在庫管理“専門家”のレベルの低さに“唖然”

今回も、2019年4月1日発行された在庫管理の本についての論評です。この書の主張の根幹みたいな部分に迫ってみたいと思います。それは何かといいますと、“「必要なものを必要なときに必要なだけ」発注することができる不定期不定量発注法がお勧めだ”、という主張です。本書からその主張の骨子を拾ってみます。

p.73
▶▶ 「必要なものを必要なときに必要なだけ」発注する
需要が変動するからこそ在庫管理が必要です。定期不定量発注では先の見通しは完全に読めないことから、担当者の思惑が入り込み、在庫の過剰や絞り込みすぎが問題になる可能性がありました。
不定期不定量発注法では、思惑が入り込む問題はあまり心配いりません。急に出荷が増えて在庫が減ってしまったら、慌てることなく発注すればよいだけです。逆に、出荷が減って在庫があまりがちという状況になれば、発注しなければよいのです。定期不定量発注法に比べて、発注担当者のストレスは少ないと言えそうです。

p.76
▶▶ 日数で換算する
—-「明日、出荷するために必要な量」を計算するためには、在庫の数量を「日数」に換算して判断します。まず、過去の出荷実績を日単位で収集します。—-2~3年、販売し続けるものであれば、過去1年程度の期間について出荷データを収集し、出荷があった日をベースに「1日あたり平均出荷量」を算出します。

p.76~77
▶▶ 需要の変動をみる
—-2~4週間程度の期間で平均出荷量を求め、出荷があるたびに、その時点から過去2~4週間の平均出荷量を求めるのです。——出荷があるたびに平均出荷量を求めるので、計算の対象が移動していきます。このような計算によって求められる平均値を移動平均といいます。—–

p.82
▶▶ 毎日「発注点チェック」を行う
発注のタイミングが来ているかどうかは、毎日、出荷があるたびに計算してチェックします。需要は変動するわけですから、いつ発注すべきか、状況は毎日変化する可能性があると考えるからです。これを「発注点チェック」と呼ぶことにしましょう。発注点チェックは、以下の手順で行います。
①出荷があるたびに「在庫量÷1日あたり平均出荷量=出荷対応日数」の計算を行う
②出荷対応日数とリードタイム日数+安全在庫日数を比較する
③出荷対応日数がリードタイム日数+安全在庫日数を下回ったら、発注する

不定期不定量発注法とは、発注タイミングも発注量も不定で、よく言えば、“適時適量発注”だが、悪く言えば、“行き当たりばったり発注”、と巷の評価は定まっていません。本書の主張は前者。本当に“適時”であり“適量”なのか。チェックしてみましょう。

本書が主張する不定期不定量発注法の基本的なメカニズムを一般的な不定期定量発注法(定量発注点法)との比較を通して調べてみます。簡単な条件で考えてみます。需要(出荷量)の母集団を
*1日あたり平均出荷量は10個、標準偏差は2個
の正規分布に従うとして、変わらないものとします。リードタイム日数は3日(固定)とします。

安全在庫は、安全係数を2として、
安全在庫=安全係数×√リードタイム日数×1日あたり出荷量標準偏差=2×√3×2≅6.9
で、7個となり、発注点となる在庫数は、
発注点在庫数=平均出荷量+安全在庫=10(個/日)×3(日)+7(個)=37(個)
で、37個となります。定量発注量は60(個)としておきましょう。

次に、本書が主張する不定期不定量発注法ではどうなるか、調べてみます。

先ず、“1日あたり平均出荷量”を計算します。本書の説明では何日間かの“移動平均”となっています。“移動平均”について、ちょっと、コメントしておきます。移動平均算出の日数をn日とすると、平均は母集団の平均と同じ、標準偏差は、母集団の標準偏差をσとすればσ⁄√nとなります。

数値を入れてみましょう。母集団(1日あたり平均出荷量)の標準偏差は2個ですので、n=10の移動平均の標準偏差は、
(2(個))/√10≅0.63(個)
となります。 “1日あたり平均出荷量”が、2σでみれば、8.74(個)~11.26(個)の範囲にバラツクとみることもできます。「発注点チェック」をしてみます。

①出荷があるたびに「在庫量÷1日あたり平均出荷量=出荷対応日数」の計算を行う

①の計算に従えば、同じ“在庫量”でも“1日あたり平均出荷量”がバラツキますので、“出荷対応日数”もバラツクことになります。“出荷量の母集団は変わらない”という条件でも“出荷対応日数”が変動することにご留意ください。

②出荷対応日数とリードタイム日数+安全在庫日数を比較する

“安全在庫日数”は安全在庫を日数換算したもののようです。安全在庫は、先に計算したように7個ですから、切り上げて1日となるんでしょうか。“リードタイム日数”は3日ですから、“リードタイム日数+安全在庫日数”は4日。

③出荷対応日数がリードタイム日数+安全在庫日数を下回ったら、発注する

わかりやすいように、在庫量がどうなったとき発注するのか、という視点でみてみます。①~③から、次の式が導き出せます。
在庫量<(リードタイム日数+安全在庫日数)×1日あたり平均出荷量 リードタイム日数;3日、安全在庫日数;1日、1日あたり平均出荷量は8.74(個/日)~11.26(個/日)を代入すると、 在庫量<(3+1)×8.74~(3+1)×11.26 → 在庫量<35(個)~45(個) つまり、発注点が35(個)~45(個)の範囲で変動することになります。一般的な発注点方式では発注点が37個で一定ですが、本書の主張する不定期不定量発注法では発注点がランダムに変動するということになります。 一般の不定期定量発注法は、発注量は予め決められています。本書が主張する不定期不定量発注法では、発注量は次のようになります。

P83
1日あたり平均出荷量×在庫日数=発注量

“在庫日数”は予め決めた日数ですが“1日あたり平均出荷量”が掛けられていますので、発注量も毎回変動することになります。定量発注量の60個を“在庫日数”に変換しますと、6日となり、発注量は、 6(日)×8.74(個/日)~6(日)×11.26(個/日)≅53(個)~68(個) と変動することになります。

一般的な不定期定量発注法と不定期不定量発注法の比較をまとめますと、次のようになります。

不定期定量発注法 不定期不定量発注法 発注点 37(個)一定 35(個)~45(個) 発注量 60(個)一定 53(個)~68(個) 不定期不定量発注法は、その名の通り、“発注点”も“発注量”も変動します。しかし、そのことによって、同じサービス率を保つための在庫量が増えてしまいます。“発注点”の変動は安全在庫を増やし、“発注量”の変動は在庫量を増やします。下図を参照ください。

出荷があるごとに“1日あたり平均出荷量”を計算し、“その時の在庫量”を調べ、“出荷対応日数”を計算し、それを“リードタイム日数+安全在庫日数”と比較し、“出荷対応日数”が小さければ“1日あたり平均出荷量×在庫日数=発注量”を計算し“発注する”。 一方、一般的な不定期定量発注法は、在庫が発注点以下になったとき、予め決めた定量を発注する、これだけ。簡単です。 本書の主張する不定期不定量発注法。出荷ごとに毎回「発注点チェック」なる退屈な計算をして手間暇かけ、結果、在庫量が増える。一般的な不定期定量発注法と比べて、良いところはどこにも見当たりません。にもかかわらず、ご丁寧に、下記の説明まであります。筆者らは在庫管理の“専門家”?。レベルの低さに“唖然”とするしかありません。

p.67
▶▶ 定量発注法の特徴 不定期定量発注法のほうは、今後も使用するという会社はあるでしょう。ただし、需要の変動への対応力は低いと言わざるを得ません。発注時期を不定期にすることによって、多少、需要の変動に対応しているという程度です。

p.70
不定期定量発注法では欠品や過剰が起こりやすく、しかも、その状態にはなかなか気づくことができません。この方法をあまりお進めしない理由は、まさにそこにあります。適用するとしても、在庫品のすべてをこの方法で管理することは、危険なことといわざるを得ません。

DPM研究舎

“在庫実態を「見える化」する”も、虚像しか見えない

2019年4月1日発行された在庫管理の本について論評をしております。前回は、「間欠需要」では在庫過多になるので、在庫を減らす方法として、
①出荷頻度を織り込んだ必要量計算を行う
②出荷頻度が落ちてきたら、出荷量の計算期間を延ばしていく
の2つがある、という説明。その真贋を調べてみました。②はまったくの“いかさま”。そちらに気を取られ、①についてはスルーしてしまいましたが、

5日間の必要量=1日あたり出荷予測×5日間の出荷日数予測

の式の

5日間の出荷日数予測

は、「出荷確率」を意味しているのではないか、ということに気が付きました。

「出荷確率」につきましては “ものづくり徒然草”の
No.87 安全在庫の計算;「出荷確率」を考慮するのはなぜ?
No.88 ポアッソン分布が暴く“出荷確率”の虚
に愚見をサラッと載せてありますので、参考にご覧頂ければ、と思います。“出荷確率”という考え方も、実は、統計学を知らない素人が持ち出した“珍説”、、、のようでありまして。

さて、今回は何を取り上げましょうか。p.10~p.13に 1-1 在庫実態を「見える化」する に注目してみましょう。(茶色部分は本書より抜粋)

▶▶「在庫散布図」で在庫の実態をみる

アイテム別に在庫の実態を把握するための有効な手法として「在庫散布図」があります。図1-1は、在庫散布図の一例を示しています。まず、在庫拠点を1ヶ所選んでください。次に、その拠点における以下の3つの数字を用意してください。必要なのは、その拠点に在庫してあるすべてのアイテムの数字です。

