“専門家”よりも“現場の人”に聞け

“注文がいっぱい来ているときは、稼働率は高くなるがリードタイムも長くなる。注文が少ないときは、生産ラインはガラガラで稼働率は低くなるが、リードタイムは短くなる。”

製造業の問題解決を支援する 日本最大級のポータルサイト
ものづくりドットコム

に登録されている“専門家”は、「工程がワークの到着を待つ時間」と「ワークが工程の空きを待つ時間」の区別がつかないようなんです。生産ラインの稼働率とリードタイムの関係を説明できないのも、むべなるかな。

しかし待てよ。注文がたくさん舞い込み、残業しても、休日出勤しても納期に間に合わなかったことや、注文が少なくなったとき稼働率を上げろと言われ、先々の納期のものを前倒しでつくったことなど、製造経験者なら誰しも経験したことだ。

もしかすると、製造現場の方が知っているのかもしれない。

エーワン精密という会社があります。創業者の梅原勝彦氏が下記の書を出版していますので、ご存知の方も多いのではないか、と思います。

 「経常利益率35%を37年間続ける町工場強さの理由」 日本実業出版社 2008/3/20
 「最強の20億円企業 エーワン精密の秘密」 日経BP 2008/11/1
 「日本で一番の待ち工場 エーワン精密の儲け続ける仕組み」 日本実業出版社 2011/2/26

10年以上前に出版された書ですが、エーワン精密の高利益体質は今でも健全のようで、ときどき雑誌等で取り上げられています。Webをググっていたら、おもしろい記事をみつけました。

「メディアを育てる経済記事批評」 鹿毛秀彦
2020年7月20日月曜日
「人も設備も過剰で『超短納期』」の説明が苦しい日経ビジネス

一部抜粋します。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

日経ビジネス7月20・27日合併号の特集「危機に強い ぽっちゃり企業」の中の「『余剰人員は悪』を疑え エーワン精密~人も設備も過剰で『超短納期』」という記事は理解に苦しむ内容だった。記事を見た上で具体的に指摘したい。

【日経ビジネスの記事】

<中略>
不況期でも設備量を「やや過剰」にしているのは、急な注文にも対応し、超短納期で製品を提供するのがエーワン精密の最大の強みだからだ。例えば、主力の「コレットチャック」という製品は、他社なら納入まで1〜2週間かかるが、エーワン精密なら早ければ翌日に納入できる。他社との競争で優位に立てるし、顧客とも対等な価格交渉が可能になる。

「もう少し価格を下げてもらえませんか」。顧客である売上高数千億円規模の大手企業の担当者が頼むと、エーワン精密の担当者はためらいなくこう言って電話を切った。「それはできません」

今から十数年前のこと。相手先の大手は、あの永守重信会長が率いる高成長企業の日本電産である。エーワン精密は、その値下げ要求に毅然とした態度を取った。

「短納期や品質など相手に与えられるメリットがあるから顧客は価値を認めてくれる」と梅原氏は言う。同社は不況期でも値下げには一切応じない姿勢を貫いてきた。

<中略>

同社は人員も「やや過剰」。不況期の人員整理は珍しくないが、エーワン精密の考え方は正反対だ。好況になって需要が戻ったときのために人員を抱えておく。さらに、約100人の従業員は全員が正社員である。「せっかく育てた社員たちを雇い続けなければ会社にとってマイナス」がエーワン精密流の考えなのだ。値下げをしない収益性の高さが雇用を守る“原資”となる。

好不況の波にも左右されず、どんなときにも柔軟に対応する「やや過剰」の経営がエーワン精密を支えている。


xxxxxxxxxxx

<中略>

(2)なぜ「超短納期」にできる?

「人も設備も過剰で『超短納期』」というのは記事の柱だ。しかし「超短納期」を実現できる仕組がよ
く分からない。「他社なら納入まで1〜2週間かかるが、エーワン精密なら早ければ翌日に納入で
きる」のであれば、圧倒的な差だ。「人も設備も過剰」にすると、これを実現できるだろうか。

「過剰」と言っても、あくまで「やや過剰」だ。「他社」の設備稼働率が100%だとしたら「エーワン精密」も90%程度はあるだろう。他の条件が同じだとして、なぜここまで「超短納期」にできるのか謎だ。

「人も設備」も「やや過剰」にするだけで、これだけ圧倒的な差を付けられるならば「他社」も追随しそうなものだが…。

「やや過剰」がどの程度の「過剰」なのか明確でないのも残念だった。できれば具体的な数値で示してほしい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

この経済記事批評家の指摘のポイントは、

他社なら納入まで1〜2週間かかるが、エーワン精密なら早ければ翌日に納入できる」のであれば、圧倒的な差だ。「人も設備も過剰」にすると、これを実現できるだろうか。

さすが、経済記事批評家。この指摘は、鋭い。

ものづくりドットコム に群がる“専門家”達の中には誰もこのような疑問を呈している人はおりません。人、機械の「手空き時間」とワークの「待ち時間」の区別も付けられない方々ですから、疑問なんて浮かばないんでしょうね。

では、この経済記事批評家の疑問にお応えしましょう。

理屈は後回しにして、稼働率が高い場合と低い場合の生産リードタイムをシミュレーションで確かめてみます。エーワン精密の工程条件はわかりませんが、生産ラインの性質は共通です。工程処理時間合計や稼働率はエーワン精密の場合に近い数値を設定してみます。

生産ラインは5工程直列ラインとします。1工程の処理時間は平均1.2時間、変動係数0.5のガンマ分布を使います。5工程は同じ処理能力とします。注文はランダムに舞い込むので、その時間間隔は指数分布を使います。

稼働率100%を目指す一般の企業の稼働率を97%、エーワン精密の稼働率は70%を維持している(日経ビジネスの記事から)とのことなので、65%とします。

稼働率が97%のときと65%のときの生産リードタイムがどのようになるか、シミュレーションしてみます。利用したシミュレーターはSIMUL8。

図1に稼働率が97%のときと、65%のときの生産リードタイムの分布を示します。


図1 稼働率97%、65%での生産リードタイム

稼働率65%のときの生産リードタイムの平均は約10時間、最長は23時間程度です。一方、稼働率が97%では生産リードタイムの平均は45時間程度で最長は75時間ぐらいになります。1日を8時間として日にちに直しますと、

*稼働率65%では、平均1日と2時間~最長で2日と7時間。
*稼働率97%では、平均が5日と5時間~最長は9日と3時間。1週間を5日とすると、平均で1週間と1日~最大で2週間

となります。

「他社なら納入まで1〜2週間かかるが、エーワン精密なら早ければ翌日に納入できる」
とだいたい合っているのではないでしょうか。

どちらも処理時間は1工程平均1.2時間で投入から完成まで正味処理時間は平均6時間でおなじです。違いは待ち時間です。待ち時間のシミュレーション結果を図2に示します。稼働率が高くなると待ち時間が長くなることがわかります。そして稼働率が高くなると生産リードタイムが長くなる原因は、待ち時間が長くなることだ、ということもわかります。


図2 稼働率97%、65%での待ち時間

図3は稼働率に対する平均生産リードタイムの関係を近似式で計算した結果を示しています。稼働率が高くなると、80%辺りから平均生産リードタイムが長くなり、90%を超えると急激に長くなります。これが稼働率と平均生産リードタイムの関係の特徴です。

稼働率が高くなると生産リードタイムが急激に長くなる。逆にみますと、稼働率を低くすると(人、設備を過剰にすると)生産リードタイムが急激に短くなる。


図3 稼働率と平均生産リードタイムとの関係(近似式で算出)

<まとめ>

[経済記事批評家の疑問]

エーワン精密~人も設備も過剰で『超短納期』」という記事は理解に苦しむ。
「他社なら納入まで1〜2週間かかるが、エーワン精密なら早ければ翌日に納入できる」のであれば、圧倒的な差だ。「人も設備も過剰」にすると、これを実現できるだろうか。

[検討結果]

「人も設備も過剰にすることで『超短納期』を実現している」とのエーワン精密の実情を伝える日経ビジネスの記事。定量的説明がなく、「ほんとうに実現できるのか?」と疑問が提起された。シミュレーションの結果は、記事の内容が事実であることを裏付けている。

シミュレーションの結果、稼働率65%のときの生産リードタイムの平均は約10時間、最長は23時間程度。一方、稼働率が97%では生産リードタイムの平均は45時間程度で最長は75時間ぐらい。1日を8時間、1週間を5日とすると、稼働率65%では1日と2時間、最長で2日と7時間。稼働率97%では平均で1週間と5時間、最大で1週間と4日、3時間となる。これは、日経ビジネスの記事の内容とほぼ同じ。

図3でわかるように、エーワン精密が基準としている稼働率70%付近は、生産リードタイムが比較的短く安定している。稼働率100%を目指している一般の企業は稼働率が80%以上の領域で稼働していると思われる。稼働率が80%ぐらいから生産リードタイムが長くなり始め、90%を超えるあたりからは急激に長くなり、しかも、バラツキが大きくなり不安定になる。

過剰な人、設備を抱えることにより、生産リードタイムが短く且つ安定した領域で生産を行う、というエーワン精密の戦略にはきちんとした論理的根拠があった。

詳細な説明は省略するが、この現象は「待ち行列理論」として知られ、スーパーのレジ、昼休み時のATMなどの人の行列、さらには電話、インターネットのトラフィックなど、身近で起きる現象の背後にある理論である。

エーワン精密の創業者の梅原勝彦氏がこの原理、理論を知っていたかどうかは不明。著書の中に該当する記述はみあたらない。

製造経験者なら誰でも経験する「稼働率」と「生産リードタイム」のジレンマ。「生産性向上」=「稼働率を高くする」、という呪縛の虚に気付き、「稼働率70%が最適だ」と導き出したのは、氏の「経験則」からではないだろうか。

生産現場で起きる様々な日常茶飯が蓄積され、醸し出された「経験則」は貴重である。原理、理論を知らなくても、実用的な“Good Answer”にはたどり着ける。日本の製造業の現場は、意外と、こんな「経験則」で支えられているのかもしれない。書籍・Web等から得た情報をパッチワーク的にコピペして作る“専門家の能書き”よりは、はるかに有用な情報資源(示現?)であることは確かだ。

“専門家”よりも“現場の人”に聞け!

DPM研究舎

製造業の問題解決を支援する専門家に物申す

このページのpdfはこちらにあります。

生産ラインの基本原理も理解していないまま生産スケジューラを開発し、万能であるかのごとき誇大広告を拡散し売りまくる生産スケジューラベンダー。ベンダーが言うように“きれいに”使っている企業はほとんどなく、大部分の企業では、ほこりをかぶったまま、部屋の片隅に放置しているのが実情のようです。

では、このような問題解決に手を差し伸べる工場管理の専門家はどのように考えているのでしょうか。

専門家が集まっているサイトがあります。

製造業の問題解決を支援する 日本最大級のポータルサイト
ものづくりドットコム https://www.monodukuri.com

製造業の問題解決を支援する多数の専門家(コンサルタント、大学内専門家、企業内専門家、退職した専門家)が登録されているとのこと。それぞれの専門分野で、実務に沿った実践的な問題解決策を提案しています。このサイト、メディアにも頻繁に紹介されており、日本の生産・製造技術に関する最新情報を発信しているようです。

あるページに着目してみます。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/2620

以下に抜粋します。

~~~~~~~~~~~~~~~

(5)リードタイムの大半が待ち時間となっている

 部品加工会社の製造リードタイムについては実際に加工している正味製造時間を積算した合計時間をイメージする人が多いようです。そうした人は正味製造時間の短縮活動を進めたり、IoT システムで製造時間管理を徹底したりすればリードタイムも削減できると考えがちです。

図2.製造リードタイムと待ち時間

 ところが、部品加工工場の正味製造時間はリードタイム全体の10~30% 程度に過ぎません。残りの時間は図2に示した何らかの待ち時間(滞留時間)などです。

 生産管理システムを使って製造リードタイム短縮や納期遵守率向上を目指す場合は、製造時間以上に待ち時間の管理が重要となります。
<中略>
 工場関係者やコンサルタントの中には、加工時間を短縮さえすれば製造原価が安くなり利益が増えると思われている方がおります。これは大きな誤解です。
<中略>

~~~~~~~~~~~~~

ポイントは、
「製造リードタイム短縮や納期遵守率向上を目指す場合は、正味製造時間以上に待ち時間の管理が重要となります」
という辺りでしょうか。

この考え方に100%同意します。で、待ち時間の内訳(図2)で気になる項目が二つ。

「ワーク待ち時間」「工程待ち時間」

「ワーク待ち時間」は、多少語句を補って、“製造工程が前工程から流れてくるワークの到着を待っている時間”。「工程待ち時間」は“製造工程前にあるワークが、その工程が空くのを待っている時間”、と解釈できます。何が(誰が)待つのか、主語をはっきりさせて、次のように表現します。

「ワーク待ち時間」は、「工程がワークの到着を待つ時間」。これは工程が処理可能だが、ワークがなくて“手空き”の状態だ、ということですので「手空き時間」または「手空き」と表現します。
「工程待ち時間」は、「ワークが工程の空きを待つ時間」。これは「待ち時間」または「待ち」と表現します。

上記の説明では、「手空き時間」も「待ち時間」も製造リードタイムに含まれていると説明されています。「手空き時間」が長くなっても、「待ち時間」が長くなっても製造リードタイムは長くなる、ということになりますが、、、。

実は、これが大間違い!

