。その能力で計画済みのオーダーは何日分あるか、これが計画負荷ですね。

ここで、前回指摘した、ボトルネック工程の稼働率(負荷率)と待ち時間の関係が考慮されているのかどうかがポイントになります。S-DBRの提唱者のエリ―・シュラ―ゲンハイムの著書を丹念に調べてみたんですが、稼働率と待ち時間については何も書いてありません。フロータイムの跳ね上り(稼働率が70%、80%と高くなると指数関数的にフロータイムが長くなる現象)についての言及はありますが、S-DBRには反映されていないようです。

ということで、S-DBRもやっぱし、ダメ。TOCでよく見かける5ステップ。
ステップ1;システムの制約条件を見つける
ステップ2;制約条件を徹底活用する
ステップ3;制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
ステップ4;制約条件の能力を高める
ステップ5;制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る

これも、ほとんど、使いものにならないということですね。簡単に言えば、DBRは生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まるという表面的な1現象から想起された方法論で、それを支える論理的根拠がないとなれば、DBR、S-SBRは、極めて限られた条件下では機能するかもしれないが、一般的な生産ラインの管理方法とはなりえないんじゃないでしょうか。

科学的、物理的根拠のないもっともらしい話は、世の中には、ごまんとあります。生産管理、在庫管理には、この手の話が多いように思います。

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TPSとDBRの背後にある理論とは?

 

「生産管理が難しいのはなぜですか?」と聞くと、さまざまな応えが返ってきます。

・飛び込みで特急生産が入る
・生産計画がころころ変わる
・部品が予定通り納入されない
・急に作業員が休む
・機械の故障が多い
・注文のキャンセルがある
・途中で仕様が変更になる
・もともと無理な納期だ
・営業と生産管理の指示が異なる
・、、、、

他にもいっぱいあると思いますが、きりがないのでこのぐらいにして、、。どれもこれも、簡単には解決できないので、生真面目な性格の人はノイローゼになる人もいるとか。

問題の解決には、原因を突き止めることが重要である。これに異論を唱える人はいないと思いますが、原因って、簡単にみつかるもんですか? そうそう、それが難しいんですよね。でも、チャレンジしますよーっ! 無手勝流で。

最近、年のせいか、細かなことはどうでもよくて、物事を大雑把にみる癖が定着してきたようです。生産管理を難しくしている上記の原因らしきことがらを大雑把にみると、、、。大雑把にみてみえてくるのは、共通項ですね。

いろいろな共通項がありそうですが、私の直観で、「変動」ととらえてみました。で、

「生産管理を難しくしている原因は変動である」

という仮説を打ち立ててみようと思います。

この仮説を因果関係の成立条件側からみると、

「変動がなければ生産管理は簡単になる」

となります。

変動がないと、なぜ、生産管理は簡単になるのか? この問いに対する説明ができないとこの仮説は成立しないことになります。成立するかどうか、頭をひねってみます。と言っても、小生の地頭では何も出てきそうにはありませんので、先人の知恵に学ぶことにします。

トヨタ生産方式(以下TPSと略称)です。学ぶべき先人の知恵とは。標準化、サイクルタイム、平準化、バランスライン、ムダの排除、、これらは変動を小さくしているわけですね。それを可能にしているのは「生産計画の固定」。生産計画の固定は変動を小さくするうえで、最も重要なことではないかと思います。つまり、生産環境の変動をできるだけ小さくして、生産管理を容易にし、生産性を高める、これがTPS

生産ラインの特性というのは、変動がなければ、もともとすごく単純である、ということですね。生産管理の目的は必要なものを必要なときに必要な量だけつくることですが、そのコアの部分は生産ラインのコントロールです。主要な管理項目は、

①生産性;単位時間当たりの生産数量
②フロータイム;投入から完成までの時間(生産リードタイムと考えてもかまいません)
③設備や作業員の稼働率
④工程仕掛数量

です。この4項目、ご覧になってお判りのように、“あちらを立てればこちらが立たず”、の関係にあったりします。例えば、工程仕掛を減らそうとすると手空きが増えて生産性が低下してしまう、など。