①アイテムごとの月間出荷量
②アイテムごとの月間出荷日数
③アイテムごとの月末在庫量

これらの数字が取れたら、以下の計算を行います。
④1日あたりの平均出荷量=月間出荷量(①)÷月間出荷日数(②)
⑤出荷対応日数=月末在庫量(③)÷1日あたり平均出荷量(④)

さて、ここまで計算できたら、⑤出荷対応日数と②月間出荷日数という2つの数字を使って、在庫散布図を作ります。図1-1を見てください (本書の図とは異なるデータですが、イメージは似せてあります)

図1-1 在庫散布図

縦軸に「出荷対応日数」、横軸に「出荷日数」を取っています。出荷対応日数というのは、「今ある在庫で、あと何日分の出荷に対応できるか」という数字です。たとえば、出荷対応日数が10日なら、あと10日間の出荷に対応できるということになります。

横軸の出荷日数というのは、月間で何日出荷があったかということです。出荷日数の最大値は、その月の稼働日数になります。

在庫散布図へのプロットは、アイテム別に出荷対応日数と出荷日数がぶつかるところにマークをしていきます。

▶▶在庫散布図からわかること

図の左上の、出荷対応日数100日にプロットされているアイテムがあります。このアイテムは出荷日数が1日ですから、月に1回しか出荷がないということです。そして、今の出荷状況なら、今の在庫量はあと100日分あるということです。出荷が月1回ですから、実質100か月分の在庫だということです。

出荷対応日数が、0日に限りなく接近してプロットされているアイテムも少なくありません。これは、欠品の危険があります。在庫が少なすぎるのです。

この説明を読んでなんとなくわかったような気になられた方も多いのではないかと思います。月間出荷量、月間出荷日数、月末在庫量から出荷対応日数を計算し、出荷対応日数で在庫量の適正さを判断するということなんですが、、。

でも、ですね、、。きちんと調べてみると、欠陥だらけで、使いものにはなりません。その理由のいくつかを上げますと、、

[1] 図1-1をご覧ください。出荷日数が0(グラフの一番左端)には出荷対応日数のプロットはありません。月間出荷日数が0だと分母が0となるため、1日あたり平均出荷量の計算ができないんですよね。だから出荷対応日数も計算できない。でも、現実には2~3カ月に1回しか出荷がないとか、半年に1回の出荷とかいうアイテムって、たくさんありますよ。「出荷がないのに在庫がある」。これって、在庫管理では忌々しき状態なんですがね。それを無視しちゃってんじゃないでしょうか。

[2] 在庫量は出荷時に減少し、入庫時に増加して変動する。ですから在庫量を捉えるためには変動の範囲を捉えなきゃいけません。一般的には、平均とか分散、最少、最大などで変動範囲をつかまえます。月末とかの一時期のデータだけではとらえられませんよね。さらに、経理では月末の在庫残高をみますから、それをできるだけ少なくしようとして、月末出荷推奨・月末入庫抑制に走る、などの影響があって、ますます乱高下するわけです。月末在庫量だけで在庫量全体のバラツキを捉えることはできませんね。

[3] ①~⑤の式をみても、補充発注から入庫までの調達リードタイム(納入リードタイム)をまったく考慮していませんね。在庫量を決定する最も重要な要素ですよ、調達リードタイムは。原理的に破綻してますね。

[4]  調達リードタイム>発注間隔のとき、必ず発注残が生じます。前に発注したものが入庫される前に次の発注が行われますので、前に発注したものは発注残状態になる。在庫管理では“常識”。しかし、①~⑤の式の中に発注残はなし。これだと在庫循環のメカニズムを正しく捉えることができませんので、間違った判断を助長することになります。

[5] 需要は受注件数(出荷件数)と1件当りの受注数量(出荷数量)で決まります。受注即出荷とすれば、出荷日数は需要に対して従属的に決まります。“出荷件数”と“出荷日数”は、在庫循環のメカニズムの中では、全然違うんです。例えば、出荷可能日数28日のとき、出荷日数と出荷件数との関係は図1-2のようになります。直線的な関係ならまだしも、非直線的な関係なので、在庫量の計算に出荷日数を使うと間違った答えが出てきます。

図1-2 出荷日数と出荷件数の関係の一例

在庫管理では、[1]~[5]はいずれも致命的な欠陥です。これで“在庫実態を「見える化」する”ことができるのでしょうか? 見えたとしても、“虚像”か“歪曲された像”しか見えないのでは、、。

DPM研究舎へ

計算期間を変えただけで在庫が激減

最近(2019年4月1日)発行された在庫管理の書が手元にあります。この書、なかなかおもしろい。初心者向けのようなんですが、斬新、大胆な在庫論が展開されています。1回、2回では書ききれません。つまみ食い的にあっちへ行ったり、こっちに来たり、、意の赴くままに書中放浪してみたいと思います。

先ず、166ページ~168ページ。
5-10 出荷頻度の低い商品の在庫増はこう抑制する
出荷頻度が低く、出荷と出荷の間に出荷ゼロの日が多くはさまれる「間欠需要」と呼ばれる出荷パターンを示す商品は、日数管理で在庫を持つと在庫過多になります。この問題に対する簡便法として、「出荷量の計算期間を延ばす」やり方があります。

▶▶出荷頻度の低い商品を日数管理すると在庫過多になる
この本の補充の仕組みでは、出荷ゼロの日はカウントせず、出荷のあった日だけで「1日あたりの出荷量」を計算しています。つまり、出荷頻度は考慮しないで、毎日出荷があっても大丈夫なように在庫を用意するわけです。実際には月に1日しか出荷がない商品であれば、在庫を5日分持ったら、その在庫は5か月分存在することになります。

この問題への対処方法は2通りあります。
▶▶出荷頻度を組み込んだ予測を行う
出荷頻度を織り込んだ必要量計算を行う。
 5日間の必要量=1日あたり出荷量予測×5日間の出荷日数予測

▶▶出荷量の計算期間を延ばす簡便法
もう1つ、「出荷頻度が落ちてきたら、出荷量の計算期間を延ばしていく」という方法があります。
 日次のデータで見ていくと出荷ゼロの日がかなりある低頻度出荷の商品でも、週次で括ってみれば、ほぼ毎週出荷があるということがあります。この場合、「1日あたり」の日次管理をやめて「1週あたり」の週次で管理するようにすれば、低頻度問題は解決します。

商品Aの例でいえば、日次では「在庫5日分」として21.4個を持つ設定になっていたのが、1週分ならば7.5個となるわけです。

図5-16 商品Aの管理を日次から週次に変える


 商品A日次
出荷合計  30個/日
出荷日数  7日
1日あたり 4.3個/日
出荷ゼロ日 21日
なので、5日分の在庫 1日分×5日=21.4個

 商品A週次
出荷合計  30個/日
出荷w数  4w
1wあたり 7.5個/w
出荷ゼロ  0w
なので、1w分の在庫=7.5個

.

ひとつ目の対処方法「出荷頻度を組み込んだ予測を行う」っていうのは、「1日当り出荷量予測」も「5日間の出荷日数予測」も予測。具体的な予測の方法や事例はありませんのでよくわかりません。「予測」×「予測」=「勘」、、。まっ、流しましょう。

二つ目の対処方法。書の説明を簡単にまとめますと、間欠需要パターンのとき、日次(日単位)で計算すると在庫量は21.4個だが、週次(週単位)で計算すると7.5個となり、在庫を抑制できる、と。つまり、出荷パターンは同じでも、出荷量の計算期間を変えると在庫を減らすことができる、ということですね。

計算期間を変えるだけで、在庫量を1/3近く下げることができる、、、。なんと斬新かつ大胆な方法なんでしょう。このような手法があるのかどうか、手当たり次第探してみました。見つかりませんでした。実際の出荷パターンが変わるわけではないんですよね。計算期間を変えるだけですよね。それで、在庫量がガタンと下がる。革命的な大発見。少々大げさかな。でもですねぇ~、直観的、経験的には違和感があるんですよ。

私の常識をベースに、私なりに計算してみます。

先ず、週次計算の方からみてみます。5日分の在庫量を計算してみます。1週間当たりの集荷数は、7.5個/週ですから、1週を7日として5日分は、
5日分の在庫量=7.5個/週×(5日/7日)≅5.4(個)
となります。

では、日次計算では5日分の在庫量がいくらになるか。1日あたりの出荷数は、
1日あたりの出荷数=30個/28日≅1.07個/日
5日分在庫量は、
5日分の在庫量=1.07個/日×5日≅5.4個

日次計算だろうが、週次計算だろうが、5日分の在庫量はどちらも同じ。こちらの方が私の常識には合うんですがねぇ~。

試しに、月次で計算してみましょうか。
5日分の在庫量=30個/月×(5日/28日)≅5.4(個)

日次も週次も月次も、同じ。

「日次で計算すると、5日分の在庫量が21.4個、週次で計算すると7.5個となる」
V.S.
「日次も週次も月次も、5日分の在庫量は同じ」

どちらが正しいんでしょうか? 本書の著者諸氏(3人の共著)は物流・在庫の専門家。関連書籍もたくさん出しています。「活字」になっている「専門家」の記述を信頼する人の方が多いと思います。みなさまはどのようにお考えでしょうか。

https://www.tocken.com

AIも、馬鹿も鋏も使いよう

前回は、AIで生産管理はどうなるか、日立の取組をみてみました。要点は、

鉄道の運行管理などの数理最適化技術(所有技術)とAI制約プログラミング(新技術)を融合し、熟練者独自の計画パターンを機械学習させ、
*自動的に最適な生産計画の立案
*需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えを可能とする