ちょっと、考えてみましょう。

A、B、Cの3つの工程が直列に繋がった生産ラインを例にします(Fig.1参照)。工程Aの正味製造時間は10分、工程Bのそれは15分、工程Cは12分とします(バラツキはないとします)。投入から完成までの製造リードタイムは何分になるでしょうか? 工程間の移動時間などその他の時間はゼロとします。


Fig.1 3工程直列生産ライン

常識的には、10+15+12=37(分)。でも、いつもこうなるとは限りません。ワークの投入時間間隔によってはそうならないことがあります。

ワークの投入時間間隔を15分としてみます。Fib.2をご覧ください。


Fig.2 投入時間間隔が15分のときの工程の流れ

ワーク1、ワーク2、ワーク3が15分間隔で投入されます。ワーク1は0分に投入され、工程Aで処理が終わるのが10分。同時に工程Bで処理が開始され、終わるのが25分。工程Cでは25分に処理が始まり37分に終了し、完成となります。

ワーク2は15分に投入され工程Aでの終了時刻は25分。工程Aはワーク1の処理が10分に終了してワーク2の処理を15分から始めますので、5分間の手空きが生じます。工程Aでワーク2の処理が終わるのが25分。その時工程Bはワーク1の処理が終わりますので、ワーク2の処理を直ちに開始し、終了するのが40分。工程Cでは、ワーク1の処理は37分に終わっていますので3分間手空きとなり、40分からワーク2の処理を始め52分に終了し、完成します。ワーク2の処理開始時刻は15分、完成が52分ですので製造リードタイムは37分となります。以下同様です。

それでは次に、ワークの投入時間間隔を20分にしてみます。Fig.3をご覧ください。


Fig.3 投入時間間隔が20分のときの工程の流れ

ワークの投入時間間隔が15分から20分になることによって工程Aの手空き時間が5分から10分と長くなりました。工程Bでは15分のときは、手空きはありませんが20分になると5分の手空き時間が発生します。工程Cの手空き時間も3分から8分と長くなります。

では製造リードタイムはどうなるでしょうか。Fig.3をみてわかるように、製造リードタイムはワークの投入時間間隔が長くなって手空きが長くなっても、37分で変わりはありません。手空きがいくら長くなっても製造リードタイムは長くならないことは明白です。

これで図2の説明は“間違い”であることをご理解いただけたと思います。

では、ワークの投入時間間隔を10分にしてみましょう。その時の工程の流れの一例をFig.4に示します。


Fig.4 投入時間間隔が10分のときの工程の流れ

工程Aの処理時間が10分ですので、ワークが10分間隔で投入されれば手空きはなくなります。ところが工程Bの処理時間は15分ですので、ワーク1は待たなくてもいいのですが、ワーク2は工程Bの前で5分、ワーク3は10分、待たなければなりません。工程Bの手空き時間は無くなりますが、工程Cでは、工程Bから出てくるワークの時間間隔が15分であるのに対して処理時間が12分なので、3分の手空きが発生します。

製造リードタイムをみてみましょう。ワーク1の投入が0分、完成が37分で製造リードタイムは37分。ワーク2の投入が10分、待ち時間5分が加算され完成が52分で製造リードタイムは42分。ワーク3は投入が20分、待ち時間が10分で完成が67分で、製造リードタイムは47分となります。Fig.4をみてわかりますように、その後ワーク4、ワーク5、、が10分間隔で投入されれば、製造リードタイムはどんどん長くなります。

簡単にまとめますと、
手空き時間が長くなると稼働率が低くなる
待ち時間が長くなると製造リードタイムが長くなる
ということになります。

実は、この現象、生産ラインの基本を理解する上で、極めて重要な特性なんです。これを理解せずして“製造業の問題解決を支援する”なんておこがましい限りです。専門家足りえません。

単なる“Careless Mistake”でしょうか。「ものづくりドットコム」に登録されている専門家の解説記事に目を通してみましたが、「手空き」と「待ち」を識別して製造リードタイムや稼働率に言及している専門家はみあたりません。現在の「日本の生産・製造技術」を支える専門家のレベルだ、と考えると、寒気がしてきます。

生産スケジューラの開発者・販売者は生産ラインの基本原理を理解していないのではないか、との懸念を申し上げました。ところが、ところが、生産スケジューラの開発者・販売者だけにとどまらず、製造業の問題解決を支援する多数の専門家(コンサルタント、大学内専門家、企業内専門家、退職した専門家)も生産ラインの基本原理を理解していないようなのです。

“電流と電圧”を区別できない電気技術者、“歯車と滑車”を区別できない機械技術者、、うーん、、うまく例えられません、、、。でも、それぐらい致命的な欠陥ではないでしょうか。

反論を歓迎します。

DPM研究舎

生産スケジューラベンダーの暗影から抜け出せ

Asprovaとのメール交換の中から、気になるところを抜き出してみます。

~~~~~
質問;「生産計画スケジューラは、あらゆる生産形態、生産状況に適応できます」といっているが本当か?

Asprova回答;弊社は現実と理想の中間点でシステム化する事をお勧めしており100%を目指していないところはあるかもしれません。どんな業種でも生産計画は立てていますが完璧な計画は立てられていないので、少しでも計画業務を軽減する事を目指しています。従って、10%でも効果があればできると言っている面はあると思います。
~~~~~

なんとも歯切れの悪い回答ですが、
「10%の計画業務軽減ができれば良し」。

軽減できるのは計画業務だけ? それも10%だけ?

Asprovaのホームページには、
「計画通りに、無駄無く、効率良く」“現場のニーズ” に全てお応えできます
ってありますけど、、。

すこし、好意的な目でみてみましょう。一連のAsprovaの説明の中には、効果を出すための様々な改善努力がされているようです。そのかいもあってか、導入実績も国内外合わせて3000社を超えているとのこと。素晴らしい実績です。

意見交換の中では、「根本的には変わっていない」と認めています。Asprovaがスタートしたのが1994年だそうで、20数年たっても計画改善効果は10%のまま。なら、90%のケースは効果なし。ザックリですけど、27,000社(ケース)ではうまくいかなかった、、ということ?しかも、計画業務の軽減だけ?

誇大広告の実態がみえてきました。罪悪感はないんでしょうか。でも、Asprovaの対応は真摯的でしたからね~。そのようには感じられませんが、ねぇ~。

“度を越した誇大広告”は問題視されそうですが、まぁ、100歩譲りましょう。宣伝だから“いいかっ”。ただ、なりふり構わぬ宣伝文句に、何とはなしの“哀れさ”を感じてしまいます。

じゃ、問題はなんだ?

「生産スケジューラベンダーは、製造企業に正しい情報を発信していない」

ことです。導入できた企業よりできなかった企業数が圧倒的に多い。導入できなかった企業も、①資料検討の段階で判断した企業もあれば、②大がかりな導入プロジェクトを立ち上げて検討した企業、そして、③実際導入してみたがうまくいかなかった企業、④最初はうまくいったかにみえたが、維持・運用ができず、数年後にダメになった企業、、などなど、様々でしょう。①や②はいいとして、③や④は相当の労力・費用・時間、、がかかり、経営上大きな負担となります。

もちろん、正確な実態はわかりません。このようなことに関して、生産スケジューラベンダーが情報発信することはありませんので。但し、生産スケジューラの導入がうまくいかない、どうすればうまきいくか、といったことに関しては、生産スケジューラベンダーは頻繁にセミナーを開き、生産管理のコンサルタントはいろいろな改善策を提案し、努力している。それは認めます。

だったら、よくなっているのでしょうか。

Asprovaとのメールのやり取りは、そのあたりの実態を知るチャンスでもありました。ポイントにしたことは、Asprovaは、生産スケジューラの導入ができるかどうかの基準を一般の企業に分かるような形で提示しているのかどうか、です。その基準さえはっきりしているのであれば、仮に10%のケースでしか使えなくても、事前の検討段階で有効かどうかがわかります。多大なムダとなる前記の③や④を防ぐことができる。

Asprovaの説明の中に“生産スケジューラの導入ができるかどうかの基準”らしきものがあるのか、切り口を換え、いろいろ質問してみました。出てきません。AsprovaのWebsiteの隅々まで探してみました。見つかりません。

顧客が一般消費者なら、「景品表示法」にひっかかりそうです。法律は素人でよくわかりませんが、企業(法人)が顧客の場合はいいのかな。だとすれば、生産スケジューラを使う企業側で気をつけなきゃいけないんでしょうね。

今回は、生産スケジュールベンダーとして、AsprovaとFlexscheを取り上げましたが、日本には、他にも生産スケジューラベンダーはたくさんあります。きちんと数えたことはありませんが、30社、40社、、いやもっと多いかな、、。イプロスを覗いてみると、いっぱいあります。中には日本を代表する企業名もいくつかあります。

この生産スケジューラを販売している企業のほとんど、いや、あえて言えばすべての企業の宣伝は、AsprovaやFlexscheに劣らぬ「誇大広告」です。「誇大広告」の見本市よろしく、、。歪んでますね。健全じゃありません。

米国では、ここ20年で生産スケジュール専門ベンダーは姿を消しましたが、日本では逆に増えました。失われた30年と重なるんです。単なる偶然でしょうか。そうでもないような気がしてしょうがありません。

日本製造業の発展の阻害要因になっているのではないか、、。

工程の手空き時間とワーク(オーダ)の待ち時間の識別もできない。生産スケジューラが使える条件もわからない。そんな状態で生産スケジューラを開発し、販売する日本の生産スケジューラベンダー。その知的・技術的レベルの暗影から、早く抜け出さなければ、、。

DPM研究舎

“待ち時間”って、何が何を待つ時間? 複眼思考の勧め

前回はAsprovaとのメール交換の実録をお伝えしました。いかがでしたでしょうか。結構、正直ベースでお応え頂いたと思います。生産スケジューラベンダーの実態を垣間見ることができたのではないかな、と思います。

が、しかし、質問をさせていただいた側からすると、すれ違い、肩透かし、的外れ、、。フラストレーションがたまりました。これで、工場で生産管理を担当されている方々に正確な情報が伝わるのだろうか。生産スケジューラベンダーの宣伝文句とのギャップをどのように考えればいいのか。生産スケジューラベンダーが“誇大広告”を繰り返すのはなぜか、、。そもそも“誇大広告”と認識しているのだろうか、、。

そんな疑問に応えるために、Asprovaの回答をもう少し詳細に分析してみたいと思います。私の質問のポイントはいたって単純で、“待ち行列現象”による“待ち時間”をどのように認識し、処理しているか、です。

私の指摘を再掲します。

平均待ち時間=ρ/{μ・(1-ρ)}
ρは稼働率、μは単位時間での処理数(1/μは処理時間/個)
(投入時間間隔および処理時間/個は指数分布に従うとする)

稼働率が70%~80%付近から、平均待ち時間は急激に長くなる。処理時間/個が1時間で、90%の稼働率なら平均待ち時間は9時間、平均製造リードタイムは10時間となることを意味する。それにバラツキが加わるので、影響はさらに大きくなる。

もうひとつ、厄介なことは、多くの場合稼働率は70%より80%、80%より90%と高い方を狙うが、そうすると待ち時間が急激に長くなる不安定領域に入り、生産現場が混乱するきっかけとなる。生産性向上を狙い、稼働率を上げようとすると生産リードタイムが不安定になり、現場が混乱し、生産性が下がる。

これに対してのAsprovaの説明の要点をまとめてみます。

① 待ち時間については平均稼働率の差が待ち時間として出て来る。
② なのでネック工程を基準にバックワードでスケジュールするなどして待ち時間を削減するようにスケジュールする。
③ 待ち時間が発生する工程は全体のスループットを向上する要素にはならないのでスケジューラとしてはあまり着目していない。
④ 如何に生産効率を上げるかを重点に、ネック工程の効率化に着目してスケジュールする事が多い。待ち時間が発生する工程はスケジュールしないこともある。
⑤ スケジューラは作業指示を提示する事を目的としており、待ち時間があるような工程はネック工程からの手番をずらして作業指示を機械的に提示している例もある。
⑥ 「生産効率を上げる」ために「ネック工程の効率化に着目してスケジュール」し、「スケジューラで作業指示を提示する」。


私の指摘とAsprovaの応え、かみ合っていませんね。なぜなんでしょうか。それは、“待ち時間”の捉え方が違うからではないかと思います。私が指摘した“待ち時間”は工程がビジーであるとき、その前で処理の順番を待つワーク(オーダ、被処理物)の待ち時間です。Asprovaが説明する“待ち時間”は工程(作業者、機械、)が手空き状態でワークが流れてくるまで待つ“待ち時間”ではないか、と思います。

つまり、“ワークが待つ時間”と“工程が待つ時間”の違い。“ワークが待つ時間”が長くなると仕掛が増えてきます。“工程が待つ時間”が長くなると稼働率は低くなります。“ワークが待つ時間”が長くなると“工程が待つ時間”は短くなります。“工程が待つ時間”が長くなれば“ワークが待つ時間”は短くなります。

このような現象を説明しているのが「待ち行列理論」です。簡単に説明しておきましょう。簡単にするために、ひとつの工程とします。待ち行列現象による“1工程での平均待ち時間”は、近似式ですが、次のようになります。

1工程平均待ち時間=Tp∙{ρ/(1-ρ)}∙(Cin2+Cp2)/2 —- (式1)

Tp;平均工程処理時間
ρ;平均稼働率
Cin;投入時間間隔の変動係数 (変動係数=標準偏差/平均)
Cp;処理時間の変動係数

私が指摘する“待ち時間”は、上記式の“平均待ち時間”です。Asprovaの説明にある“待ち時間”は稼働率に関係してきます。それを“手空き時間”としますと、平均稼働率;ρは次のようになります。