でも、変動がないと、すごく簡単になるんですね。ここに10工程のバランスした直列の生産ラインがあるとします。各工程の処理時間は10分一定。10分間隔一定で投入すると、生産性は10分に1個、100分では10個、フロータイムは100分、稼働率は100%、工程仕掛は10個と簡単にわかります。生産ラインの生産能力を100%引き出し、且つ生産管理はすごく楽になります。これがTPSの狙いでもあるわけです。

変動があったらどうなるかについて、TPSは、“変動・バラツキはあってはならない”の一点張りで、“変動を小さくできないのは能力がないからだ”とさえ、平気でのたまうわけです。

中には生産現場の努力で小さくできる変動もありますが、主要な変動要因は外部にあり、社内ではどうしようもないものが大部分です。変動を小さくするすべがなく、TPSの許容範囲を超えている生産環境では、TPSは成り立たない。変動がある場合、生産ラインがどのようにふるまうのか、TPSは答えを持ち合わせていない。だから、変動のある生産環境を否定するわけですね。

変動があってもいいよ、という生産方式が登場しました。TOC(制約理論)が提唱するDBR(ドラム・バッファー・ロープ)です。ラインバランスはでこぼこだし、処理時間だってバラバラ。そのような生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まる。だから、ボトルネック工程を100%稼働させることが、生産ラインの能力を引き出す最善の方法である、と。バンスラインなんか、成立しない、とまで言います。生産ラインの生産計画はボトルネック工程だけでいいよ。他の工程はロードランナー方式(ワークが来たら、処理し、直ちに次工程に渡す)。このように、生産ラインの管理は至極簡単、且つ生産ラインの能力を100%発揮する。しかも、ありのままの変動・バラツキを許容して。

TPSの限界を打ち破る画期的な生産方法だ、と一時騒がれました。日本でブームに拍車をかけたのは、工場改善小説「ザ・ゴール」の邦訳版発売。TOCの創始者、ゴールドラットは、DBRはトヨタ生産方式を超える、と豪語してました。

確かに、「生産管理を難しくしている原因は変動である」という仮説を打ち破りました。「変動があったって、生産管理は簡単で、生産性を最高のレベルに保つことができる」のだ、と。これは、私にとっては衝撃でしたね。TPSでは無能呼ばわりされていた変動のある生産環境での生産管理に答えを出したわけですから、、。

もう少し詳しくDBRをみてみましょう。DBRの最も中心的な課題は、ワークの到着間隔が変動し、ワークそれぞれの処理時間がバラツク時、ボトルネック工程を100%稼働させるためには、どうするか? です。DBRの説明では、投入口とボトルネック工程間に、もろもろのバラツキがあっても、ワークが流れ着く十分な時間(タイムバッファー)を設け、ボトルネック工程の稼働率が100%になるように計画する、となります。これで、先に挙げた生産ラインの管理項目はどうなるか、チェックしてみますと、

①生産性;生産ラインの能力を決めるボトルネック工程の能力を100%発揮
②フロータイム;投入~ボトルネックまでは必要最短のタイムバッファーを設定し、他の工程はロードランナー方式で流すので最短となる。
③稼働率;ボトルネック工程の稼働率は100%。他の工程の稼働率は無視。
④工程仕掛数量;ボトルネック工程の計画に対してタイムバッファーで早期投入を禁止し、不必要な工程仕掛の増加を防ぐ。

稼働率を100%に保ち、生産性を最大限発揮させ、フロータイム最短、工程仕掛最少、しかも変動をそのまま受け入れて。完璧ですね。ゴールドラットの高笑いが耳の奥に今でも残っています。

私が知りたかったのは、TOCの、あるいはDBRの背後にある基本理論。ゴールドラット主催の国際会議やセミナーに可能な限り参加しました。彼に直接質問をぶっつけました。側近のエリ―シュラ―ゲンハイムにも、そして、ゴールドラット・スクールの校長、オーデット・コーエンにもひざ詰めで、じっくりとTOCの背後にある理論を聞きただしました。

ゴールドラットが物理学者であるからには、生産性とフロータイム、稼働率、工程仕掛の相互関係を定量的に記述できる数式モデルを持っているはずだ、と期待していました。しかし誰に聞いてもわからない、という答しか返ってきません。ゴールドラットに聞けば、タイムバッファーは現状の半分、というだけ。少しずつあやしくなってきました。やがて、熱狂的なゴールドラットの講演の雰囲気と中身のない理論が重なり、オカルト的な雰囲気も感じるようになっていました。