のだそうです。

これで生産管理の問題がすべて解決か、という期待で読み進んだんですが、途中から “あら、あらあら”となって、最後は“ガクン”ときて、、、。

で、なぜ、“ガクン”ときたのか、その理由の方が重要かもしれませんので、そのあたりについて愚見を放ってみたいと思います。

日立の説明の中に、キーワードがいくつかあります。
*鉄道の運行管理
*生産計画
*日々の環境変化

「鉄道の運行管理」には最適なダイヤグラム編成も含まれていると思います。それをベースに運行を管理する。工場では、最適な生産計画をつくり、それをベースに生産管理を行う。似てますね。日立が手持ちの鉄道の運行管理技術にAIを加えて生産計画作成を支援するサービスを開発した、という流れです。

このような技術の転用、応用はいたるところで起きています。ものごとの発展、進化の王道的流れではないかと思います。逆にみれば、どこが同じ(似て)、どこが違うのか、という視点でみれば、日立の取組の方向性が正しいのか、そうでないのか、を判断する手がかりになるかもしれません。

「鉄道」と「生産ライン」を対比させてみてみましょう。鉄道の線路は生産ラインでの工程(機械、作業員、)に、列車は工程を流れる非加工物(以下、ワーク)に。

表1 鉄道と生産ライン

全体が見えるように比較の幅を広げてみます。鉄道に一般道を加えて交通・運輸、生産ラインを工場・生産管理とし、トヨタ生産方式と一般の工場とに分けて比べてみます。トヨタ生産方式の特徴を見込生産、一般の工場の特徴を多品種変量/見込受注混合生産とします。

列車の運行制御はダイヤグラムに基づき、一般道を走る自動車は各自それぞれのスケジュールで交通ルールに従って動きます。トヨタ生産方式では企業(工場)全体の生産計画があり、それに基づいてワークが流されます。一般の工場では、生産計画をつくってもその通り生産は進まず、計画と実際にズレが生じ、現場の判断で計画とは違った手順で進められることが常態化しています。

線路は列車専用でダイヤグラムに従って運行されますので列車間の干渉はほとんどありませんが、一般道は様々な交通手段で共用され、各自のスケジュールで動きますのでいたるところで干渉が起こります。トヨタ生産方式では生産計画からつくられた日程計画に従い作業が割り当てられますので、大きな干渉はありません。一般の工場では生産計画がうまく機能しないため、いたるところで干渉が生じます。

線路に対する負荷はダイヤグラムの管理下にあります。一般道では社会活動の影響をそのまま受けますので交通量の変動は大きくなります。トヨタ生産方式では生産計画時に負荷が調整され、その生産計画は変更されませんので、負荷の変動は非常に小さく抑えられます。

一般道での待ち時間は交通量により大きく変動します。高速道路でさえ帰省シーズンは長蛇の渋滞。動かない車の中で過ごす家族のニュース映像はお馴染みです。一般道では通勤時の渋滞。常態化してます。一方、列車の待ち時間は、列車の種類にもよりますが、一般道と比べ非常に短くなります。一般の工場でのワークの待ち時間は需要(受注量)により大きく変動します。残業や外注化で生産能力を補強したり、納期を調整したり、時には受注調整を行うなど、対応に追われることになります。加工時間に対する待ち時間の比は1:5000、一方、トヨタでのそれは1:300だそうです(トヨタ生産方式をトコトン理解する辞典、山田日登志著より)。トヨタの待ち時間の短さがわかります。

表2にまとめてみました。

表2 交通・運輸と工場・生産管理の比較

ザックリと比較の特徴を挙げれば、次のようになります。
*鉄道は、線路が専用で、全体のダイヤグラムで管理されている。
*一般道は、様々な交通手段(歩行者も含む)で共用され、個々の予定はあっても全体のスケジュールはない。交通量は大きく変動する。
*トヨタ生産方式は、月次生産計画を固定し、それに基づく負荷配分等実行可能な日程計画で管理される。
*一般の工場では、計画が策定されても、需要の変動で計画通り生産は進まず、多くはその場その場で場当り的な対応をしてしまう。

鉄道はダイヤグラムという全体計画がありますが、一般道を走る各々の車の全体計画はありません。トヨタでは生産計画という全体計画がありますが、一般の工場では変更が頻発して実行可能な全体計画とはなっておりません。

日立の説明をもう一度みてみましょう。
鉄道の運行管理などの数理最適化技術(所有技術)とAI制約プログラミング(新技術)を融合して、熟練者独自の計画パターンを機械学習させ、
*自動的に最適な生産計画の立案
*需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えを可能とする
、、、と。

生産管理の基準となる生産計画を自動的に立案し、日々の環境の変化が激しい一般の工場では、計画そのものを短時間で組み替え、生産計画を実行可能状態に維持する。こうみてみますと、日立は、現状の生産管理の問題を的確にとらえているようにみえます。

完璧に見える日立のアプローチ。実は、思いがけない落とし穴があるんです、、。

落とし穴があるなんて、誰も気づきません。完璧に見えれば見えるほど、穴の深さは深い。日立もその穴の中にはまったまま、出てこれなくなっているのかもしれません。日立だけではありません。“柔軟な計画変更”を喧伝する生産管理ソフトメーカー・販売会社も同じ穴の貉(むじな)ではないか、と。

表2を眺めてください。鉄道にはダイヤグラム、トヨタ生産方式には生産計画があります。では、一般道では? 一般道路網のダイヤグラムはありますか、、。

「ありますよ。乗り合いバス」
そうですね。乗り合いバスではダイヤグラムとは言いませんが、時刻表はそれに相当します。走る道路は予め決まっていて、さらにラッシュアワーには専用レーンとなるところもあり、鉄道に似ています。時刻表の精度は鉄道のそれと比べれば低いのはやむを得ませんが、、。

乗り合いバスは交通量全体からみれば少量でしょう。一般道を走る交通手段すべてを対象にしたダイヤグラム(時刻表)みたいなものって、ありますか。
・・・・・・・

「ありますかぁ~」、「ありませんかぁ~」、、
「・・・・・・・」

ちょっと、バカバカしい質問だったようです。
「そんなもの、あるわけないじゃないか」
「考えるまでもないよ」、、
口に出せば、品のない答えになってしまいます。

表2の右側、工場・生産管理の方をご覧ください。交通・運輸の一般道に相当するのが多品種変量/見込受注混合生産(一般の工場)です。生産ライン(工程網)では様々な製品がランダムな時間間隔で投入されるのに対し、一般の道路網では様々な交通手段(車、バイク、自転車、、)がランダムに流入する。両者の物理現象は重なります。

一般の道路網で様々な干渉が起きて混雑するように、一般の工場でも様々な干渉で混乱、停滞が起きます。
「問題はきちんとした生産計画がないからだ。必要あらば、毎日でも生産計画を組みなおさなければならない」
名うての生産管理コンサルタントの指導に逆らう御仁はおりません。日立も同じ方向を向いています。つまり、“生産計画作成→日々の環境変化→速やかな生産計画の組み替え”を繰返し、生産計画基準の生産管理体系を維持する、という考えですね。

一般道では、前代未聞のダイヤグラムですが、一般の工場では、基本中の基本。おもしろいですね、この違い。

どこに落とし穴が隠れているか、うすうす、お気付きになっていただけるとたすかります。

では、ダイヤグラムなどあたまの片隅にもない一般道では、AIをどのように利用しようとしているのか、みてみましょう。最近よく聞きますね。自動運転。そのうちレベル5(完全自動運転)の車も実用化されることでしょう。客探しAIを搭載したタクシーも導入されているそうです。AIを搭載した無人配送車も実用段階に近づいているようです。ヒントになりませんか?

自動運転の車を工程を流れるワーク(非加工物)とみたらどうでしょう。

こんなイメージかなぁ~、、

生産ラインの状態(工程の稼働状態、仕掛、投入待ちワーク、トラブル状態、、)が常時監視されている。個々のワークには必要情報(工程順、処理方法、納期、など)が入力されたチップが付けられ、工程が進むごとに履歴が更新される。各ワークは、各々の優先度や工程の負荷状態などをみて、通過工程を選択しながら流れていく。

生産リードタイムは確率分布で捉えられる。納期に対する判断も10日なら60%、12日なら90%というように。生産ラインの負荷状態を常に監視し、受注量、納期等を考慮して投入コントロールを行う。データが蓄積されればされるほど、学習効果が上がり、管理レベルは向上する。市場の需要変動に追従しながら生産の流れをコントロールする。

AIで生産計画をつくり、それを介し生産ラインを管理するのではなく、AIで直接生産ラインをコントロールする。これこそ、AI生産管理が向かう方向ではないでしょうか。

AIも、馬鹿も鋏も使いよう

https://www.tocken.com

AIで生産管理はどうなるの?