ρ=(総稼働時間-手空き時間)/総稼働時間

(式1)で、ちょっと、確かめてみましょう。
(ア) 平均稼働率;ρが高くなると「平均待ち時間」は長くなる。
(イ) 投入時間間隔や処理時間のバラツキ(Cin、Cp)が大きくなると「平均待ち時間」は長くなる。
(ウ) CinとCpがゼロのとき(投入時間間隔や処理時間のバラツキがゼロ)のとき、「待ち時間」は稼働率に関係なくゼロ。

Cinをゼロにする方法の具体的一例は、予め生産品目を決めておく「見込生産」です。(ウ)の具体例は、標準時間の設定、平準化、サイクルタイムでの同期生産を行う「トヨタ生産方式」です。工程仕掛(WIP)を一定とする「CONWIP」は投入制限がかかり、稼働率の上限を抑えていると解釈できます。

その他、Asprovaの説明で特徴的な部分を抜き出してみます。

◇ 弊社のパッケージもまだまだ万能ではないので合う工場、合わない工場は存在する。一部の自動化でも効率化を実現できる工場などに導入している。
◇ なかなかスケジュールで算出した作業指示通りに作業させるのは難しい。
◇ 弊社は現実と理想の中間点でシステム化する事をお勧めしており100%を目指していない。従って、10%でも効果があればできると言っている面はある


「生産スケジューラが使えるのは限られた条件下だけである」と言っているわけです。宣伝文句の内容とは異なることを認めているんですね。

生産スケジューラは万能ではなく、“限定的な条件でしか使えない”ことを吐露しながらも“なんとかうまく使いこなせないか”という努力の跡は随所にみられます。一方で、生産スケジューラの進歩はここ数十年、“ほとんどない”ことも認めています。根本的な改善のない生産スケジューラを何とか使いこなそうとする涙ぐましい努力は、日本の文化的一面かもしれません。

問題構造を理解しなければなりません。生産スケジューラは生産効率が最も高くなる最適なスケジュールを生成することだ、と。そのために、生産能力を決めるネック工程に着目し、稼働率100%を狙う。稼働率100%とは“手空き時間”がゼロ。なんの代償もなく“手空き時間”ゼロを達成できる条件は、投入時間間隔と処理時間(作業時間)のバラツキがゼロのときだけ。もちろん、多少のバラツキは許容されますが。

バラツキが大きくなるとどんな代償を払わなければならないか。それは、ワーク(オーダ、被加工物)の待ち時間です。つまり、工程の“手空き時間”とワークの“待ち時間”は、投入時間間隔や処理時間にバラツキがあれば必ず発生します。工程の“手空き時間”は稼働率に影響し、ワークの“待ち時間”は処理時間と加算され生産リードタイムを長くします。どちらも、生産ラインの特性を決める極めて重要な要素です。

この現象は、物理現象です。工程ごとに、どの工程でも、程度の差はあれ、起きます。

Asprovaは工程の“手空き時間”しか、認識していないようです。ワークの“待ち時間”について質問しても、返ってくるのは、工程の“手空き時間”の説明だけ。これは、Asprovaに限ったことではありません。Flexscheも似たり寄ったり。FlexscheのWebsiteのQ&Aにこんな説明があります。

Q&A;「待ち行列現象」による待ち時間を分析できますか?
https://www.flexsche.com/qa/product_service.html#a35 
・・・・・
そもそも製造業においては上流工程も制御(あるいは統制)対象であり、工程間に発生する待ち時間は、銀行の窓口等に発生する行列とは性質が異なります。
・・・・・


銀行の窓口等で発生する行列と生産ラインの各工程で発生する仕掛の行列は、どちらも「待ち行列理論」で同じように記述できることをご存知ないようですね。生産ラインの特性を「待ち行列理論」で解析した書がありますので紹介しておきます。
Stochastic Models of Manufacturing Systems
著者 John A.Buzacott (York University)、
J.George Shanthikumar (University of California, Berkeley)

1990年代、米国でも数多の生産スケジューラベンダーがありましたが、そのパッケージはMRPの下位モジュールとしてしか使えないと判断され、ERPベンダー等に吸収され、2000年代に入ると次々と姿を消していきました。

「生産スケジューラは万能ではなく、“限定的な条件でしか使えない”」 と吐露した Asprova。米国で起きたことは、いずれは日本でも起きるのではないか、とは思いませんか。もしかすると、「いやそんなことはない。起死回生の奇策があるはずだ」と高をくくっているのでしょうか。

今、生産スケジューラベンダーがやらなければならないことは、美辞麗句の誇大宣伝をすることではなく、生産効率だけしか見ない、つまり、“工程の手空き時間”しか視ない“独眼思考”から、“工程の手空き時間”と“ワークの待ち時間”を同時に視る“複眼思考”に切り替えることです。そうすれば、“限定的な条件でしか使えない”というAsprovaが吐露する実態は、必然的に起きる物理現象だ、と気が付くはずです。

AsprovaもFlexshceも、美辞麗句の夢の中でご就寝中。めざましの音は聞こえないようです。

早く起きないと “DX号” に乗り遅れますよ~・・・

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Asprovaの本音解説;見えてきた生産スケジューラの素顔

ここ数カ月、生産スケジューラについて考えています。先ず初めに、Asprovaの会長さんが書いた「Asprova解体新書」をまな板に乗せ、好奇心、疑い、批判、期待、、など、入り混じった思いで斬ってみました。生産スケジューラに特有な誇大広告的説明に“うんざり”しながらも、厚化粧の下にある素肌もみえてきました。Asprovaだけか、、。日本には生産スケジューラベンダは他にもたくさんあります。Flexscheも調べてみました。美辞麗句の宣伝文句満載というあたりはAsprovaとさほど変わりはありません。

実は、今回、生産スケジューラについて調べようと思った直接の切っ掛けは、1年ほど前の2019年11月中、Asprovaより販売代理店募集の案内が届いたことです。日頃、疑問に思っていることを聞いてみるチャンスだと思い、いろいろと質問してみました。メールのやり取りで(11月中旬~12月末)、結構、正直ベースで応えていただきましたので、“すっぴん”の生産スケジューラの姿をみれるかもしれません。生産スケジューラに興味のお持ちの方には、参考になるのではないかと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
黒字;私(佐々木)→Asprova(上村義孝コンサルタント部 部長)、茶色;Asprova→私
Asprova側CC受信者;高橋邦芳会長、田中智弘社長、藤井賢一郎副社長

[Kenichiro Fujii様、2019/11/17]

ご案内、ありがとうございます。資料、拝読させていただきました。質問がございます。ご教示頂ければ幸いです。

<質問>スケジューリングのとき、生産ラインや工程(機械、設備、人)の稼働率が所要時間に及ぼす影響をどのように考慮しているのでしょうか。

[佐々木様へ、2019/11/17]

いつもお世話になっております。アスプローバ社のコンサルタントの上村(カミムラ)と申します。
ご連絡ありがとうございます。下記のご質問にご回答させて頂きます。

(回答)稼働率が何によって影響するかによって設定方法が異なりますが下記の設定方法が可能です。
1. チョコ停など設備の稼働率に影響する場合は、各機械、設備にそれぞれ製造効率(稼働率)を設定できます。
2. 新規品目や特定の難易度の高いオーダによって稼働率に影響する場合は、品目やオーダに製造効率を設定できます。

・・・・・・・・(中略)・・・・・・・

10. 材料の欠品でライン停止やチョコ停が発生し稼働率に影響する場合、材料があるオーダを優先してスケジュールする事でライン停止やチョコ停を削減して稼働率の差異を少なくする事が可能です。

[上村 義孝様、2019/11/18]

丁寧にお答えいただきましてありがとうございます。様々な変動要因を取り入れてスケジューリングできることがわかりました。

そのような変動(バラツキ)がスケジュールにどのように反映されるのか、について知りたいと思っております。ポイントを共有したいと思いますので、次のような事例で質問させてください。

生産ラインの途中のひとつの工程に注目します。その工程の正味平均加工時間は30分で標準偏差5分のバラツキがあります。稼働時間は8時間(480分)/日で、工程の加工能力は16個/日です。ある週(5日間)の生産個数は50個(平均10個/日、稼働率62.5%)、別の週は75個の生産が予定されています(稼働率93.8%)。前工程から流れてくる時間間隔の平均はそれぞれ48分(480÷10)、32分(480÷15)ですが、バラツキがありその変動係数はどちらも0.3とします。

このとき、どのようなスケジュールになるか、ご教示頂けると助かります。不足の条件等ありましたら、追加してください。

[佐々木様へ、2019/11/18]

下記、ご回答致します。
さて、下記の条件であれば週の稼働率が今週が62.5%と翌週が93.8%とあらかじめわかっているのであれば週単位の設備の稼働率をそれぞれ62.5%と93.8%と設定する事で今週50個と翌週75個のスケジュールを立てる事ができます。添付のイメージをご確認ください。PSI表のProductAの生産を見ると今週1日10個、翌週1日15個の生産になっている事が確認できます。また、前工程と後工程の在庫状況をPSIや在庫グラフで確認できます。但し、一般的には各週の稼働率をあらかじめわからないと思いますのでAsprovaでは日産何個では無く、品目毎の1個当たりの製造時間を設定し品目毎の生産時間のバラツキや受注の内容による段取替えの回数や生産順番によるネック工程の待ち時間などを含めてスケジュールする事で実際に1日50個生産できるのか、75個生産できるのかを各設備に対して秒単位に山崩しして割り付ける事で算出します。あと、日産の生産数はスケジュールロジックによっても異なります。例えば、同一品目をまとめて生産すれば段取が少なくなり日産の生産数は多くなりますが、在庫数も増える事となります。また、納期通りにまとめずに生産すれば在庫は少なくなりますが段取りが増え日産の生産数は減少する事になるなど計画パラメータの調整によっても日産の生産数に影響します。従って、Asprovaは納期遅れが無いように残業を入力するなど、いろいと条件を変えながらシミュレーションできるソフトウェアとなります。


[上村 義孝様、2019/11/19]

ご説明ありがとうございます。
「Asprovaでは日産何個では無く、品目毎の1個当たりの製造時間を設定し品目毎の生産時間のバラツキ、、、、(中略)、、、、各設備に対して秒単位に山崩しして割り付ける事で算出します。」
とのことですので、次のように質問をさせてください。

~~~~~~~~~~~~~
注文は1個ずつランダムな時間間隔で入ります。製造工程はひとつとします。平均製造時間は30分/個、バラツキは標準偏差;5分。工程正味稼働時間は8時間(480分)/日。工程前の仕掛はなし。段取り時間、処理順の制約もなし。

1、このとき、受注(=工程への投入)~完成までの時間はどうなりますか。(秒単位で計算されているようですので、秒単位で出てくるのでしょうか)

2、平均10個/日の注文がある日と15個/日の注文がある日で、受注~完成までの時間は同じですか? 変わりますか?
~~~~~~~~~~~~~

[佐々木様へ、2019/11/19]

さて、下記の件ですが、Asprovaは注文を登録してからスケジュールする事となります。従って、製造時間に変わりが無ければ受注してから完成までの時間は同じになります。Asprovaでは平均製造時間が30分/個であればどの注文も30分で計算されます。また、バラツキの標準偏差は、1カ月を見れば平均値に落ち着くのであれば、Asprovaは製造時間×平均稼働率で計算します。また、バラツキにより出荷が滞る事を考える場合は、標準偏差分を安全在庫として登録する事でバラツキによる生産数分の差を埋める事となります。あと、Asprvoaは需要予測のソフトでは無いので受注オーダを生成する事はありません。従って、例えば、EDIでランダムに入って来る注文に対してすぐに出荷できるようにスケジュールする場合は、一般的には営業のフォーキャストを登録して、それを元に見込みでスケジュールし、実際の受注を引き当てて行く事となります。


[上村 義孝様、2019/11/19]

不躾な質問をして失礼いたしました。最近のスケジューラの機能を知りたかったもんですから、、、。気が付いた点、コメントさせて下さい。

処理時間(加工、組み立て、調整、、)や投入時間間隔にバラツキがあるとき、稼働率によって、待ち時間の長さが大きく影響を受けます。工程がビジーで被処理物が待っている時間を待ち時間、工程が被処理物待っている時間は手空き時間となります。待ち時間がどのくらいになるかは、待ち行列理論に詳しく書いてあります。よく知られている式は、

待ち時間=ρ/{μ(1-ρ)}
ρは稼働率、μはサービス率(単位時間の処理数)

グラフを描いてみればわかりますが、稼働率が70%~80%付近から、待ち時間は急激に長くなります。μ=1、ρ=0.9で待ち時間は9となります。処理時間が1時間で、90%の稼働率なら待ち時間が9時間で、製造時間は10時間となることを意味します。10時間は平均値で、それにバラツキが加わりますので、影響はさらに大きくなると思います。

もうひとつ、厄介なことは、多くの場合稼働率は70%より80%、80%より90%と高い方を狙いますが、そうすると待ち時間が急激に長くなる不安定領域に入り、生産現場が混乱するきっかけとなることです。生産性向上を狙い、稼働率を上げようとすると生産リードタイムが不安定になり、現場が混乱し、生産性を下げる。

生産スケジューラには、この“落とし穴”に入るのを防ぐセーフティガードが付いていなければならないと思います。“落とし穴”にはまっていることにも気づかず、奮闘している現場をよく目にします。

[佐々木様へ、2019/11/19]

そうですね。スケジューラ的には待ち時間については平均稼働率の差が待ち時間として出て来るのでネック工程を基準にバックワードでスケジュールするなどして待ち時間を削減するようなスケジュールを作成します。また、TOC的な考え方からすると待ち時間が発生する工程は全体のスループットを向上する要素にはならないのでスケジューラとしてはあまり着目していないかもしれません。スケジューラ的には如何に月産の生産効率を上げるかと言う観点てせ開発している部分がありネック工程の効率化に着目してスケジュールする事が多く、待ち時間が発生する工程はスケジュールしないケースもあります。弊社のスケジューラは作業指示を提示する事を目的としておりまして、待ち時間があるような工程はネック工程からの手番ずらして作業指示を機械的に提示している例もあります。