BDRを支える理論とは、

・生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まる
・ボトルネック工程を100%稼働させる(計画する)
・投入口とボトルネック工程間にタイムバッファーを設ける
・ボトルネック工程以外はロードランナー方式で流す

ということで、これは、理論というより方法論だ、ということですね。それを支える理論はなし。期待した生産理論は、結局、見つかりませんでした。

「いったいどんな理論を探しているんだ?」といぶかることと思います。実は、その当時は、私にもはっきりとはわかっていなかったんです。その後、2冊の本に出合いました。

FACTORY PHYSICS Wallen J. Hopp, Mark L.Spearman共著
STOCHASTIC MODELS OF MANUFACTURING SYSTEMS
     John A.Buzacott, J.George Shanthikumar共著

前者は生産ラインの特性を物理現象としてとらえたもの、後者は待ち行列理論を使って生産ラインの特性を記述したものです。これらの書の知識を借りて、DBRの論理性の欠如の一端を紹介してみます。

変動がある場合、生産ラインの特性はどうなるか。待ち行列理論によれば、ボトルネック工程の稼働率が70%80%90%と高くなるにつれて、ボトルネック工程前で待つ時間は、スキージャンプ台を上るような指数関数的なカーブで長くなることが示されます。タイムバッファーは投入口からボトルネック工程に到達するまでの時間とボトルネック工程前で待つ時間の合計です。ボトルネック工程の稼働率を100%にするためには、場合によっては(バラツキが大きいと)、とてつもなく長いタイムバッファーを設定しなければならなくなります。

TOCは流れを重視します。流れの良し悪しは生産リードタイムの長さで評価できます。ボトルネック工程の稼働率を100%にすることは生産リードタイムを無管理状態のまま、成り行きに任せることになるわけです。これでは管理になりません。需要環境に合わせて最適な生産リードタイムと稼働率を狙いに、生産ラインの動作範囲をコントロールする必要があるわけで、そのためにはボトルネック工程の稼働率とその前で待つ時間の長さとの関係を記述する理論式が必要となります。これが私が探していたもので、TOCにはなかったのです。

 

 

トヨタ生産方式も、TOCもうまくいかない、、

日夜、現場でものづくりに励んでいるみなさま、こんにちわ!

生産現場ではさまざまな問題が、つぎからつぎと発生します。一週間もしないうちに月次生産計画が変更になり、対応に奔走する。そんなことが日常になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「なんとかしなきゃ」とトヨタ生産方式にチャレンジされた工場・企業もたくさんあると思います。簡単そうだからと、かんばん方式にトライしたところや、本格的にコンサルタントを入れて全社で導入したところなど、その規模や本気度はさまざまですが、結果は総じて、、「ダメ」。もちろん、うまくいったところもあるんですが、小数。メディアは成功例を大々的に報じます。うまくいかない企業は無能とやゆされ、担当者は肩身の狭い思いをすることになります。本当は失敗例にこそ教訓が潜んでいるのに、、。

TOC(制約理論)のDBR(ドラム・バッファー・ロープ)は、トヨタ生産方式がうまくいかない企業の関心をひきました。バラツキを嫌うトヨタ生産方式に対して、DBRはバラツキがあってもいいですよ、と。バランスラインを目標とするトヨタ生産方式に対して、そんな生産ラインは不安的で、生産性は低いのだ、とも。「ザ・ゴール」という小説でブームになりましたが、やっぱり、ダメでした。もちろん、こちらも効果の出た事例もあるんですが、適用範囲が広がるにつれて、失速。

で、どうするか、、。

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はじめに

私の職歴は、大部分が生産現場やその周辺で、生産技術、生産管理、在庫管理、資材調達そして時には営業など。外注の立ち上げ、国内外の新工場の立ち上げは特に思い出に残っています。そのような経験からたどり着いた結論めいたものが、生産管理・在庫管理には基本理論がないのではないか、ということです。

で、生産管理・在庫管理の基本理論の構築を試みてまいりました。始めてから約10年。その経過、成果をこのWebsiteで公開してまいりました。

今般、気軽に読める「生産管理 雑談・放談」というページを追加することにしました。ここでは、ふだん着のまま、ときには、無礼講でありのままに、関連することがらについての私見をつづってみようか、と思っております。

みなさまからのご意見もお聞かせ願えれば幸いです。

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