前回は、将棋や囲碁の世界では、A I(人工知能)は人間の能力(脳力)を超えてしまった、という話をしました。AIがここまで進化してくると、人間社会のいろいろなところに影響がでてくるでしょうね。自動運転、自動翻訳、顔認識、ビッグデータ処理、株取引、、、そしてAI兵器、、。どこにどんな影響、変化をもたらすのか、、予想できないことも起こりうるのではないかと、、。期待と不安が入り混じります。

当然のことながらものづくりの領域にもAIが押し寄せてくるでしょう。AIによって製造現場にどのような影響がでてくるのか、いろいろと思いを巡らしてみたいと思います。

もちろん、私は、AIに関しては“ど素人”。的外れなことも書くかもしれませんが、そんな時はぜひ、ご指摘いただければ、と思います。

生産・製造へのAI利用といっても、様々な領域があるようです。目視検査の自動化、搬送ロボット、予知保全、商品仕分、熟練工の作業分析など、など、、。利用されるAI技術も多種多様で、広い視野で捉えなければならないのかもしれません。だからと言って、ふろしきを広げすぎてもいけませんので、このWebsiteのテーマである生産管理に絞って考えてみたいと思います。生産管理はAIでどう変わるのか、、。

現在、コンピュータなしに生産管理を語ることはできないでしょうね。で、うまく使いこなしているかといいますと、そうでもない。もちろん役には立っていますが、それ以上に問題も多い。導入した高価な生産管理コンピュータシステムがうまく動かない、という話は後を絶ちませんね。

生産管理のコンピュータをAIで動かしたら、うまくいくんじゃないのかな、、と思いませんか? ど素人の考えです、もちろん。AIで生産管理をしたら・・・、現在抱えている様々な生産管理に関する問題が、きれいさっぱりととは言わなくても、かなりの程度軽減されるのではないか、なんていう期待はありますよね。

それっぽいニュースがありました。
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2017/10/1023.html

<一部抜粋>
AIを活用して最適な計画立案を支援する「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」を提供開始;新日鉄住金において、熟練者の手がける生産計画の再現に向けた共同実証に適用

日立製作所は、このたび、生産ラインのデータや熟練者の作業履歴など、AI(人工知能)を活用して解析し、自動的に最適な生産計画を立案する「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」(以下、本サービス)を、2017年10月24日から提供開始します。
本サービスは、鉄道の運行管理などで実績のある数理最適化技術とAIを連携した日立独自の制約プログラミングを適用して、最適解の高速抽出のほか、熟練者による生産計画を再現可能とするものです。設備や納期、コストといった複雑な制約条件に加え、膨大な熟練者の計画履歴から機械学習を使って熟練者独自の計画パターンを抽出・組み合わせて解析し、多品種・多工程の製品をどの順番で生産すべきか、最適な生産計画を導き出します。これにより、需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えが可能となるなど、計画や見直しに要する負荷を大幅に軽減するほか、生産計画の立案に関する技能継承を支援します。

ほうほう、、。「自動的に最適な生産計画を立案」できて、「需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えが可能となるなど、計画や見直しに要する負荷を大幅に軽減する」。これで生産管理の問題がすべて解決、かな。まさにAI時代到来ですね。

このニュースをとっかかりに、
“現在の生産管理が抱える根本問題をAIは解決できるか?”
という視点で、思いを巡らせてみたいと思います。

で、“現在の生産管理が抱える根本問題”って、なんでしたっけ? いろんな問題があって、どれが根本問題なのか、はっきりしない、とお感じになる方も多いんじゃないかと思います。“生産管理が抱える根本問題”、もう一度見直してみましょう。

図1に一般的な生産管理サイクル(月次生産)の一例を示します。この上位には経営方針や事業計画など、経営計画がありますが、現場の生産活動と直結する部分のみを示しています。月次生産では、市場情報、販売情報、社内の生産・在庫情報などをみて、向う4~6カ月の計画をつくります。直近の月の生産計画を確定し、日程計画におろし、現場に製造指図が出されます。1ケ月サイクルでローリングしながら、未確定月の計画を見直し、修正していきます。

図1 生産管理の概要

現場は生産・販売・在庫計画に従い生産活動を行い、その実績を報告するという計画・生産サイクルで動いています。上からの指令を処理する計画系と現場の作業をサポートし報告する実行系情報処理機能がこの管理サイクルをサポートします。

市場が比較的安定していて、巨大なサプライチェーンを維持しなければならない、自動車産業などはこのような方法が向いていると考えられます。しかし、大部分の企業は多品種少量で需要変動の激しい市場を抱えています。立てた生産計画もすぐに変更を余儀なくされ、しかし変更が追い付かず現実との乖離が拡大するまま、混乱が常態化した現場で奮闘しているのが実態ではないでしょうか。

生産管理の根本的な問題は何だったでしょうか? 需要等の様々な変動に管理サイクルが追い付かないことです。これを解決する最も簡単かつ強力な手段は“生産計画の固定”です。固定といっても多少(3%程度)の変動は許容しますが。トヨタ生産方式では当月(N月)の生産計画は固定し、N+1月、N+2月、、はある範囲の変更を許容し、ローリングしています。つまり、管理サイクルは1カ月、変更に許容される時間は1カ月、変更の範囲は限定、、という条件で動いております。

Hitachi AI Technologyは、生産固定ではなく、変動を前提にしています。「需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替えが可能」というのなら、どの程度の時間で計画の組み替えが可能なんでしょうね。変更に要する時間は管理サイクルよりは短くなければなりません。管理サイクルが1カ月、変更に要する時間が2週間、、ではダメ。時間単位でないとダメです。進行中の生産予定を変更するわけですから、、。Hitachi AI Technologyは、例えば、1~2時間で生産予定を変更し、その後問題なく生産を続行することができるんでしょうか。

人の組織、ルール、機械設備、資材調達、外注などなど、、、現実の生産システムはとてつもなく大きなイナーシャを持っています。いたるところで、それぞれ異なった時間遅れ特性が絡み合い、生産計画を変更しても、しばらく(数日とか、、)は、旧生産計画のまま動いてしまいます。新・旧生産計画が入り乱れ、生産現場の混乱が心配されます。Hitachi AI Technologyはそのような根本的な問題を解決できるんでしょうか。次の説明が手掛かりになりそうです。

<一部抜粋>
日立は、長年にわたって、限られた時間内で瞬時に多くの制約条件を満たす必要のある、鉄道のダイヤ編成など運行管理の分野に取り組んできました。現在では、ここで培われた数理最適化技術を応用して、製造現場において最適な生産計画を自動生成するための制約プログラミングを研究しています。今回、サービス提供開始にあたっては、数理最適化技術に機械学習を用いたAI(熟練者のノウハウをシステムへ組み込む)を融合し、独自の新しい制約プログラミング「Hitachi AI Technology/MLCP(Machine Learning Constraint Programming)」を開発し、サービスの中核技術として適用しています。

その他の説明事項も含めてまとめますと、Hitachi AI Technologyは、鉄道のダイヤ編成やこれまでの生産計画立案担当熟練者のノウハウを機械学習でAIに取り込み、「需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替え」を可能にした、ということですね。

さて、ここですね。ポイントは。

「鉄道のダイヤ」って、ときどき、臨時列車も走りますが、ある期間はほとんど固定ですよね。ダイヤ編成の熟練者のノウハウをAIで取り込むことで、ダイヤ編成技術が向上することは、確かでしょう。将棋や囲碁の棋譜を大量に学習させ、AI将棋、AI囲碁が人間を上回ったことで証明されていると思います。

生産管理サイクルで回り、生産計画を固定できる環境であれば、熟練者のノウハウを発展させて「自動的に最適な生産計画を立案」するレベルを上げる可能性はありそうです。

、、が、「需要変動など日々の環境変化にも柔軟に生産計画の組み替え可能」に、となるかどうか、ここがポイントになりますね。

次回、もっと、突っ込んで、検討してみたいと思います。

https://www.tocken.comDPM研究舎に戻る

令和はAIで大きく変わる

囲碁ファンにとって最近、気になるニュースが二つ。「仲邑菫(なかむら すみれ)初段が、史上最年少の10歳でプロ棋士になった」、というのと「GLOBIS-AQZプロジェクトが始動、囲碁AI(人工知能)世界一と若手棋士育成を目指す」というニュース。前者は、日本棋院の英才特別採用推薦棋士 第1号。GLOBIS-AQZプロジェクトとは、2018年9月に発足した囲碁AIの開発プロジェクト。グロービスが主体となり、トリプルアイズと山口祐氏による共同開発、日本棋院の協力の下、若手囲碁棋士育成を行い、また産業技術総合研究所と「高性能計算機を用いた強化学習モデルの最適化に関する研究」を共同で行うというもの。

背後で何が起きているのか。若手棋士育成に力を入れなきゃいけないのは、なぜなんでしょうか。日本棋士の実力のほどを調べてみました。

この棒グラフは、囲碁世界ランク100位以内の、日本、韓国、中国を拠点とするプロ囲碁棋士の内訳です。1980年から2019年4月までにどのように変わったかを示しています。1980年代前半は、日本が圧倒していました。1980年~82年までは1位~3位までを独占。その後(1983年)1位の座を韓国に譲ってから日本人棋士の人数が減少し続け、1985年には3位内にいなくなりました。韓国は2014年まで1位の座をキープし、その間1位~3位を独占した時期もありました。2015年に中国が1位の座に付き、以後、中国と韓国の2強時代が続いています。

日本だけをみれば、井山裕太棋士が7冠を達成し(2016年、2017年)、圧倒的な強さを見せていますが、世界ランクでみれば、2016年の6位が最高で、現在(2019年4月12日)は34位。2008年以降、100位以内に日本は10人以下。これが日本囲碁実力の現状です。

で、冒頭の二つのニュース;若手囲碁棋士育成策が出てきたわけです。キーワードは「若年」と「AI」。「若年」については昔から言われていたことで、囲碁に限った話ではないのですが、「AI」は、今風ですね。ということで、囲碁とAIとの関連について調べてみました。

先ずはチェス。1997年5月、当時のチェスの世界チャンピョンが、IBMが開発したDeep Blueに2勝1敗で敗れました。Deep Blueの開発が始まったのは1950年頃だそうで、結構な年月を要したんですね。