[上村 義孝様、2019/11/21]

ご説明のポイントは次のようなことでしょうか。
「生産効率を上げる」ために
「ネック工程の効率化に着目してスケジュール」し、
「スケジューラで作業指示を提示する」

TOCのDBRの考え方を利用しているようですが、これはあまりうまくいかなかったんです。うまくいかない理由をいくつか挙げますと、
①ボトルネックと非ボトルネック工程の識別が曖昧
②ラインバランスを上げようとすると、稼働率の高い工程(ボトルネック候補の工程)が複数個所出てくる。バラツキがあると(多くの場合、多かれ少なかれ、バラツキはあります)、ボトルネックが動き回るようになる。

・・・・・・・(中略)・・・・・・・

⑧ボトルネックや組み立て工程でのスケジューリングを止め、出荷スケジュールだけにしたS-DBR(Simplified-DBR)を発表。現在はほとんどがS-DBR。
⑨S-DBRは「計画負荷」という概念で時間設定をしますが、かなり大雑把で、簡単な生産ラインにしか適用できない。

ざっと、説明しますと、上記のようなことなんですが、最も致命的な欠陥は、
「DBRはバラツキを認めているにもかかわらず、バラツキを許容した時の、稼働率と待ち時間の関係を見落としている」ことです。
「生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まる。だから、ボトルネック工程の能力を“100%”絞り出せ」
これが、TOC(DBR)の“教え”なんですが、稼働率が100%に近づくと待ち時間は指数関数的に長くなり、スケジューリングで最も重要な“実行可能性”が保てなくなります(作業指示機能が低下する)。

御社のご説明をお聞きしますと、同じような見落としがあるように感じますが、いかがでしょうか。

[佐々木様へ、2019/11/21]

いろいろとご指摘ありがとうございます。以下、ご回答いたします。

ご説明のポイントは次のようなことでしょうか。
回答)はい、下記の通りです。
「生産効率を上げる」ために
「ネック工程の効率化に着目してスケジュール」し、
「スケジューラで作業指示を提示する」

(回答)下記のご指摘ですがその通りだと思います。弊社のパッケージもまだまだ万能ではないので合う工場、合わない工場は存在すると考えています。従って、工場によってはネック工程を特定できる工場、ネック工程だけで計画できる工場、以下のような工場でも100点の計画では無いけれども一部の自動化でも効率化を実現できる工場などもあり、現状では弊社のパッケージでも対応できる工場に導入している状況です。
   また、ドラムバッファでは無いですが、前工程と後工程の最低、最大の待ち時間を設定し、一定時間以上空かないようにする事で対応する工場もあります。従って、工場毎に少しでも自動化して効率かできる部分が無いかを日々模索している状況です。また、ロジックを複雑にすればするほどパフォーマンスが悪くなる傾向があり、人が判断すれば早い部分とコンビュータで計算する方が早い部分などをうまく組み合わせてトータル的に効率化できたらと考えております。今後も少しづつ機能アップをしながら対応できる工場を増やしていきたいと考えておりますし、工場の改善に終わりが無いように弊社のパッケージも未熟な点は多々ありますが日々改善をしていきたい考えています。


[上村 義孝様、2019/12/08]

別件で、ちょっと、間が空いてしまいました。ポイントは、「スケジューラで作業指示を提示する」ことにあるように思います。

生産工程では、
「処理時間にバラツキがある時、作業時刻は確率分布する」
「従って、作業時刻を固定値で決めることはできない」
「稼働率により待ち時間は大きく影響を受け、作業時刻の確率分布も大きく影響を受ける」
という特性があります。これは物理現象ですので、どのような生産工程でもみられます。

このような現象を抑制するためにはバラツキを減らせばいいわけですが、大部分のバラツキの原因は生産工程の外部にありますので、そう簡単にバラツキはなくなりません。

「スケジューラで作業指示を提示する」ことが可能な条件は、“バラツキがある範囲以下”であることが、“絶対条件“となりますが、スケジューラーの説明に、そのような条件はどこにも見当たりません。

「生産計画の変更に柔軟に対応でき」、、等の説明が散見されますが、誇大広告になっていませんか。

スケジューラーに関しては、ここ数十年、まったく進歩していませんね。AI、IoT、、等、情報技術が進歩しているのに、相も変わらず「スケジューラで作業指示を提示する」という、非現実的な前提条件に固執しているのは、なぜなんでしょうか?

根本的に考え方を変える時期に来ているんじゃないでしょうか。

[佐々木様へ、2019/12/09]

そうですね。その意味では根本的には変わっていないですね。なかなかスケジュールで算出した作業指示通りに作業させるのは難しい状況です。現状は、まだまだスケジュール条件やスピード面で解決で出来ていない部分も多く根本的な改善には至っていない状況です。まずはバラツキの前に最初の段階で実際の作業に近くなる必要があり最適化と言う点での改善を図っています。遺伝子アルゴリズムなどで計画パラメータを調整するなどの取り組みは行っていますが、まだ、実用には至っていません。また、バラツキは外乱要因だけでなく人にも影響する部分がまだまだ多く、スケジュールで対応せず、逆に遅れている事を知らせて戻すような事をしているのが現状です。もし、戻せない時に再スケジュールするなどバッチ的な対応となっています。
AIについては、まだまだ、私どもではスケジューラに適用するのは難しく、現状はスケジューラのシミュレーション情報を元にAGVのルートを算出する部分に深層強化学習の適用を高専の教授と進めている状況です。


[上村 義孝様、2019/12/10]

「スケジューラーは、ここ数十年、まったく進歩していない」理由がこの辺りにあるんじゃあないでしょうか。いろいろな改善をこれまでもやってこられたと思いますが、「根本的には変わっていない」ということですね。将来、変わる(進歩する)可能性はありますか?つまり、いま手掛けている課題(スケジュール条件やスピード面で解決)が解決出来たら、「根本的に異なる(進歩した)スケジューラー」はできますか?

バラツキがない条件でも工程数が多くなると最適解が求められない(NP困難)ことはよく知られた話です。遺伝子アルゴリズムなどの近似解手法を使って、実用的に使えそうな“まし”な答えが得られた、という話は聞いたことありますが、NP困難が解決されたという話は聞いたとこありません。そんな話があるのでしたら、ご教示頂ければ幸いです。

「最適化」というのもくせ者。“単位時間当たりの生産数量を最大にする”、“生産リードタイムを最短にする”、“優先通りにつくる”、、、など、最適条件がいろいろあって、工場、製品、時と場合、、等で、異なります。どうやって、「最適化」を定義するんでしょうか?

「バラツキは外乱要因だけでなく人にも影響する部分がまだまだ多く、スケジュールで対応せず、逆に遅れている事を知らせて戻すような事をしているのが現状です。もし、戻せない時に再スケジュールするなどバッチ的な対応となっています。」とのことですが、バラツキがある場合はスケジュールでの対応ができない、とおっしゃっているのでしょうか?

[佐々木様へ、2019 9/12/10]

さて、最適化については絶対的な最適化は無いので段取が少なくなるなどある程度さじ加減では無いですが、現時点では重みを付けて設定する事になると思います。この辺も研究中です。少しでも現在よりも効率化が良い計画が作成できないかと言う事で100点を目指せているわけではな無いと思います。
あと、バラツキについては、作業員が関わるケースや母数が少ないと必ずしも正規分布しないケースもありスケジューラで予め対応するのは難しいかもしれません。現時点であまりご要望が無い事もあり深く探求していないのが現状です。


[上村 義孝様、2019/12/30]

いろいろと教えていただきまして、ありがとうございます。Webをググっていたら、下記のような説明がありました。よくみたら、御社のWebsiteのようです。

https://lib.asprova.com/ja/library/profits/350-mto-mts-combination.html
受注生産と見込生産の混合生産

Q: 工場の中で、受注生産品と見込生産品が混在して流れていますが、対応できますか?
A: 「受注・生産・購買のひも付け図」をご覧ください(前頁)。この中では、受注生産品をスケジュールすることもできますし、見込み生産品をスケジュールすることもできます。生産計画スケジューラは、受注生産品と見込生産品の混合状態をスケジュールすることもできます。以下のようなケースでも問題なく対処できます。
・ 見込み生産の中に、試作品が混合で生産される
・ 受注生産品に長納期購買品が使われる
・ 受注生産品に見込み生産の部品が使われる
・ 受注生産品と見込生産品に同じ部品が使われる
・見込み生産品が受注生産になった
・ 受注生産品が見込生産品になった
見込み生産と受注生産が混在した工場が多いのが実状です。生産計画スケジューラは、受注オーダ、製造オーダ、購買オーダをひも付けて、全体をスケジュールすることにより、受注生産、見込み生産などすべての生産形態を包含してスケジュールできます。
受注・見込みの混合生産を実現する上で、重要なことは、スケジュールが確定する順番は、受注、製造、購買の順とは限らないことです。購買が確定して、それが製造と出荷に影響することもあります。製造の一部が確定して、それが購買と出荷に影響を与えることもあります。実際、生産計画スケジューラは「受注・生産・購買のひも付け図」の中の受注、製造、購買、在庫がどのような順番で確定しても対応できます。この仕組みにより、生産計画スケジューラは、あらゆる生産形態、生産状況に適応できます


「生産計画スケジューラは、あらゆる生産形態、生産状況に適応できます」
とあるんですが、これまでの上村様の説明から判断しますと、“ほんとかな?”って、疑ってしまうんですが、、。

一般の商品ですと、“アー使っちゃいけない”、“こー使ってはダメ”という注意書きがありますが、生産スケジューラはできないことまで“何でもできます”と、、。

[佐々木様へ、2019/12/30]

いろいろとご指摘ありがとうございます。
そうですね、できると言うと100%をイメージさせてしまうかも知れませんね。弊社は現実と理想の中間点でシステム化する事をお勧めしており100%を目指していないところはあるかもしれません。どんな業種でも生産計画は立ていますが完璧な計画は立てられていないので、少しでも計画業務を軽減する事を目指しています。従って、10%でも効果があればできると言っている面はあると思います。その意味では、導入前にプロトタイプを作成し、どの程度可能かをお客様に確認頂いてご購入を判断頂けるように努めています。

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Flexscheの解説;チコちゃんの反応は?

このページのpdfはこちらです。

「Asprova解体新書」をきっかけに、生産スケジューラの機能などについて調べてきました。ザックリと言えば、「固定時間しか扱えない生産スケジューラでは、バラツキを避けられない現実の環境で、実行可能なスケジュールを生成することはほぼ不可能である」、となります。もちろん限定的な条件では使えるケースもあると思いますが、、。

Asprovaだけか? という疑問が湧いてきます。「生産スケジューラー 製品ランキング」をみますと、生産スケジューラ・ヴェンダーって、いっぱいあるんですね。他の生産スケジューラって、どうなってんだろう、、。
生産スケジューラのWebsiteをググっていると
「多様な製造業のニーズに適応するための柔軟性」
「時間軸を重視した工場運営」
「鍵は生産リードタイム短縮」
なんていう文面でひっかかりました。Flexscheという会社です。私が気にしている生産スケジュールの柔軟性とは、主に、時間軸上の柔軟性ですから、もしかしたら、秘策があるのでは、、。ということで、FlexscheのWebsiteを覗いてみることに、、。「解説記事」にいろいろ書いてありそうです。

「Asprova解体新書」で得られた知見をベースに、キーワードを挙げると、生産リードタイム、作業時間、待ち時間、、、そして変動、ゆらぎ、バラツキ。マスタデータのフォーマットも重要ですね。

(1)生産リードタイムと待ち時間

解説記事 生産スケジューラ導入の秘訣
第2回:生産リードタイムを短縮せよ(Website リンク)
に次のような説明があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

生産リードタイムには、正味の作業時間と待ち時間とが含まれます。このうち、通常は、待ち時間の方が圧倒的に長く、また、短縮もしやすいものです。待ち時間は様々な原因によって発生します。それらを明らかにして、影響や効果の大きいものから改善していくべきです。

なお、どこでどのような待ちが発生しているかも、生産スケジューラであぶり出すことができます。 さらに、どのような改善を行えばどのような効果が得られるかも、生産スケジューラを活用すれば定量的にシミュレーションすることができます。


「生産リードタイムは作業時間と待ち時間が含まれ、待ち時間の方が圧倒的に長い」
同感ですね。そして、
「どこでどのような待ちが発生しているか、生産スケジューラであぶり出すことができ、改善効果も定量的にシミュレーションできる」
と。待ち時間を定量的にシミュレーションできるとありますが、、、本当なんでしょうか?
メールしてみました。

「生産スケジューラで、待ち行列現象による待ち時間を分析できますか?」

こんな返事が来ました。

「質問内容の抽象度が高いため、メールにて弊社見解をお伝えすることは難しいと考えております。」

字面はともかく、背後の意味は「できません」。って、すぐわかりますよね。苦し紛れの典型みたいな回答でした。

(2)変動、ゆらぎ、バラツキ

待ち時間の発生に関係する要因として、バラツキがあります。変動が大きいと、特に稼働率が高い領域では、待ち時間は急激に長くなります。サイト内の検索機能がありましたので、変動、ゆらぎ、バラツキなどをキーワードにして、検索してみました

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える(Websiteリンク)
に次のような説明があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

現実の世界ではさまざまな変動要因や「ゆらぎ」が不可避なものとして存在するので、生産スケジューラがはじき出した「理論上の納期」をそのまま顧客に伝えるのではなく、安全のためにバッファ時間を加算して回答しましょう。

突発的に発生する変動要因には以下のようなものがあります。発生時に速やかに計画を更新するとともに、「ありうべきこと」としてあらかじめある程度計画に余裕を持たせておくことも必要です。

 機械の故障
 作業員の欠勤
 緊急の飛び込み受注
 資材入荷の遅れ
 外注先からの納品の遅れ

一方、確率的に常に発生するゆらぎの要因には以下のようなものがあります。計画段階で時間的なバッファをある程度持たせることによって、これらを織り込んでおく必要があります。

 気温や湿度による作業時間の変化
 調達した原料の品質のばらつき
 不良品の発生
 人手による不定な作業時間


変動、ゆらぎ、バラツキなどを不可避なものと捉えていることには同意します。主な対応策はバッファー時間、余裕時間を入れること、という説明です。

しかし、やっぱり、待ち行列現象による待ち時間はどこにも見当たりません。待ち行列現象による待ち時間って、そこに挙げてある時間変動よりはるかに大きいんですがねぇ~。

(3)どのようなデータを扱うことができるか

マスタデータのフォーマットをみてみましょう。時間値は、他の生産スケジューラと同じで、固定値です。確率変数や確率分布で入れられるようにはなっていません。だとすれば、待ち行列現象による待ち時間は計算できません。

(4)「待ち時間」に関する記述

サイト内の検索機能で、すべての「待ち時間」を検索して、待ち行列現象による待ち時間の説明があるかどうか、調べてみました。残念ながら、そのような説明は見つかりません。

[結論]

Flexscheは、オーダ(ワーク)投入時間間隔や作業時間(処理時間)の変動(ゆらぎ、バラツキ)がある環境で、実行可能な作業開始・終了時刻を指定するスケジュールの生成は、ほぼ、不可能である。

第3回:生産スケジューラの活用方法のバリエーション(Websiteリンク) に活用方法が紹介されています
(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)
活用方法1 シミュレータとして
活用方法2 スケジューラとして
  活用方法2-1 中央集権型
  活用方法2-2 分権型


実行可能なスケジュールの生成ができないとなれば、このような活用方法は、“絵にかいた餅”、、じゃないでしょうか。他の使い方は、、あるかもしれませんが、、。

(5)チコちゃんに叱られないようにしましょう!

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える(Websiteリンク)
に次の記述があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

1990年代には米国でも数多の生産スケジューラのパッケージソフトウェアが販売されていましたが、ほとんどはERPヴェンダーに買収されてしまい、MRPの下位モジュールと位置付けられました。そのため単体製品としての生産スケジューラはあまり出回っていないようです。

一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無かったため、日本の生産スケジューラは独自の進化を続けており、機能的には世界でもトップレベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え続けているからでしょう。


米国で生産スケジューラが出回っていない、というのは同感です。2000年中~後半にかけて、ほとんどなくなったのではないでしょうか。なぜか? 「Asprova解体新書」にその手掛かりが書いてあります。

米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。(13ページ)

背景を簡単にまとめますと、1990年、米国Northwestern UniversityでMaster of Management in Manufacturing programが始まりました。教科書として用いられたのが、Factory Physics; Hopp、Spearman著、Waveland Press発行。

Factory Physicsでは書名が示すように、生産ラインのメカニズムを物理的・工学的に解析、分析しています。その中で、変動、ゆらぎ、バラツキがある一般的な生産環境では、作業開始・終了時刻を指定する実行可能な生産スケジュールの生成は不可能である、と説明しています。この考え方が定着してきて、生産スケジューラ・ヴェンダーは撤退していったとみるのが妥当だろうと思います。

それも知らずに「世界のトップレベルにある」とは、、。こんなふうに書き換えればいいんじゃないでしょうか。

;一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無 を知らなかったため、日本の生産スケジューラは独自の進化 退化を続けており、機能的には世界でもトップレベル 最低レベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え レベルを劣化させ続けているから ことでしょう。;



チコちゃんに叱られないようにしましょう!

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株式会社フレクシェ 代表取締役 浦野 幹夫様より、本Blog掲載に際して、以下のメールをいただきました。Web会議の要望がありましたが、「会話の内容を公にしない」という条件付きでしたので、それには同意しませんでした。2番目の要望は、引用元全文(メールも含めて)を示せ、とのことでしたので、こちらの要望に応じることにしました。

以下、メールのコピー
===========
株式会社フレクシェの浦野と申します。
弊社の望月とのやりとりを引き継がせていただきます。

貴殿のブログの草稿を拝見しました。

当方からはWeb会議であれば応じさせていただく旨をお伝えしたにもかかわらず、その事実を伏せた上、文面を部分的に引用して「苦し紛れの典型みたいな回答でした」と言われるのは私としては甚だ不本意です。

貴殿の質問に回答するにはそれなりの工数・コストを要します。存じ上げもせず自己紹介すら無い方からの不躾な質問に、手間をかけて回答文面を作文する必要はないと判断しましたが、短時間のWeb会議であれば時間を割くことには吝かではありません。知らない方から唐突に攻められる理由が分からず当惑しているのですが、それを明らかにするためにも、ぜひともWeb会議でお話をさせていただく存じます。

それでもなお貴殿がWeb会議を避け、ブログ掲載だけを強行されるというのであれば、やむをえません。ただし「恣意的な抜粋」ではなく(当メールも含めて)文面全体を漏れなく改変なく引用してください。「恣意的な抜粋」をされるのであれば、しかるべき対応を検討せざるをえません。

生産スケジューリングに関して貴殿個人の意見・評論を表明することはもちろん自由ですし、生産スケジューリングの議論の活性化につながるのであれば好ましいことですが、そのために弊社を一方的に踏み台にして巻き込まないでいただきたいです。

よろしくお願いします。
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以下は、引用元全文のコピーです。引用部分は赤字で示しております。
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第2回:生産リードタイムを短縮せよ
2011.11.30

キーワードは「多品種少量・短寿命・短納期」

造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
かつて日本が貧しかった頃は、欲しい物は皆同じでした。たとえば「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」が「三種の神器」と呼ばれました。その後、高度成長期に入ると、今度は「カラーテレビ・クーラー・自動車」が「3C」または「新・三種の神器」と呼ばれるようになりました。
その後も、色々な「三種の神器」が提案されたのですが、これらの名称はほとんど浸透しませんでした。その理由は、名称が定着する前に商品自体が普及してしまったからだろうと思います。例えば「デジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型テレビ」が「デジタル三種の神器」と呼ばれたそうですし、2003年にも小泉首相が「食器洗い乾燥機・薄型テレビ・カメラ付携帯電話」を「新三種の神器」と命名したそうです。「カメラ付携帯電話」とは、今にして思えば「普通のケータイ」のことです。「神器」というほどの希少性はもはやありません。今の神器は「3Dテレビ・乾燥機付き洗濯機・スマートフォン」というところでしょうか。ただしこれらも数年のうちに一般家庭に普及することでしょう。
市場で認識されてから普及するまでの期間がこれほどまでに短くなると、「神器」も大変です。あっという間に世代交代を余儀なくされます。
日本の製造業が努力を続けて品質を向上させ、輸出を拡大した結果、皮肉なことに円高が進み、現在では安価な輸入品があふれるようになりました。それに対抗するために日本製品の価格も下がり、さらに少子化も加わって、日本は深刻なデフレに長く苦しんでします。価格競争を続けるのは苦しいので、付加価値で差をつけようと、各社が激しい製品開発競争を繰り広げています。そのスピードは非常に速く、正に日進月歩です。
その結果、長期にわたる大ヒット商品は影を潜め、多様な商品が登場しては消えていくようになりました。つまり「多品種少量」かつ「短寿命」です。短寿命となると、販売店は必然的に「売れ筋の商品を早く持ってこい」と要求します。つまり「短納期」です。
こうして、多くの製造業が「多品種少量・短寿命・短納期」への対応を迫られるようになりました。

「製造業のジレンマ」

この「多品種少量・短寿命・短納期」という要求は、実はかなりの難題です。
まず「多品種少量」、すなわち、多くの種類の製品を少しずつ生産すると、段取り替えが増え、生産性が低下します。また他の製品が生産されている間、待たされることになります。さらに、どの製品の生産を優先するかの判断が難しくなります。その結果、通常は、生産リードタイムが長くなります。
でありながら「短納期」です。もしも納入に許されるリードタイムが生産リードタイムよりも短いのなら、注文を受けてから作り始めたのでは納期に間に合いませんから、あらかじめ作りだめしておくしかありません。生産リードタイムが長くなるほど、その間の機会損失を減らすためには多くの在庫を確保しておくことが必要になります。たとえば、生産リードタイムが1年で要求が即納の場合は、1年分の需要を予測し、その分の在庫を抱えておくことになります。生産リードタイムが1カ月なら1カ月分、1日なら1日分で済みます。さらに「多品種」の場合には、在庫を確保しておくべき品種数も多くなります。在庫切れを防ぐための安全在庫を一品毎に確保しようとすると、少品種多量生産に比べてトータルの在庫量も多くなってしまいます。
これに「短寿命」が追い打ちをかけます。貯め込んでおいた在庫品も、そのうち消費者の関心を失い、売れなくなってしまうのです。いわゆる「不良在庫」です。特に完成品の不良在庫は最悪の無駄です。材料を使って人手と時間をかけて生産して、さらに場所を取って保管して、その挙句に捨ててしまうのですから。
つまり、「在庫を持たなければ納期遅れor機会損失」「在庫を持てば不良在庫」というわけです。今、多くの製造業が、このジレンマに苦しんでいるはずです。
ではどうすればよいのでしょうか?

鍵は「生産リードタイム短縮」

この難題を解決するための鍵は、「なんとかして生産リードタイムを短縮すること」です。
生産リードタイムを短縮して、要求リードタイムよりも短くできれば、受注してから生産すればよく、在庫が不要になります。こうなれば理想的ですが、そこまで短縮できなくても、生産リードタイムが短いほど機会損失を防ぐための在庫量が少なくて済みます。また生産リードタイムを短縮することで、半製品や共通部品を在庫として蓄えておき、受注してから生産に着手しても間に合うようになれば、完成品在庫を保持するのに比べて不良在庫化リスクを減らすことができます。また生産リードタイムが短いほど、需要予測の期間が短くなり、したがって予測の精度も上がります。
このように、生産リードタイムを短縮すればするほど、在庫を減らすことができ、キャッシュフローを改善できるだけではなく、不良在庫の危険も小さくなります。

生産リードタイムを短縮するには

ではどうすれば生産リードタイムを短縮できるのでしょうか。

生産リードタイムには、正味の作業時間と待ち時間とが含まれます。このうち、通常は、待ち時間の方が圧倒的に長く、また、短縮もしやすいものです。待ち時間は様々な原因によって発生します。それらを明らかにして、影響や効果の大きいものから改善していくべきです。
なお、どこでどのような待ちが発生しているかも、生産スケジューラであぶり出すことができます。 さらに、どのような改善を行えばどのような効果が得られるかも、生産スケジューラを活用すれば定量的にシミュレーションすることができます。


生産スケジューラを上手に活用することで、短期的なものから長期的なものまで、様々な意思決定のための判断材料が得られます。

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第2回:生産スケジューリングで製造業を変える

生産スケジューリングとは何か

前回は製造現場の計画立案全般についてお話ししましたが、今回は生産スケジューリングおよび生産スケジューラについて詳しくご紹介します。
前回の記事で紹介したように、多くの計画手法では概(おおむ)ね「今日はこれとこれをやって、明日はあれとあれをやる」というように、ある一定の時間枠(1週間、1日、1時間などのタイムバケット)の中で行うべき仕事を積み上げていきます(負荷山積み計画)。それに対して生産スケジューリングは「何時何分から何時何分の間にこれをやって、その後何時何分まであれをやる」というように、1つのリソース(機械や人など)で同時に実行できる作業の数や量の範囲内で時間軸上に並べていく方法です。生産スケジューリングが有限能力スケジューリングともいわれる所以です。
また負荷山積み計画では、一連のいくつかの作業を便宜的に1つの工程とみなすことが多いようです。1つの工程が1つのタイムバケットの最初から最後までを占めるため、工程を細分化すると全体のリードタイムが極端に長くなり使い物にならないでしょう。それに対して生産スケジューリングでは、基本的には利用するリソースが変わる都度、独立した工程であるとみなします。


図1 負荷山積み計画と生産スケジューリング

各リソース上において異なるロットの作業同士の相互干渉を解決しつつ、連続した時間軸上で各工程の作業時間と時間帯を緻密に(秒単位まで!)計算することで、工程間の無駄な待ち時間を削り落としてリードタイムを短縮すること。これが生産スケジューリングの本質であるといえます。工場内の各リソース上での作業を時間軸上でシミュレーションするわけです。
ところで、場合によっては広義に「生産スケジューリング」という用語が負荷山積み的手法まで含むものとして使われることもありますが、本稿での「生産スケジューリング」はあくまで狭義に時間軸上に作業を並べていく手法だけを指しているものとしてご理解ください。

リソースガントチャート

生産スケジューリングの中心的な表現手段はガントチャートです。
ガントチャートとは、20世紀初期に米国のHenry L. Ganttがプロジェクト進捗管理の手段として考案した視覚化ツールであり、横軸を連続した時間軸とし、作業の開始日時と終了日時を横棒(バー)で表現した図表です。
ガントチャートの縦軸は目的によりさまざまです。多くの場合、縦軸は工程(作業)であり、1つの行には1本のバーが描かれます。一方、生産スケジューリングで主に利用するガントチャートは「リソースガントチャート」と呼ばれるもので、工程ではなく機械や人などのリソースが縦軸となります。工場では1つのリソースを多くのロットが順番に利用していくわけですから、リソースガントチャートの1行には多くのバーが時間軸方向に並んで描画されるのが特徴的です。これにより、有限能力ならではのロット同士の排他的な関係(山積みされないこと)が表現されるのです。


図2 生産スケジューラのリソースガントチャート

「モデリング」と「ルール」が肝

生産スケジューリングにおいて、現実の工場での作業の流れを適切に表現するために、どのようにリソースや工程を表すべきかを決めるプロセスを「モデリング」と呼びます。モデリングとはガントチャート上で最終的にどのような絵が描かれるべきかを考えることである、と捉えることもできます。例えば、人が事前に準備(段取り)しておくだけで製造は自動実行されるということであれば、下図のようにモデリングします。


図3 自動製造のモデリング

モデリングの結果、各ロットの個々の工程のための「作業(operation)」が無数に出来上がります。リソースガントチャートの各リソース上に作業を割り付ける処理が「スケジューリング」というわけです。
無数にある作業をリソースガントチャート上にどのようにどのような順番で並べていくか決めるための手順は「ルール」「ロジック」などと呼ばれます。工場によって事情は異なるので、現場とニーズをしっかり分析して適切にルールを組み立てることが重要です。例えばある工程において作業順序が切り替えコストやスループットを左右するのであれば、単に実行可能なだけでは不十分で、作業の並び順を適正にコントロールしなくてはなりません。従来は計画担当者の頭の中にあったノウハウをルールとして客観化して実行するのです。
具体的なモデリングの方法とルールについては回を改めて紹介しますが、ひとまずここでは、生産スケジューリングの肝は「モデリング」と「ルール(ロジック)」である、とだけ理解していただければ十分でしょう。

それって、やり過ぎではない?