日本では将棋と囲碁が盛んです。将棋AIの開発が始まったのが1974年頃だそうです。その後様々な場面で将棋の“AI vs人間”の対戦が繰り広げられてきましたが、記憶に残っているのは、2011年12月、2012年1月の2回、米長邦雄永世棋聖がボンクラーズと対戦し、2戦2敗。そして、AIの勝利を決定づけたのは、2016年4月、5月に行われた第1期電脳戦。Ponanzaが山崎隆之八段に2戦2勝。翌年2017年4月、5月におこなわれた第2期電脳戦では佐藤天彦名人に2戦2勝。これで、将棋の“AI vs 人間”の勝敗は決しました。

囲碁ではどうでしょうか。将棋は日本以外にプロ組織がないので日本だけの話ですが、囲碁のプロ組織は、韓国、中国、台湾、アメリカ、ヨーロッパにもあり、世界が基準。

囲碁AIの開発は1962年頃、始まったようです。囲碁はチェスや将棋と比べ、盤面が広く手順が長いので変化が多い。チェスが10の120乗、将棋が10の220乗、囲碁が10の360乗だそうです。また、囲碁は状況や場合ごとに石の価値が変化するので、それをコンピュータに認識させるのが難しいようです。そんなこともあってか、4~5年前まではアマチュアの初段レベルがやっと、とのこと。

2015年10月、ディープマインド社が開発したAlphaGoがプロ囲碁棋士に勝ったというニュースが飛び込んできました。2016年3月には韓国のイ・セドル(2007年~2011年 世界ランク1位)を4勝1敗で下し、そして、2017年5月には中国の柯潔(カケツ;2016年~2017年 世界ランク1位)に3戦全勝しました。手の変化の多さから囲碁のAI化は将棋のそれから10年~20年後ではないか、と言われていましたが、ほぼ同時期に囲碁AIが人間を凌駕したわけです。AlphaGoの衝撃は大きかったんですね。

2018年以降は、”AI vs人間”から”AI vs AI”の時代に。それまでのAIとは違い、対戦データを一切使わないで、自分対自分の対戦で学習するAlphaGO Zeroが登場。AlphaGoと対戦したAlphaGO Zeroは100戦全勝。AlphaGoはチェス、将棋にも対応したAlpha Zeroに進化しました。2008年、チェスAIのStock Fishを負かし、Ponanzaに勝利した最新将棋AI、Elmoにも圧勝しました。その後、絶芸、DeepZenGo、AQなど続々と囲碁AIが出てきて、”AI vs AI”の対戦が盛んにおこなわれています。

少し、視点は変わりますが、先の日本の囲碁の減退カーブ、日本経済のそれと似てるんじゃないかな、と思い、調べてみました。世界のGDPと日本のそれとの差の推移を、囲碁世界ランク100位以内の日本人棋士人数の推移に重ねてみました。

1990年~2009年の、日本のDeflationと囲碁のDegradation。驚くほど似ていますね。2008年のリーマンショックをきっかけに、経済政策は異次元の金融緩和などのInflation指向に舵を切りましたが、囲碁に関してはやっと具体的な対策が出てきた、といったところでしょうか。

囲碁と経済成長率との関連があるのかどうかはわかりませんが、囲碁業界に強烈なインパクトを与えた囲碁AIは、ボードゲームだけの話ではなく、産業、経済活動の源である知的活動にも劇的な変化をもたらすはずです。だとすれば、“GLOBIS-AQZプロジェクト”は日本の囲碁復活だけではなく、停滞する日本の産業、経済復活の起爆剤になるのではないか。

自動運転、顔認証、自動翻訳、音声認識・合成、、、とすでにAIの波が押し寄せています。世の中の大転換期に差し掛かっているのは間違いないのではないか。

本Websiteのテーマ、生産管理や在庫管理はどうなるんでしょうね。月次生産計画基準の現行生産管理システムのままで生き残れるんでしょうか? 間もなく押し寄せるAIの波に生産管理システムはどうなるのか。戦き後ずさりするよりも、生産管理が抱える不可解な疑問、慢性的な問題を解決する千歳一隅のチャンス到来と捉える方がいいんじゃないでしょうか。

世界大戦で亡国の憂き目に会った昭和から、この30年、平和に成りました。しかし、元気もなくなったように思います。間もなく令和。令和は、元気を取り戻す時代になってほしいものです。

http://tocken.com

原価計算の弊害にお気付きですか?

先日、ダイヤモンド社から「TOCスループット会計」重版の知らせが来ました。「へ~ぇ、まだ売れてんだ!」、、。初版発売は2005年5月ですから、、賞味期限はとっくに過ぎたのに、、。

小生が製造現場で奮闘している頃、「コストダウン」という言葉を聞かない日はありませんでした。売値は市場で決まる。だから利益を上げるためには「コストダウン! コストダウン!」。疑問も持たずに、毎日、毎日、コストダウン、コストダウン、、、。

原価検討会とかいう会議が毎月行われておりました。そこで製品ごとの原価と売値(工場では振替価格)の一覧表が発表されます。材料費、工程ごとの加工費、機械設備の償却費、様々な費用の配賦、、、等の個別原価の分析資料も配布されます。赤字の製品の担当者はその理由を説明させられます。分析資料をみながら、費用が多い項目、増えた項目などを探して、もっともらしい説明をするわけです。来月は「このようなコストダウン対策をやります」とかなんとか言って、えらい方々の攻撃の鉾を交わす、、。そんなことが毎月、毎月繰り返されておりました。

実は小生が、生産管理や在庫管理に疑問を持ち始めたのは、「コストダウン」と実際の利益との関係があまりない、、いや、ほとんど関係ないことをうすうす感じてきた頃です。

例えば、社内の賃率(単位時間当たりの加工費)が50円/分、外注のそれは20円/分。外注に出すことで大幅なコストダウンができます。「もっと外注化を進めろ!」というえらい方の号令で、あれも、これも、外注へ出す。製品1個原価は、計算通りとはいかなくても、下がります。そんな数字をみて、外注化にさらに力が入ります。その結果、個別原価もさらに下がり、部門利益も上がり、会社全体の利益も上がりました。

この作戦、右肩上がりのときは、うまくいきました。が、景気の停滞が長引くと、会社の利益が減少し、部門の利益も減少傾向が続くようになります。外注化がますます強化されます。外注化は、国を超え東南アジア、中国へとシフトしていきました。そのころ中国の賃率は日本の10分の1以下。生産地から販売拠点までの物流を考えての海外シフトではなく、賃率の安さで海外展開したわけです。物流費は上がり、それよりも何よりも、生産リードタイムが10倍~20倍。それに比例して全体の在庫がうなぎ上りに増えてしまいました。会社の業績は上向くどころか、坂を転げ落ちるように下がっていきました。

「コストダウン」をなりふり構わず進めると「コストアップ」になる、、という体験は、その後の製造管理に対する考え方を変えるきっかけとなりました。

それが、「TOCスループット会計」の翻訳へとつながったのではないかと思います。小生は会計の専門家ではありません。会計と名の付く本を訳していいのかな、と、少しの逡巡はありましたが、会計というよりは、「コストダウン」の弊害を突いた内容だったこともあり、出版に踏み切りました。

利益を増やすために行う「コストダウン」が、逆に、利益を減らすことになるんだったら、すぐにやめればいいんじゃない、と思うのですが、現実はそうでもないんですね。「コストダウン」が体に浸み込んでいて、思考停止状態になっているのかもしれません。では、どうすればいいか。

原価計算が生産管理や在庫管理に及ぼす影響について考えてみたいと思います。実は、この問題、結構複雑なんです。先ずは、基本を確認しておきましょう。このWebでは繰返し述べていることですが、生産ラインや在庫循環のメカニズムは、基本的には物理現象である、と認識することです。ですから、生産管理や在庫管理を管理するためには物理的な操作をしなければならない、ということになります。

生産現場では常に「コストダウン」を心がけています。コストダウンの基準となるのが原価計算です。原価計算から出てくる指標は「製品1個原価」です。つまり、現在の生産管理や在庫管理では、「製品1個原価」で物理現象をコントロールしていることになります。

「製品1個原価」で生産ラインをコントロールしようとすると、先に挙げたようなことが起こってしまいます。「製品1個原価」ではなくスループットにしたらどうか。スループットについて簡単に説明しておきます。

Tu:製品1個のスループット
P:製品1個の売値
TVC:純変動費

Tu=P-TVC

スループットとは売値から純変動費を引いたもの、です。企業全体では、
T:スループットの合計
OE:業務費用
I:投資の合計
NP;純利益
ROI:投資利益率
として、
NP=T-OE
ROI=(T-OE)/I

製品1個原価とスループットの違いは次の2点。
原価計算                  スループット計算
*固定費を配賦            *固定費の配賦はしない
*ボトルネックを認識しない   *ボトルネックを認識する

別の見方をすれば、スループット計算は生産ラインの物理特性を考慮するが、原価計算は物理現象を無視する、ということになります。スループット計算が原価計算の弊害を防ぐことができる主要な理由は、この辺りにあるんじゃないかと思います。詳細は「TOCスループット会計」をご覧ください。

しかし、スループット計算でも「金額」で物理現象をコントロールすることには変わりはありません。どの程度コントロールできるのか、できないのか、気になるところです。

企業の目的を「儲けること」と単純化することは乱暴すぎますが、赤字を出し続けることはできません。そして企業業績は金額で評価されます。ですから、金額という評価基準は絶対的であり、逃れることはできません。

で、一方、ものづくりの現場は基本的には物理法則が支配しております。物理法則と金額との関係は、実は、製造企業にとっては、根本的な課題であると考えられます。

企業の業績は、法に縛られた公的な財務会計によって行われます。一方、管理会計は法的な縛りはまったくありません。財務会計で評価される業績をよくするために、企業それぞれが工夫する。原価計算を使ってもいいし、スループット計算でもいいし、もっといい方法があれば、それに切り替えればいい。