「何時何分何秒まで計算するだって? それはやり過ぎでしょ。そんな計画を立てても、現場で実行できるわけないじゃない!」
直感的にそう思われたとしても仕方ないでしょう。実際、計画と実行は一致しないことを前提として運用するべきです(そのために生産スケジューラには実績情報も入力するのですが、それについては別の回で)。重要なのは、できるだけ計画に沿って作業する努力をすること、そして少なくとも「この計画どおりに作業をすれば、回答した納期どおりに完成させられる」という確信を持てるということです。
目標とすべき計画が存在しなければ製造現場は五里霧中で不安となり、各工程の前に仕掛かり品(中間在庫)の山を積み上げてでも前倒しで作業を進めたくなります。あるいは優先すべき作業を気付かずに後回しにしてしまうかもしれません。
「理想」の近似としての計画があれば、たとえその通りに実行できなかったとしても現状を「理想」からの差異として客観的に把握できます。だからこそ、製造現場は整然と機能するのです。そして計画の精度が高ければ高いほど、現場のレベルも引き上げられることになります。計画と実績の差を縮めるべく頑張ることが明確な目標となるのです。「どうせ実行できないのだから、精度の高い計画は要らない」と言い訳すべきではありません。
計画とはそういうものなのです。


図4 計画のレベルが現場のレベルを制限する

「データの設定が大変でとても使えない!」という声もあるでしょう。もちろん、生産スケジューリングに最高の成果を求めるのであれば、かなり詳細にモデリングし、大量のデータを用意することは避けられません。とはいえ、まずはシンプルなモデリングで限定的に運用し、スキルの向上に伴って次第にデータを詳細化していく、あるいは対象工程を広げるといった進め方をすれば、無理なく導入できるでしょう。
そこそこの運用でもそれなりのメリットは引き出せますが、生産スケジューリングの真価を発揮するためには気概と不断の努力が求められます。モノづくりとは、本来そういうものではないでしょうか。

変動要因とゆらぎ

現実の世界ではさまざまな変動要因や「ゆらぎ」が不可避なものとして存在するので、生産スケジューラがはじき出した「理論上の納期」をそのまま顧客に伝えるのではなく、安全のためにバッファ時間を加算して回答しましょう。
突発的に発生する変動要因には以下のようなものがあります。発生時に速やかに計画を更新するとともに、「ありうべきこと」としてあらかじめある程度計画に余裕を持たせておくことも必要です。
• 機械の故障
• 作業員の欠勤
• 緊急の飛び込み受注
• 資材入荷の遅れ
• 外注先からの納品の遅れ
一方、確率的に常に発生するゆらぎの要因には以下のようなものがあります。計画段階で時間的なバッファをある程度持たせることによって、これらを織り込んでおく必要があります。
• 気温や湿度による作業時間の変化
• 調達した原料の品質のばらつき
• 不良品の発生
• 人手による不定な作業時間


一般に完成までの工程数が多いほどゆらぎの影響を受けやすく、バッファも余分に必要となります。変動やゆらぎの程度はまちまちなので、工場によっては多くのバッファを必要とするかもしれません。そこで「結局バッファが必要になるのならば、精度の高い計画は要らないじゃないか」という意見もありそうです。しかしこれは、計画自体の精度の低さを補うためのバッファと、変動・ゆらぎを吸収するために論理的に不可欠なバッファを混同するために起こる誤りであり、精度の高い計画立案の意義を損なうものではありません。精度が高いからこそ、バッファを最低限で済ませられるのです。
変動やゆらぎを過度に意識して悲観的になる必要はありません。主に人的要因による変動やゆらぎが極端に多い分野を扱う「プロジェクト管理」では、一連の工程の各段階にある程度大きなバッファ時間を持たせなくては達成可能な計画が成立しませんが、各工程の作業時間を比較的安定して見積もれる製造業において事情は遥かにましです。各工程間のバッファは少なく抑えて、生産スケジューラを利用して総リードタイムが短いタイトな計画を立て、回答納期にある程度の余裕を持たせるといった使い方が通用するからです。当然ながら、どの程度計画をタイトにできるかは工場によって異なります。
製造業でも、ボトルネック工程の前には計画段階で十分なバッファを持たせなくてはならない場合がありますが、これについては次回以降で述べます。また変動・ゆらぎの多い分野(造船、大型装置製造など)での生産スケジューラの活用についても次回以降で。

生産スケジューラ

その処理量の膨大さと複雑さのため、通常は生産スケジューリングを手作業で行うことはありません。「生産スケジューラ(Production scheduler)」と呼ばれるコンピュータソフトウェアを利用します。
ちなみに、近ごろは”APS(Advanced Planning and Scheduling)”という米国製3文字語が出回っているようです。本来の言葉のニュアンスとしては生産計画(Planning)と製造計画(Scheduling)が組み合わさった高度なものを指しており、さらには製造業の遠大な理想とその実現を目指す意思を表す観念たり得るものだと思います。しかし現実には生産スケジューラと呼ばれているものをマーケティング用語として単に言い換えているに過ぎない場合がほとんどであり、理想が 矮小化されてしまっているのが実に残念です(世の中で多々見受けられる現象ですが)。また個人的には、”Advanced”という漠然とした言葉で意図的に煙に巻こうとする感じがどうも好きになれないので、本稿では敢えて「生産スケジューラ」と呼ぶことにします。
また、米国で”APS”というと、MRP計算の結果を基に山崩しをして実行可能解を導出するモジュールを指す場合が多く、はじめから有限能力で計算をする日本の「生産スケジューラ」とは隔たりがあると考えた方が良いでしょう。1990年代には米国でも数多の生産スケジューラのパッケージソフトウェアが販売されていましたが、ほとんどはERPベンダに買収されてしまい、MRPの下位モジュールと位置付けられました。そのため単体製品としての生産スケジューラはあまり出回っていないようです。
一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無かったため、日本の生産スケジューラは独自の進化を続けており、機能的には世界でもトップレベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え続けているからでしょう。


日本製の生産スケジューラは単に自動スケジューリングするだけでなく、人が操作して手修正をするための機能(ユーザーインターフェイス)が充実していることも大きな特徴です。かつて文章を書くための紙とペンからワープロへ移行したのと同様に、日本においては手書きしていたガントチャートをコンピュータで描けるようにし、さらにそれを自動化していったという、実務者由来のボトムアップ的な発想が色濃く表れています。つまり「計画担当者の道具」として発展してきたのです。米国では上位システム(たいていはMRP)で“決めた”計画に一方的に従うトップダウン式であるのに対して、現場レベルでの自律的な改善努力を重視する日本の製造業の文化が端的に反映されており、興味深いところです。

繁なリスケジュール

生産スケジューラを利用するメリットの1つが、頻繁に「リスケジュール(再スケジュール)」できるということです。新たな情報を追加・変更して何度でも繰り返し短時間で計画を更新できるのです。
手作業で計画を立案する場合は、情報量・処理量が膨大過ぎて、先に挙げたさまざまな変動要因が発生したときに即座に適切に対応することは到底無理です。たいていは製造現場での対応に任せることになるために計画と現場が一致しなくなり、計画が軽視されるようになります。そうなると計画の価値は失われ、単なる「目安」に成り下がってしまいかねません。回答した納期も裏づけを失い、混沌(こんとん)に逆戻りしてしまうでしょう。
変動に応じてリスケジュールして実行可能な新たな計画を速やかに現場へ提供することで、製造現場と計画担当者の間の信頼に基づく好循環が得られるようになれば、混乱に振り回されることなく本来のモノづくりに専念できる工場を実現できるはずです。

生産スケジューラで何を目指すか

そもそも生産スケジューラを使って目指すものは何なのでしょうか。単に計画担当者の業務を軽減することでしょうか? 確かに余裕ができれば、現場、資材調達、営業などの各部門との間の人的な調整作業など、本来行うべき高度な仕事に専念できるようになりますが、それでも投資対効果は不十分と評価されるかもしれません。実用レベルの生産スケジューラ(パッケージソフト)であれば数百万円はしますし、効果的に運用するためのシステムとして構築するには1000万円を超えるからです。また、データを整備するために要する労力も決して小さいものではないでしょう。
生産スケジューラの直接的な効果は、資材調達から出荷に至るまでのリードタイム(総時間)をできるだけ切り詰めて工場内での滞在時間を短くすることです。リードタイム短縮は多くの製造業にとっては大きな目標であり、特に多品種少量生産の製造業にとっては、重要ではあるが達成困難な「悲願」といっても良いでしょう。
• 無駄な滞留在庫がなくなる
納期に間に合わせるために前倒しで作る必要もなくなるので、資材、仕掛かり品、製品の在庫を減らせます。無駄な資産が減ることでキャッシュフローが大幅に改善されます。
• 顧客の短納期要求に応じられる
業種によってはコアコンピタンスになり得るほど、受注リードタイムの短縮は競合他社と競争する上で重要な要因でしょう。
• 論理的裏づけのある納期回答ができる
生産スケジューラの回答納期はシミュレーションの結果なので、計画に従って作業をすれば納期達成できるのだという確信を持てます。工場内の秩序の確立に寄与するという副次的効用もあります。多くの工場にとって、これも実に価値ある効果とみなされ得るでしょう。
• 視覚化される
ガントチャートを見れば、工場の中で何がどうなっているのかが一目瞭然です。
• 製造現場任せにならない
製造現場での局所的な判断が、全体にとって良いとは限りません。何でもかでも「現場判断」にむやみに頼るのではなく、正しい棲(す)み分けが大切です。
• 整然とした製造現場
前述のように滞留在庫が減るので、各工程前に積み上がっている雑然とした仕掛かり品の山が小さくなります。
• ノウハウの脱属人化
計画担当者のノウハウがモデリングおよびルールとして客観化されます。担当者の配置換え、急病、退職の際にも慌てることもありません。
ノウハウをルール化して詰め込むことで、“コマンド一発”で何度でも速やかに質の高い計画を得られることも、生産スケジューラを使うメリットです。例えば、ボトルネック工程の切り替えを極力減らして最大限に休まず活用する計画を立てることで、工場全体のスループット(=生産量)を向上させることもできます(「TOCスケジューリング」などと呼ばれます)。手作業による計画立案では、変動要因発生時には過剰な仕掛かり在庫や納期遅れなどの代償無しには対応できないでしょう。
当然ですが、これらのことが生産スケジューラを導入するだけで実現するわけではありません。全体システムの適切な構想・実装のみならず、関係者全員の弛まぬ努力も必要です。しかしこれらは少なくとも、生産スケジューラがまさに狙(ねら)っている効果であり、生産スケジューラを利用せずに達成するのは非常に困難でしょう。生産スケジューラの「運用サイクル」が本格的に回り出したとき、そのインパクトに目を見張るに違いありません。
生産スケジューラの「運用サイクル」については、次々回以降であらためて言及します。
◇◇◇
ここまで理屈ばかりを並べてきた感がありますが、それだけではなかなか理解が進まないでしょう。そこで次回は簡単な生産スケジューリングのためのデータを作成して計画を立案するまでの流れを具体的に示すことで、実際の生産スケジューラがどのようなものであるかを感じ取っていただこうと思います。

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第3回:生産スケジューラの活用方法のバリエーション
2013.02.25

生産スケジューラの活用方法のバリエーション

生産スケジューラの導入を成功させるためには、そもそもどのような活用方法があるのか、そしてそれらにはどのような特徴があるのかを理解しておくことが重要です。
生産スケジューラの活用方法には、大きく分けると2通りあります。
1つは、納期予測や材料手配、要員計画等のために、シミュレータとして活用するもの、もう1つは、作業指示のために文字通りスケジューラとして活用するものです。

活用方法1 シミュレータとして

この活用方法では、作業指示を出すことよりも、未来にどうなるかを可視化し、事前に対策を講ずることに重点を置きます。
例えば、以下のような使い方です。
• 仮オーダーに対して、納期を予測し、回答する。
• 受注済みオーダーに対して、完成予定日時を予測する。納期に対する余裕度合いを日々確認し、余裕が小さくなってきているものについてはそれ以上遅れないように重点的に管理する。
• 設備や機械、作業者の負荷を確認し、問題があれば、残業や休日出勤、外注手配、さらには要員配置の見直しや多能工化の推進、設備投資などを検討する。
• 各資材が将来どのように推移していくかの予定を確認し、タイムリーに入荷されるように資材の調達を手配する。
いわゆる「見える化」に似ています。ただし、通常の見える化は「今どうなっているか」を見えるようにしますが、この場合は「将来どうなるか」を見えるようにします。これにより、問題が発生するまでまだ時間的な余裕がある間に、つまり、様々な手段を選ぶ自由度が残っている間に、しっかりとした措置を講ずることができます。いわゆる「泥縄」で後追いで対策するのに比べて、効率的に対処できます。
シミュレーションの精度
生産スケジューラを使うと、精度の高いシミュレーションが実現できます。例えば、ExcelやMRPで無限能力で山積みする方法では、製造量が多い時と少ない時との違いをシミュレーションできませんが、生産スケジューラで有限能力でシミュレーションすれば、設備や作業者の負荷を考慮した上で完成予定日時を算出することができます。有限能力かどうかだけでなく、他にも、段取り替えや作業者の負荷や、作業の優先順など、実際にモノを製造していく上での様々な操業ルールや制約条件を課してシミュレーションすることによって、より精度を高めることができます。
シミュレーションと実際の製造とがかけ離れていると、色々と問題が出てくる可能性があります。例えば、シミュレーションで当初予測した完成時期が実際とはズレていると、納期直前になって残業や外注などで対応することになるかもしれません。また、材料の実際の消費のタイミングがシミュレーションよりも早くなると、材料不足のために作業ができなくなるかもしれません。
また、シミュレーション上は特定の機械や作業者の負荷が高いように見えても、実際の製造では作業の順番を調整することで段取り替え(切り替え)を短縮しており、実際の負荷はそれほど高くないかもしれません。また逆に、シミュレーションでは負荷が低くても、実際には多品種少量生産による段取り替えが頻発しているかもしれません。段取り替えも考慮して正確にシミュレーションすることができれば、無駄な設備投資や要員増強を避けることができます。ただしそのためには、実際に各資源でどのような作業順序で製造するかまでシミュレーションする必要があります。
なお、精度が低くても、運用を工夫することである程度カバーできますが、無駄は増えます。
例えば、納期回答では、精度が多少低くてもその分安全率を大きめにして余裕を持たせた納期を設定すれば、最終的な納期遅れの確率を小さくすることはできます。しかし、その分、顧客に対して確約できるリードタイムが長くなるので、受注できず機会損失が発生するかもしれません。
材料の調達も同様で、余裕を持って早めに手配すれば安全ですが、その分在庫が増えることになります。
ただし、精度の高いシミュレーションを実現するためには、精度の高いデータが必要になります。それらのデータを継続的にメンテナンスしていくことも当然必要です。また、必要な制約条件を生産スケジューラが表現できない場合、何とかして近似しようとすると大変に苦労することになります。
まとめると、シミュレータとして活用する場合、精度がそれなりでも効果もそれなりに得られますが、頑張って精度を上げればその分効果が大きくなります。ただし、精度を高めるには、それに応じた労力や眼力が必要です。したがって、適切な折り合い点を見出すことが大切です。
ともあれ、「成功か失敗か?」という二者択一に直面するわけではないので、リスクの低い活用方法だと言えるでしょう。

活用方法2 スケジューラとして

この活用方法は、上で述べたシミュレータとしての活用に加えて、日程計画を立案し製造部門に作業指示を出すものです。
この方法は、さらに2通りに分けることができます。
1つは、現場裁量を認めず、指示の通りに製造させる「中央集権型」、もう1つは、一定の基準を設けて現場の裁量を認める「分権型」です。

活用方法2-1 中央集権型

この方法では、生産管理部門が実行可能な日程計画を立案し、それに基づき製造部門に作業指示を出します。製造部門は原則として作業指示の通りに製造します。
長所および短所としては、以下が挙げられます。
◆長所
• 計画と実際の製造との乖離が小さくなるので、予定と実績の乖離も小さくなる
• 生産リードタイムを極限にまで短縮できる可能性がある
• 製造部門にとっては無理な指示を出されないので責任が明確になる
• 工場全体さらにはサプライチェーン全体を通した最適な生産が可能になる(かもしれない)
◆短所
• 現場の納得する計画を立案できないと稼動できない
• 製造部門からの抵抗、反発にあう可能性がある
• マスターデータの精度と適切なスケジューリングロジックが必要
• 製造や運搬、調達の実行における緻密な統制が必要
簡単に言えば「成功すれば絶大な効果が得られるものの、逆に失敗のリスクも高い」という「ハイリスク・ハイリターン」な方法です。
一般に、生産スケジューラの導入では、本稼働直前になって問題が多発するという「実稼働直前の壁」に直面することがありがちですが、この方法の場合は特にその可能性が高くなります。
この壁を突破するには、「的確なパッケージ選定」「高度なパッケージ利用技術」「しっかりした導入体制」が必要です。

活用方法2-2 分権型

この方法では、製造部門は、生産管理部門からの作業指示にある程度従いますが、一定の裁量権を持ちます。
たとえば、「1日の中で作業の順番を入れ替えてもよい」という具合です。
長所および短所は以下の通りです。
◆長所
• 計画と実際の製造との乖離が(そこそこ)小さくなるので、予定と実績の乖離も(そこそこ)小さくなる
• 生産リードタイムを(そこそこ)短縮できる可能性がある
• 製造部門にとっては、無理な指示を出されるケースが減り、また一定の自由度も確保できるので、抵抗、反発が比較的少ない
◆短所
• マスターデータの精度やスケジューリングロジックのチューニングはそれなりに必要
• いったん「そこそこ」で満足してしまうと更に上を目指しにくい(?)
つまり、「完全に自由にしてしまうと日程計画の意味が無くなってしまうが、かといってがんじがらめにするのも非現実的」という場合のための、「理想と現実の間の折衷案」ともいえます。

どの活用方法を選ぶべきか?

これらの活用方法の特徴を踏まえた上で、自社にはどの方法が適しているかを見極め、選択しましょう。
「スケジューラの導入は難しい」という場合、上の中央集権型を指していることが多いのではないでしょうか? この方法は確かに非常に難しく、導入を成功させるには、高度な組織マネジメント、適切なパッケージ選択、およびその利用技術の確保、マスターデータの精度、継続的なメンテナンス、等が必要です。どれか1つでも欠けると、失敗確率が高くなります。特に、不適切なパッケージを選んでしまうと、まず間違いなく失敗します。導入プロジェクトを慎重に進める必要があり、稼動までの期間も長くなります。また、そもそも製造自体に不確定要素が多く、予定通りに製造できないことが多い場合には、中央集権型の運用はまさに「労多く益少なし」です。
ただし、完全に統制できる職場で、かつ、揺らぎが少ない(あるいは小さくできる)のなら、究極的にリードタイムを短縮できる可能性があります。
分権型の場合も、やはりそれなりの手間や労力は必要です。そもそも生産スケジューリングシステムの導入は、関与部門が多岐にわたり関係者の利害が複雑に絡むため、マネジメントの難しいプロジェクトです。導入を成功させるには中央集権型と同様の項目が必要です。そこまで究極的ではありませんが、油断は禁物です。現場に裁量を持たせるとしても、そもそも計画がデタラメなら作業指示を出す意味がありません。それなりの精度が必要です。
まとめると、無難なのは「シミュレータ」、頑張ってやるなら「分権型」、究極的には「中央集権型」、というところです。

導入効果を大きくするには

いずれの活用方法でも、生産スケジューリングシステムはあくまでもツールに過ぎません。生産スケジューラの導入効果は、生産スケジューラが立案したスケジュールを基に、人間がどのような活動を行うかによって変わってきます。
たとえば、特定のスキルの作業者が不足しているとわかっても、あからさまにすると角が立つからと情報をオープンにせず、多能工化を進めなければ、得られるはずの効果が得られなくなります。
また、立派な計画を立案していても、製造や搬送がそれに従わなければ意味がありません。とはいえ、きめ細かで膨大な指示に忠実に従うのは、現実的にはなかなか大変です。実行系における何らかの仕組みが必要なケースもあります。
どんなパッケージを選ぶべきか
これまで述べてきたように、スケジュールの精度が高い方が効果も高くなります。したがって、工場の様々な制約・制限を緻密に表現できるパッケージの方が良いということになります。特に、中央集権型を目指すのなら、相当なフィット性が必要です。
その見極めのためには、プロトタイプを作成し、実際にパッケージを評価することが大切です。ガントチャートだけを見ればどれも同じ、と思われるかもしれませんが、実際には各パッケージにはそれぞれの特徴があり、向き・不向きがあります。単に「安いから」「実績No1だから」「画面がきれいだから」という理由で選ぶのは非常に危険です。
しかしながら、どんな機能が必要なのかは、事前にはなかなかわかりにくいものです。システム構築を進めて本稼働直前に計画結果を確認した時に、「このパッケージではダメだ」ということが判明することも、決して珍しくありません。また、運用中に様々な変更があり、新たな要求が発生することもあります。というよりむしろそれが普通です。
したがって、当初は想定していなかった事態にも対応できるような「懐の広さ」「柔軟性」がパッケージには必要です。
• 今後、この工場にどんな変化が起こりうるだろうか?
• それに対応するためには、システムにはどんな仕組みが必要になるだろうか?
• その場合、このパッケージだと、どうなるだろうか?
そのような想像を働かせて、慎重にパッケージを選定すべきです。

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日本の生産管理のレベル;広島大学の研究成果報告書にみる

米国の大学では、工場経営や生産管理に関係する学生はFactory Physicsを教科書として使っているようです。残念ながら日本語訳本は出ていません。これに類するものとしては、生産工学、生産システム工学、生産マネジメント、生産技術、工場管理、、などなどあります。これらの書とFactory Physicsの違いは、Factory Physicsは自然を対象とした物理学的アプローチで生産ラインのメカニズムを分析している点にあります。

Webをググっていたらこんな論文を見つけました。
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00021482

「インタビュー調査に基づく製造企業のスケジューラの思考パターンの解明」
平成17年度~平成18年度 科学研究費補助金(基盤研究(C))
研究成果報告書 研究代表者 森川 克己

執筆者の肩書、研究分野等は次のようになっています。(広島大学Website)

広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授
博士(工学) (広島大学)
研究分野;複合領域 / 社会・安全システム
研究キーワード;生産管理、生産計画


この論文、少々長ったらしいタイトルが付いていますが、“はしがき”に概要が書いてあります。以下に引用します。

<iページ>はしがき
中国地域の製造企業10社の生産スケジューリング担当者(以下、スケジューラ)に対し、実務で使用されている生産管理システム、計画作成手順、スケジュールの評価尺度、スケジューラの抱えている問題点、スケジューリング・システムへの要望、スケジューリングの難しさ、研究者への要望などについてインタビュー調査を実施した。その目的は、企業の抱えている実際の問題を把握し、論理的研究との橋渡しを行うことにあった。調査企業の業種や規模は異なったが、多くの企業が、需要変動のもとで、製品品質を保ちつつ納期遵守と仕掛削減を重要な目標としており、その実現のためにスケジューラが営業部門や製造現場と密な連絡をとって、工場全体の生産性を高めるために協働的な生産計画を行っていることが明らかとなった。その際、スケジューラは、情報収集、計画作成、評価を何度か繰り返してから計画を確定させており、この思考・行動のフローに必要とされる代表的な情報との対応付けを行ったものをスケジューラの基本的な思考パターンとして提案した。最後に、協働的生産計画におけるスケジューラの役割の重要性を定量的に把握する試みとして、システムダイナミックスを用いたモデル化とシミュレーション実験を行い、スケジューラが現場との情報交換を行う重要性を数値的に示した。

ポイントは、
 [目的];企業のスケジューラが抱えている実際の問題を把握し、論理的研究との橋渡しを行う

 [現状調査/問題・課題の把握];製造企業10社の訪問・インタビュー

 [スケジューラの思考パターンの解析];情報収集➔計画作成➔評価を何度か繰り返して計画

 [パターンのモデル化とシミュレーション];システムダイナミックスを利用


この論文の狙いをまとめると、
実務でのスケジューラの思考パターンを解析し、生産スケジューリングの実務と理論的研究の橋渡しを行う
とでもなるのでしょうか。

「第3章 企業研究者との意見交換」と「第4章 インタビュー調査」に現状調査の詳細があります。生産スケジューリングの現状・実態を知るうえで大いに参考になると思われます。関心のある方は本文をご参照ください。

ここでは、論文の狙いである“スケジューラの思考パターンの解析”に注目して、“実務と理論的研究の橋渡し”とはどのような事なのか、に焦点を合わせてまとめてみたいと思います。解析は40ページ辺りから始まります。

<40ページ>
図5.4は、この仮想的な製造企業における協働的生産計画の因果ループ図を示している。スケジューラは、営業部門から届けられる受注情報に基づき、生産現場に流す仕事の量を決定する。この際、多くの注文があれば流す量も多めに、受注が少なめであれば流す量も少なめにと、受注量のある一定割合となるようにする。ただし、あまりに多くの量を流すと残業生産を強いることが多くなり、品質問題が生じる恐れもあるため、上限を設けている。この部分は図5.4で“流す割合”から“注文のループ”への実線の有向枝で示されている。矢の終端に書かれた“-”(マイナス)の記号の意味は、流す割合を増やすと注文の量が減ることを意味している。一方、“注文のループ”から“流す割合” への破線の有向枝は、流す割合の決定に際し、“注文のループ”にある量を参考にしていることを意味する。この、“流す割合”の決定に際して参考にしている値Lhは、受けた注文を現場に流すまでの平均リードタイムである。