管理会計の自由度は大きいわけですが、実際はそうでもありません。やはり、財務会計との関係は正しく関連づけられていなければなりません。つまり、財務会計の影響がある。これが結構強いんじゃないかと思います。原価計算は財務会計の考え方には親和的だと思います。じゃ、スループット計算と財務会計との関係は、どうなんでしょうね、、。

生産管理・在庫管理と財務会計を結ぶ管理会計はどうあるべきか。企業の経営管理では重要なテーマなんじゃないかと思います。折をみて取り上げてゆきたいと思います。

DPM研究舎へ戻る

TOC支持者が気付いていないDBR/SDBRの致命的弱点

前回、次代の工場管理の方向性は、IoT等の情報技術を活用し、生産ラインの特性をベースにした需要基準の生産管理ではないか、という展望をガイドラインにして、平成の30年間に工場管理にどのような進化、変化があったかをザッと、振り返ってみました。

MRP―MRPII―ERPの進化とフォード生産方式―トヨタ生産方式(TPS)は、現在の工場管理を構成する2大潮流となっておりますが、それぞれに弱点もあります。それに対する幾多の改善、挑戦の中で、最も期待されたのは、TOCが提唱するDBR/SDBRだったのではないか。期待された主な理由は、MRPもTPSも悪しきものとして排除したバラツキをDBR/SDBRは積極的に許容したこと。漠とした暗雲に包み込まれた生産管理に光明がさしかけた瞬間でもありました。

しかし、かすかな痕跡は残ったにしても、DBR/SDBRが2大潮流に与えた影響はほとんどありません。だからと言って、DBR/SDBRは使いものにならない、、と切り捨てていいのか、、。TOCのブームが過ぎ去った今、なぜ、DBR/SDBRが機能しないのか、レビューする中から次のステップへ進むヒントみたいなものがみつかればと、、思いつつ、、。

DBR/SDBRの適用に関して、SDBRの開発者、エリ・シュラーゲンハイムの「DBR/SDBRの境界」と題したブログが参考になります。その中で、DBR/ SDBRの導入で高い納期遵守率と高い信頼性を達成するための、不可欠かつ基本的な前提条件に付いて次のように述べております。(出典;日本語英語) 気になるところを抜き出してみます。

*どの製造オーダーも、正味のタッチタイムがリードタイム(投入から完了までの時間)に比べて非常に短い。
 ゴールドラット博士は、タッチタイムはタイムバッファの10%未満だと仮定した。
 それ以外の時間は、必要なリソースが空くのを製造オーダーが待っている時間であり、リソースの多くは稼働率があまり低くない。
*ほとんどの製造オーダーは、イエローゾーン内に完了するか、レッドゾーンに食い込む当たりで完了する。 

――― 中略 ―――

なら、ある工程のタッチタイムがバッファの30%くらいになると、一体どうなるんだろう?
SDBRでは、バッファの保護対象は、原材料を投入してから完了するまでの製造プロセス全体です。一つの工程でその30%も使うとなれば、次の2つの重大な問に答えないといけません:
①そのバッファ時間で、製造プロセス全体の変動から納期を守るのに十分か? つまり、30%のタッチタイムは保護時間から引かないといけないので、残り70%の時間で納期を守るに十分か? ということ。

②DBR/ SDBRのバッファ管理では、製造オーダーが今どの工程にあるかはバッファの状態に反映されない。なぜなら、タッチタイムが無視できるときは、大して問題にならないからである。しかし、ある特定の工程でバッファの30%も使うとなれば、製造オーダーがその長い工程を通過したか否かは大きな問題である。仮にまだその長い時間かかる工程の上流にあるとしたら、残っている実質的なバッファは、納期までの残時間に比べて相当短い時間になるからだ。

DBR/SDBRを適用できるのは、タッチタイムがリードタイムの10%未満であること。それを超えるとき、例えばある工程のタッチタイムが30%くらいになる場合は、残りの70%の時間で納期を守るのに十分かどうかを確認しなければならないし、また、製造オーダーがその工程(タッチタイムが30%の工程)の前にあるのか後ろにあるのか確認しなければならない、と言っているわけです。

この説明を読んでいる限り、特におかしなところはないようですが、実はこれ、「DBR/SDBRの境界」というよりは「DBR/SDBRの限界」を吐露しているように感じられます。

具体的な数値を入れて考えてみましょう。例えば、リードタイムが10日だとすると、正味タッチタイムは1日未満。で、ほとんどの製造オーダーは、イエローゾーン内に完了するか、レッドゾーンに食い込む当たりで完了するということなので、図1に示す日数分布(平均6日)で完了する、とします。ということは、正味タッチタイム平均が1日として、平均待ち時間は5日ということになります。

注目しているのは時間です。正味タッチタイム、リードタイム、3つのタイムゾーン、待ち時間。どれも時間。そしてオーダーの飛び込む時間間隔はランダムにバラツキ、タッチタイムもバラツク。

図1 3つのタイムゾーンと平均完了時間のイメージ

この問題を「待ち行列理論」を利用して考えてみましょう。

簡略化して、生産ラインは1工程とします。オーダーの受注時間間隔は指数分布、タッチタイムは平均1日の指数分布に従うとします。平均完了時間を6日としますと、待ち時間は平均5日となります。単位時間当たりの処理数をμ、工程の稼働率をρとして、平均待ち時間は次の式で与えられます。

平均待ち時間=ρ/{μ・(1-ρ)}

単位時間を1日としますと、1日での平均処理数はμ=1、平均待ち時間は5日なので、

ρ/(1-ρ)=5
ρ=0.833

工程の稼働率は83.3%ということになります。その他にも次のようなことが計算できます。

平均到着率λ;単位時間当たりに到着するオーダーの平均数
λ=μ.ρ=0.833

オーダーの平均到着間隔は、1/0.833=1.2 となり、平均1.2日で1件のオーダーが来るということになります。

工程内にあるオーダー数の平均Lは、

L=ρ/(1-ρ)=0.833/(1-0.833)=5

工程前に処理を待っているオーダー数の平均Lgは、
Lg=ρ・ρ/(1-ρ)=0.694/(1-0.833)≅4.2

ということになります。イメージを図2に示します。

図2 タッチタイム1日の工程流れのイメージ

次に、タッチタイムが30%の場合について考えてみましょう。前と同じ条件でタッチタイムだけを平均3日として計算してみます。タッチタイムが平均3日かかりますので、待ち時間は平均3日(完了平均時間6日-タッチタイム平均3日)。タッチタイムが平均3日なので1日での平均処理数はμ=1/3。

3×ρ/(1-ρ)=3
ρ=0.5

工程の稼働率は50%になります。その他の値も同じように計算してみます。
L=0.5/(1-0.5)=1
Lg=0.5×0.5/(1-0.5)=0.5

イメージを図3に示します。

図3 タッチタイム3日の工程流れのイメージ

タッチタイムが10%から30%への変化に注目するため、その他の条件は大幅に簡略化しました。待ち行列理論を利用して計算したところ、タッチタイムが平均1日のときは工程の稼働率は83.3%、平均3日のときは50%という結果になりました。そして、仕掛と処理数を合わせた工程仕掛は、タッチタイムが平均1日では平均5オーダー、平均3日では平均1オーダーとなりました。

エリ―・シュラ―ゲンハイムの説明と比べてみましょう。

DBR/SDBRを適用できるのは、タッチタイムがリードタイムの10%未満であること

これをザックリと翻訳しますと、
「DBR/SDBRを適用できるのは、稼働率が83%未満であること」
となります。稼働率が83%以上を狙う場合はDBR/SDBRは使えませんよ、ということになりますね。

では、タッチタイムが30%のときは、、、そうですね。
「DBR/SDBRを適用できるのは、稼働率が50%未満であること」
となり、これが、タッチタイムが30%であるときのDBR/SDBRが使える条件だということになります。

残りの70%の時間で納期を守るのに十分かどうか、また、製造オーダーがその工程の前にあるのか後ろにあるのか確認しなければならない
なんていう必要はないことになります。(但し、オーダー個々の優先順を制御するときは、工程の位置が重要な意味を持つことになりますが、それについては別途、触れます)

いかがでしょうか。エリ―・シュラ―ゲンハイムの説明よりは、具体的なイメージがつかみやすくなったのではないでしょうか。ポイントは、工程の稼働率が重要な要素になっていることです。DBR/SDBRがバラツキを許容しておきながら、うまくバラツキを処理できない最大の理由は、稼働率(利用率)を考慮しなかったことではないかと思います。稼働率によって待ち時間が大きく変わります。どのように変化するかといいますと、実際は様々な係数がかかりますが、コアの部分は、
平均待ち時間=ρ/(1-ρ)
となります。一例を示しますと、図4のようになります。これだけ待ち時間が急激に変化する要因である稼働率を無視したら、リードタイムのコントロールなどできるわけはありません。一目瞭然でしょ。DBR/SDBRが機能しない理由は、生産ラインの物理的基本特性である稼働率と待ち時間の関係を正しく捉えていないから、なんですね。

図4 稼働率に対する平均待ち時間のカーブ

もちろん、待ち行列理論だけではすべてを説明できるわけではありません。待ち行列理論で計算できるのは、主に、平均値です。分布の形状を求めることはできません。生産管理では、納期遵守率も知りたいところですが、そのためには分布形状を計算する必要があります。どうしたらいいか、、。おいおい、お話ししてまいりたいと思います。

今回は、MRPやTPSが排除したバラツキを、むしろ積極的に取り入れながらも、結局はバラツキの渦の中で悶え、消えかけているDBR/SDBRの根本的欠陥は何なのか、についてお話しました。

DPM研究舎に戻る

平成の30年間にあった工場管理の進歩;次代を見すえて

株価最高の好景気で迎えた平成も、バブルの崩壊、リーマンショックなどなど、の激動を経てあと少し。この30年間、生産管理、在庫管理を中心とする工場管理はどのような進化、変化があったのか、、。ザットですが、振り返ってみようかと思います。

コマゴマしたことよりは大きなうねりというか、根底に流れるパラダイムというか、時代を背景にみえてくる特徴って、こんなことかな、的な感じで綴ってみたいと思います。

平成の30年を切り取ってみてもよくみえない。それよりさらに100年ぐらい遡って、その続きで平成の30年を眺めてみようと思います。120~130年前って、大量生産が始まった頃。大量に、効率よくつくる。で、すぐ頭に浮かぶのはフォード生産方式です。

1910年代、フォードは、ベルトコンベアを利用した流れ作業で自動車の組み立てを始めました。当初は黒色のT型フォード1車種。その後、生産車種は増えていきます。この流れ作業、自動車産業に限らず、様々な生産にも取り入れられていきました。そして一つの完成形がトヨタ生産方式ではないかと思います。現在トヨタでは、細かくみれば数万車種を生産しているといわれております。この流れを以下、TPS(トヨタ生産方式)と略称します。

生産量の拡大とともに多様化が進み、それに伴い必要とする部品、資材をいかに効率よく手配するかが課題となってきました。1960年代頃、コンピュータを利用した資材調達システムが出てきました。MRP(Material Requirements Planning)です。その後、製造能力を加味し時間の管理もできるようにしたMRP-II(Manufacturing Resource Planning)へと発展します。さらに、生産だけではなく、会計、人事など組織全体の資源管理も含めたERP(Enterprise Resource Planning)へ統合されていきます。

このMRPとTPS。対象とする主な領域はどちらも製造業。MRPもTPSもそれぞれうまく使いこなしている企業もあれば、まったくうまくいかない企業もあるようです。その程度は千差万別。

領域は同じでも、両者のアプローチは異なります。MRPは、BOM(部品表)情報で生産に必要な資材量を算出することから始まり、それにつながる生産計画の立案へと発展しましたが、TPSは生産ラインそのものの動かし方から始まり、多品種生産へと発展してきました。MRPはバッチ処理、TPSは1個処理という処理単位の違いは、このアプローチの違いと関連していると思われます。

MRPとTPSの対比それ自体、現在の生産管理の特徴を洗い出すうえで、結構面白いテーマだと思うんです。が、今回のテーマは、平成の30年間に工場管理がどのように進歩、変化したか、ですので、そのテーマに集中します。比較のテーマは折をみて、、。

MRPに対しクレームをつけたのが、TOC(Theory of Constraints;制約理論)の提唱者であるGoldrattです。MRPでは、工程ごとに限られた生産能力(生産リソース)を効率よく計画しようとしても、生産計画を収束させることはできない、と言うのです。それに対し彼は、DBR(Drum Buffer Rope)という生産方式を提唱します。生産ラインの能力は、能力の一番低いボトルネック工程で決まるので、ボトルネック工程だけ生産計画を立てればよい。他の工程は流れてきたものをその順に処理するだけ。ボトルネック工程を遊ばせないように、その前にバッファーを置くことで、生産ラインの能力を100%引き出すことができる、と主張したのです。

TOCをテーマにした小説、ザ・ゴールが米国で発売されたのが1984年、日本語版が発売されたのが2001年。300万部を超えるベストセラーになりました。

さて、このTOC。MRPの救世主になったのでしょうか? 結論から言えば“No”です。簡単な生産ラインであれば、ボトルネックは一カ所で固定されますが、生産ラインが長くなり、生産品種が多くなると、ボトルネックはあちこちに現れ、動き回ります。また生産ラインの合流点でもタイミングを取るためにスケジューリングが必要となり、簡単だったはずの生産計画が複雑化。結局、実行可能な生産スケジュールを立てることができなくなってしまいました。

その後、出荷工程だけをボトルネックとして、計画負荷という新たな考えかたを取り入れた、簡易型のS-DBR(Simplified DBR)が後継者のシュラ―ゲンハイムによって提案されます。しかし、簡易型でしかなく、適用範囲もごく限られているようで、MRPの欠点を実務的にどの程度修正できたか、確かな情報は得られておりません。

TOCはTPSにも異論を唱えます。「ザ・ゴール」から抜粋してみます。

(134~135ページ)
ジョナ;「『バランスがとれた工場』とは、・・・すべてのリソースの生産能力が市場の需要と完璧にバランスがとれている工場なんだ。・・・」
アレックス;「やはり完全にバランスのとれた工場なんて存在しないと思います」
ジョナ;「面白いな。・・・それじゃ、どうしてこれまで誰もバランスのとれた工場を実現したことがないと思うのかね。・・・」
アレックス;「・・・いつも条件が変化しているからだと思います」
ジョナ;「本当の理由は、バランスのとれた工場に近づけば近づくほど、倒産に近づくからなんだ」

バランスのとれた工場を目指すTPSでは、倒産しちゃいますよ、っていうわけです。DBR/S-DBRでは、バランスなど取れなくたっていいよ、バラツキがあってもいいよ、ということですから、TPSの導入で苦労している人たちにとっては、この上ない朗報となるわけです。

MRPの欠点を修正し、TPSの弱点を補う。一時、DBR/S-DBRは次世代の生産方式だ、なんて騒がれたこともありました。

MRPのスケジューリング機能を改善するもう一つの動きがAPS(Advanced Planning and Scheduling)。IT技術の進歩でスケジューリングの即時性と柔軟性が飛躍的に高まり、どのような生産環境でも最適な生産スケジューリングができるのではないか、と期待されました。日本でよく知られえるようになったのは、2001年に出版された「APS 先進スケジューリングで生産の全体最適を目指せ!」西岡靖之著、あたりからだと思われますが、最近はあまり話題にもならなくなりました。

その他にも、一気通貫生産方式という“まゆつばもの”など、いくつかありますが、MRPとTPSの流れに大きな影響を及ぼす提案はないように思います。もちろん、TPSでは、かんばんが電子かんばんとなるなど、トヨタ自身による改良は進んでいると思います。

これだけ、AIだ、5Gだ、IoTだ、そして第4次革命だ、と情報技術が進歩しているのに、MRPとTPSの流れに大きな変化は起きていない。なぜなんでしょうね。

TOCとAPSのチャレンジの中にヒントが隠されているように思います。DBRはボトルネックという生産ラインの特性に注目しました。APSはスケジューリングの即時性と柔軟性の実現をIT技術に託しました。ここまでは良かったんじゃないかと思います。

MRPとTPSのアプローチの違いについては前述したとおりですが、共通項もあります。それは、MRPもTPSも生産計画基準であることです。基準となる生産計画は固定されていなければなりません。MRPでは、生産計画が固定されていないと資材の所要量を計算できません。TPSも生産計画を固定しないと、平準化ができなくなるばかりではなく、同期生産もダメ、かんばん方式もダメ、、と、まったく機能しなくなります。

実は、生産計画基準、生産計画固定という条件は、MRPやTPSに限ったことではありません。現在の生産管理の大前提になっているのではないかと思います。「計画変更に柔軟に対応できます」といった美辞麗句満載の広告をよく目にしますが、計画基準であることの裏返しではないでしょうか。

この大前提が現在の工場管理の障害になっているとなれば、この障害を取り除く。つまり、生産計画を固定しないで、場合によっては、生産計画・スケジューリングなしで生産管理を行うことはできないのか。

これにチャレンジしたのがDBR/S-DBRだとみることもできます。スケジューリングをボトルネック工程だけに限定することで、需要変動に対する柔軟性と即時性を飛躍的に改善しようとしました。そしてS-DBRでは、出荷スケジュールだけに限定し、各工程のスケジューリングそのものをなくしてしまいました。

DBR/S-DBRのねらいは良かったのですが、“生産ラインの能力はボトルネックで決まる”という前提に固執し過ぎました。その結果、DBR/S-DBRは、適用の自由度を失い、どこか、隅っこで、細々と生き延びていくしかなくなった、、、のではないでしょうか。

平成の30年を振り返り、今後の生産管理の進む方向性は、、と、愚見をまとめれば、、。

*生産計画基準からの需要基準へのパラダイムシフト
*生産ラインの特性基準
*IoT、AI、5G等の情報技術の活用
そして、
*MRPとTPSの融合・統合

といったところでしょうか。

DPM研究舎へ戻る

年号とともに、頭の切り替えも、、

平成最後の年の流行語大賞は “そだね~” だそうで。これに触発されてか、私の耳に残った言葉は、“フェイクニュース”。 “フェイクニュース”を“そだね~”と拡散する、今のネット情報社会の危うさを思い起こしたからです。“フェイクニュース”の発信者は、それがフェイクであることを認識していますが、受け手側は、フェイクなのか正しいのか、わからない。情報量が増えれば、その質は落ちる、ぐらいならまだしも、悪貨が良貨を駆逐するみたいなことにならないように、、と、、。

ものごとの“真贋”、“正誤”を見極めることって、そう簡単ではありません。生産管理・在庫管理の世界でも、そうです。巷にあふれる関連書籍、Websiteに並ぶ数々の諸説・解説、コンサルタントの指導・手法、成功事例の物語、生産管理・在庫管理用ソフトの宣伝文句、、などなど、すべて正しいのか、、うーん、怪しいのもありそう、、。発信側は正しい情報を発信しているつもりなのでしょうけど、、。

この種の情報は、概ね、いいことしか書いてありませんので、ついつい、“そだね~”となってしまいます。きちんと理解できているわけではありません。なんとなく“そだね~”と。でも、同じような“説”、“話”が何回か、複数個所で目にすると、いつの間にか“定説”になったりします。

世界中に知れ渡ったトヨタ生産方式。多くの人がその方法と効用を認めます。しかし成功事例となると、限られた件数しかありません。トヨタ生産方式は本当に使えるのか? これだけ知名度のある生産方式でもグレーな部分があります。

生産管理のコンサルタントは、生産計画が基本だ、と強調します。生産計画がころころ変わるのであれば、毎日でも生産計画をつくり直しなさい、と。ぐずぐずしていると、“あなたの会社の管理能力は低い”、といわれて、ピリオド。

生産管理について物申すグループがもう一つあります。コンピュータ屋さんです。昨今、生産管理システムはコンピュータ無しでは成り立ちません。見込生産であろうと、受注生産であろうと、。生産管理をスムーズに行うためにコンピュータを入れようと思っていたら、「コンピュータに合わせて、管理の仕方を変えてください」、といわれて「えっ!??」。コンピュータ屋さんからみると、コンピュータに合わせて現場を管理することが基本、のようです。

少々強引ですが、生産管理にかかわる人、主義・主張を3つのグループに分けてみました。その他に、一気通貫生産方式とかAPS(Advanced Planning and Scheduling)なんていうのもありますが、論理性がなく、現実的な実行可能性はほとんどありませんので、省略します。

3つのグループを次のように仮称します。

① トヨタ生産方式基準―JIT系
② 生産計画基準―MRP系
③ コンピュータシステム基準―SE系

①のJIT系はトヨタ生産方式をベースにした生産管理方法。②の生産計画基準の生産管理は、最もオーソドックスなスタイルで、大量生産の進化の過程で形成されてきました。大量生産では、材料や部品をいかに準備するかが重要。そのためにMRP(Material Requirements Planning)が開発されました。MRPは部材の数量確保ですが、能力や時間も考慮しないと、生産計画に繋がりません。そのため、MRPII(Manufacturing Resource Planning)が開発されます。その後、いろいろ改良が加えられて、現在の生産計画をベースにした生産管理手法となったと考えられます。これをMRP系と呼んでおきます。そして、③、コンピュータ屋さんが主張するコンピュータシステム基準の生産管理をSE(System Engineer)系と呼んでおきます。

この3つ、ベースが異なるので、それなりの違いはあります。しかし共通点もあります。どれも生産管理を対象にしていること。これに異論はないと思います。その他に、共通事項は?

その他の共通項とは? 生産管理の本質にかかわることです。実は生産管理でもっとも重要な要素が抜けているんです。最も重要な要素って? そう、そう。バラツキです。

JIT系はバラツキの排除を条件として掲げています。そういう意味では、トヨタ生産方式の適用範囲は明確に示されているわけです。バラツキがあったのでは(実際は3%程度のバラツキは許容しているようですが)、平準化もかんばん方式も成り立ちません。ですから、トヨタ生産方式がうまくいかない主な理由は、バラツキ排除という条件を満たしていないからだ、と。では、バラツキを排除するためにはどうするか。そこで出てくるのが、ムダの排除、標準化、タクト生産、ラインバランス、、、等々の現場改善。ところが、この現場改善がうまくいかない場合があります。そんな時、JITのコンサルタントは、「現場改善力がない」とか「やる気がない」とか言いうわけです。

実は、バラツキの根源の多くは、社内ではなくて、社外にあるんです。主なものは需要の変動です。この種の変動は現場改善だけでは防ぐことはできません。別の手段でこの変動を遮断できるかどうか、これが、トヨタ生産方式がうまくいくか行かないかの大きな要素になります。具体的には、生産計画の固定です。生産計画が固定されていないと平準化はできません。平準化ができなければかんばん方式もうまくいきません。生産計画を固定できるのは見込生産だけです。つまり、トヨタ生産方式は見込生産と生産計画固定が絶対条件。ほとんどのJIT系コンサルタントは、この最も重要で基本的な条件を知らないようです。この条件が満たされない生産環境でJIT系コンサルタントを入れたりすると、かなりの確率で、うまくいきません。

MRP系もSE系も、実は、ある期間(月次生産なら1カ月間)生産計画を固定しないとダメなんです。ところが、生産計画はコロコロ変わっても大丈夫ですよ、って言ってるんです。それを可能にする技術があるのか、というと、何もない。生産管理のスピードを上げて、とかなんとか、パットしない方策を掲げてはいますが、、、。

3つに共通していること。それは、生産管理では避けることのできない変動、バラツキへの対応がない、ことです。但し、JIT系は、バラツキ排除を条件に掲げておりますので、そこをきちんと守れば問題はないでしょう。MRP系とSE系は、あたかも、バラツキを許容するかのような説明をしながら、具体的な方策は何もなし。これが混乱の元になってるんですね。

バラツキ、変動に対処する機能がないこと。これが現在の生産管理が抱える中核問題。解決の方向はどちらにあるのでしょうか。JIT系で行くのか、MRP系で行くのか、それともSE系か、、。

私見を述べましょう。JIT系は適用条件(バラツキを許容しない)をきちんと守ることに留意して、このまま改善を積み重ねていけばいいかなぁ、と思います。

MRPも見込生産にしか使えません。受注生産で使っている話も聞きますが、うまくいくわけありませんね。もともとバッチ処理が条件ですから、そのバッチをいくら小さくしても受注生産には使えません。もともとMRP系が時間管理に向いていないことは、生まれ育ちをみれば明白。先行き、利用範囲は狭くなっていくでしょうね。

残るはSE系。実は、SE系もMRP系の流れを汲んで、生産計画基準の生産管理システムになっています。計画変更に対応する努力は続いておりますが、コンピュータ側で対応できる部分は限られていて、生産計画を頻繁に変更しなければならない環境では使えません。SE系もダメか、、。

で、どうするか。

問題の本質は、何だったんでしょうか? トヨタ生産方式はバラツキを排除しました。それにより、生産ラインのメカニズムがすごく簡単になったんです。例えば、1工程10分、10工程の直列ラインでは、生産リードタイムは100分。投入から100分経過以降は10分に1個のペースで完成する、、、という具合に。

で、10分の処理時間が標準偏差2分のバラツキがあったらどうなりますか? 標準偏差が3分だったら、、? 1工程の処理時間が異なる製品が入り混じって投入されたら、、? 生産リードタイムも単位時間当たりの完成数も、判らなくなります。こうなると生産管理は成り立ちませんね。

バラツキが少し加わると生産管理は崩壊してしまいます。これが、現在の生産管理システムが抱える根本的な弱点なんです。AI(人工知能)技術が脚光を浴びているこの時代に、ですよ。

ちょっと、視点を変えてみます。今年は早くから、よく台風が来ました。台風の進路予想、最近は精度が良くなりましたね。気象衛星などの情報収集能力、過去のデータの蓄積、処理能力の高いコンピュータ、、などなど、関連技術の進歩があったためでしょう。

これから投入されるオーダーの進路予想をしてみましょう。仕様が決まっていて、通過する工程もわかっています。投入工程の前にはどのようなオーダーが投入を待っているのか、工程仕掛がどの工程にあるのか、、、などなど、必要なデータをとることは容易にできます。新たに投入するオーダーがいつ完成するかを予測するわけですが、台風の進路予想と似ていると思いませんか。生産ラインの中で起きる現象ですから、気象現象に比べれば、必要なデータ量は微々たるものです。パソコンでも処理できるんじゃないかな。

納期予測は、台風の予想のように確率分布になります。例えば、平均20日、標準偏差2日なんていう具合に。26日なら99.9%、24日なら97.7%、22日なら84.1%の確率で、、と。今の納期って、間に合うか、間に合わないか。つまり、0%か100%か、でしょ。それさえもはずれますからね、、。

品質管理の世界では、100年も前から、統計理論を使ってきました。同じ生産現場で、生産管理ではなぜ統計理論を使わないんでしょうか? これだけ、IT技術が進歩しているわけですから、技術的な問題はないと思いますよ。問題があるとすれば、、、。

コンピュータの使い方を根本的に変える必要があるのではないでしょうか。生産計画基準ではなく、需要基準へと。そのためには、生産ラインの物理特性をベースにしなければなりません。バラツキがあると、稼働率が60%~70%ぐらいから生産リードタイムは急激に長くなります。この特性をベースに、投入されるオーダーをリアルタイムに処理する、そんな生産管理システムにする必要があるのではないかなぁ。

稼働率に対する生産リードタイムの計算はそれほど難しくはありませんし、シミュレーションで求めることもできます。実績値を蓄積し、フィードバックすることもできます。生産リードタイムをある時間以下に制限するのも簡単です。ラインにある工程仕掛数を制限すればいいのです。稼働率が上がってくると投入口に待ち行列ができます。その長さで、投入待ちの時間が分かります。生産リードタイムも分かりますので、受注から完成までの時間の確率分布を計算することができます。

コンピュータって、このような計算、得意ですよね。SE系のみなさま、生産管理システムを入れてもうまく動かないのは、管理が悪いからだ、なんて人のせいにしないで、コンピュータの使い方を替えることを考えてみてください。おもしろいと思いますよ。年号も替わることだし、、。

“そだね~”って、言ってもらえるかなぁ~。

では、良いお年を。

DPM研究舎へ戻る