生産現場では、計画リードタイム(図中のLm)に基づき日々の処理要求量が与えられるが、生産能力に対して処理要求量が少なければ、将来の残業を避けるために、追加で処理を行うことを要求する。この際、スケジューラは過去の実績等から予想作業負荷を計算するが、過去の実績がほとんどない製品については、精度の良い負荷計算は困難であると仮定する。また、実際の製造現場の状態は、仕掛状態や機械・作業者のコンデションなどによって変化し、予定した時間にすべての作業を完了できるとは限らないと仮定する。

協働的生産計画の環境のもとでは、スケジューラが現場に出向いて様々な情報を収集し、現場と意見交換を行うと同時に現場の協力を最大限得るように活動することで、作業負荷の見積りの精度が向上し、また現場の作業効率も高まると仮定する。シミュレーションによってそのレベルをいくつか設定して検討したところ、協働的活動を行わなかった場合(すなわち、スケジューラが単独で計画した場合)、作業負荷がほぼ正確に事前にわかるという場合に比べて総残業時間が約2倍となった。しかしながら、見積精度が向上すると、総残業時間が約30%減少し、さらに現場の生産性が3%向上すれば、作業負荷がほぼ正確に事前にわかる場合とほぼ同じ総残業時間となった。この結果より、スケジューラを中心とする協働的生産計画の効果を総残業時間の削減という結果で評価することができた。


図5.4が思考パターンのモデルのようです。この図とその説明を読んで、、、「うーん」としばらく思考停止状態になってしまいました。つまり、何を言っているのか、、、わからないんです。いくつか挙げますと、、

① 多くの注文があれば流す量も多めに、受注が少なめであれば流す量も少なめにと、受注量のある一定割合となるようにする。

疑問;注文の多いときは投入を遅らせ(納期調整などして)、少なければ早めに投入して生産量をできるだけ一定になるようにするのが一般的。「受注量のある一定割合」という投入量は生産ラインの特性を考えれば不合理。

② あまりに多くの量を流すと残業生産を強いることが多くなり、品質問題が生じる恐れもあるため、上限を設けている

疑問;「上限を設ける」ことは正しいが、「残業生産を強いることが多くなり、品質問題が生じる恐れある」という理由は副次的。投入量を増やすと、待ち時間が急激に長くなり、且つコントロールが利かないため、納期が守れなくなることが最も重要ではないか。

 “注文のループ”から“流す割合” への破線の有向枝は、流す割合の決定に際し、“注文のループ”にある量を参考にしていることを意味する。

疑問;①で指摘したように“流す割合”で投入量を決めることは不合理。

④ 生産現場では、計画リードタイム(図中のLm)に基づき日々の処理要求量が与えられるが、生産能力に対して処理要求量が少なければ、将来の残業を避けるために、追加で処理を行うことを要求する。

疑問;生産能力に対して処理要求量が少なければ、追加で処理を要求するのは“稼働率を上げるため”とか“手空きを防ぐため”とかが一般的。「将来の残業を避けるため」という理由は末節的で副次的。

⑤ スケジューラは過去の実績等から予想作業負荷を計算するが、過去の実績がほとんどない製品については、精度の良い負荷計算は困難であると仮定する。

疑問;では、負荷計算はどのように計算したのか。しなかったのか。実態を反映した“仮定”なのか。

⑥ 実際の製造現場の状態は、仕掛状態や機械・作業者のコンデションなどによって変化し、予定した時間にすべての作業を完了できるとは限らないと仮定する。

疑問;作業完了時間をどのように計算(見積り)したのか。実態を反映した“仮定”なのか。

⑦ 協働的生産計画の環境のもとでは、スケジューラが現場に出向いて様々な情報を収集し、現場と意見交換を行うと同時に現場の協力を最大限得るように活動することで、作業負荷の見積りの精度が向上し、また現場の作業効率も高まると仮定する。

疑問;「現場の協力を最大限得る」、「見積りの精度が向上」、「作業効率も高まる」間の因果関係をどのようにして確認したか。実態を反映した“仮定”なのか。


結論部分に注目してみます。

 作業負荷がほぼ正確に事前にわかる場合に対し、協働的活動を行わなかった場合➡総残業時間が約2倍となった

 *見積精度が向上すると➡総残業時間が約30%減少

 *さらに現場の生産性が3%向上➡作業負荷がほぼ正確に事前にわかる場合とほぼ同じ総残業時間となった
    
結論;スケジューラを中心とする協働的生産計画の効果を総残業時間の削減という結果で評価することができた。

「実務でのスケジューラの思考パターンを解析し、生産スケジューリングの実務と理論的研究の橋渡しを行う」ことを目指してたどり着いたのが上記の結論。生産ラインの物理特性、管理の経験則を無視した疑問だらけの協働的生産計画のロジックでたどり着いた結論は、やっぱり、支離滅裂。「実務と理論的研究の橋渡し」を目指したのはいいんですが、箸にも棒にもかからない、、内容に、、「うーん」と、、。

国立大学の大学院准教授がまとめ、世に公表する論文としてはお粗末の限り。ここで学ぶ学生のレベルも押して知るべし。日本の競争力低下の一要因、といったら言いすぎでしょうか、、。

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生産スケジューラを支える専門家たち

米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。

「Asprova解体新書」のプロローグ(13ページ)にある記述です。「教科書的な本」とはFactory Physicsではないかと思います。読んでみると、

生産スケジューラ(by computer)が「処理時間固定(or決定)」「処理ジョッブ固定(or決定)」を条件にしているのに対して、「処理時間のバラツキ」や「ランダムなジョブの投入」が不可避な現実の生産ラインでは、この物理的条件の違いを解消する策は存在せず、従って、

「生産スケジューラは実行可能なスケジュールを生成できない」

と説明されています。「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」の裏付けは取れました。わざわざネガティブな説明を最初に出したからには、この問題に対する“答え”みたいなものが「Asprova解体新書」に書いてあるのでは、、と微かに期待しました。

Factory Physicsが指摘する問題がどのように取り上げられているのか、それに対する対策らしきものがあるかどうか、「Asprova解体新書」のすみずみまでみてみました。が、、、何もありませんでした、、。・・・いやいや、ありましたよ。びっくりするようなことが、、。

巻末(230ページ)に、
「査読を快く引き受けてくれました佐藤知一氏、本間峰一氏、勝呂隆男氏に感謝いたします」
と。「Asprova解体新書」の内容に同意してバックアップしている専門家がいるんです。

実は、ちょっと古い話ですが、こんなことがありました。

きっかけは2冊の本。一冊目は、
「革新的生産スケジューリング入門」佐藤知一氏著、2000年4月15日発行
読んだのは、2000年中頃だったでしょうか。APS(Advanced Planning & Scheduling)で盛り上がっていた頃です。APSは“(オーダがランダムに次々に飛び込んでくる)動的問題”と“(作業時間等が変動する)確率的問題”に対応するスケジューリング方法だ、というあたりに興味を持ちました。興味を持ったといっても、疑いの目でですが、、。

もう一冊は、
「“JIT生産”を卒業するための本」生産革新フォーラム編著(メンバー;佐藤知一氏、本間峰一氏他5名)、2011年12月30日発行

JITに関する本は、それまでに数え切れないほど出版されています。様々、読みました。理論に重点を置いたもの、現場のやる気を主題にしたもの、導入成功事例集的なもの、、などなど。「“JIT生産”を卒業するための本」の中身は、正直に言えば、何を言いたいのかよくわからない、という感じでした。

その頃はTOCにどっぷり、でした。TOCも突き詰めていくと、つじつまの合わないところが目立つようになってきました。

*ボトルネックだけをスケジューリングすればよいというOPTというソフトの販売をすぐにやめたのはなぜか。
*DBR(Drum Buffer Rope)からスケジューリングをしないS-DBR(Simplified-DBR)にグレードダウンしたのはなぜか。

ゴールドラット、エリーシュラーゲンハイム(S-DBRの提唱者)、オーデットコーエン(ゴールドラットスクール校長)らと話しているうちに、だんだんわかってきました。

そして、Factory Physicsを一通り読んで、“生産スケジューラ(APS)で動的問題も確率的問題も原理的に解けない”ということがわかってきました。

生産革新フォーラムというグループがあります。代表幹事が本間峰一氏、メンバーに佐藤知一氏他「“JIT生産”を卒業するための本」の共同著者がおります。その会合で、2014年7月16日、講演を行い、次のような話をしました。

*稼働率を高くすると急激に待ち時間が長くなること
*その待ち時間を挽回することはできず、工程を経るごとに累積され生産リードタイムは長くなっていくこと

固定時間で作成したスケジューリングでは、この待ち時間は計算されませんので、生産スケジューラから出力されたスケジュールと待ち時間を含むスケジュールとはかなりの差が出てきて、ほとんどの場合、“実行不可能”となる、、というような話を交えて、、。

本間峰一氏の反応は、“ほとんど理解できていない”という感じでした。しかし、佐藤知一氏の反応には手ごたえを感じました。後日、彼のBlogでも紹介しています。
https://brevis.exblog.jp/22236990/
内容に違和感はありません。“待ち行列現象”はご理解いただけたと感じました。

あれから6年ほどたちました。“待ち行列現象”を生産スケジューリングではどのように捉えているのか、佐藤知一氏にメールしてみました(2020年1月)。

私が知りたかったのは、生産スケジューラで実行可能なスケジュールを生成する条件は何か、ということでした。どのようなやり取りがあったのか、彼の説明を引用(水色部分)しながらその要点を列記してみます。先ずは、こんな説明から、、

① 標準作業時間の概念も存在せず、作業時間の実績値をとる仕組みもないような管理レベルの現場に、生産スケジューラを入れる価値がないことは、ほとんど自明だと思います。

管理レベルが低い現場では生産スケジューラを入れる価値なしとのこと。管理レベルについてもう少し具体的に知りたかったので、生産スケジューラが実行可能なスケジュールを生成する“実用的な条件”は何か、と尋ねました。次のような説明です。

② 主要な工程における実作業時間と品質(不良率)が、工場の管理目的から見て受容可能な範囲の精度で、推算できること

具体性はないので、工学的な表現でお応えいただけないかと再三お願いしました。が、残念ながら、“文学的”な説明しかいただけませんでした。待ち時間を計算できるかどうかについては、次のような説明がありました。

③ 固定リードタイムで無限負荷計画のMRPは、たしかに使えませんが、現在の生産スケジューラは実作業時間のみ固定で、待ち時間は自分で計算します。

条件付きではありますが、待ち時間は計算できるとの説明です。彼の実務の説明もありました。

④ わたしの業界では、計画策定時に、作業期間が確率的に変動するようなスケジューラを、必要に応じて各社で使っています。それにより、作業のクリティカリティを評価してモニタリングの方法を決めたり、フロート(TOC風に言えばタイム・バッファー)の配置を決めたりするのです。

作業時間が変動してもスケジューラは使えますよ、という説明です。そして、

⑤ 生産スケジューラは一種のシミュレータです。

と、生産スケジューラはシミュレータとしても使えると主張しています。こんな説明もありました。

⑥ 生産スケジューラは、マネジメントのためのツールです。管理目的も受容可能性の判断も、いずれも価値判断を含むマネジメントの問題であって、純粋な技術論ではありません。

他にも、おもしろい説明がいくつかあるんですが、今回の意見交換を通して感じたことをとりあえず、私なりにまとめると次のようになります。

~~まとめ~~

「マネジメント」を“生産管理”と置き換えて、生産スケジューラと生産管理の関係について考えてみたいと思います。生産管理と言えば初めに出てくる言葉は“生産計画”。生産計画の出来不出来が生産管理のレベルを決めるとよく言われます。もっと一般的に言っても、マネジメント・サイクルの基本はPDCA。その最初がPlan、計画です。ですから、生産管理の一丁目一番地が生産計画だ、というのが現在の主流の考え方ではないかと思います。

生産計画が現場に降りてくると生産スケジュールになります。詳細な生産スケジュールを作るのが生産スケジューラ。きめ細かな生産管理をするためには生産スケジューラはなくてはならない“ツール”である、と。

「生産スケジューラは、マネジメントのためのツールです」

これは、大量生産が始まって以来発展してきた生産管理の本流の中に定着している伝統的な考え方ではないかと思います。


では、生産スケジューラとはどんな効用のあるツールなのか。生産スケジューラ・ベンダーのサイトを覗いてみると、生産リードタイム短縮、在庫削減、納期遵守率向上、、、見込生産にも受注生産にも対応、柔軟・迅速な計画変更、、、と万能。生産スケジューラは生産管理ではなくてはならないツールと映ります。

ところが、実際現場に導入して、うまく動かせない企業をたくさんみてきました。うまくいったという企業はわずかで、しかも部分的な導入にとどまっている例が多いように思われます。

そんな企業に対して、「管理レベルの低い企業は生産スケジューラを入れる価値がない」と斬り捨てます。「生産スケジューラをうまく使いこなせない企業は、管理レベルが低い」とも聞こえます。

ではどの程度の管理レベルであれば生産スケジューラを入れる価値がるのか、その判断基準はあいまい。行間から忖度すれば、これで判断できないのは、マネジメントのレベルが低いからだ、と言っているようです。マネジメントのレベルが充分に高ければ、

*待ち時間も計算できる
*生産スケジューラをシミュレータとして使い、最適条件で生産を管理することもできる。
*バラツキがある場合は必要なところにタイム・バッファーを入れておけばよい。

となります。まとめますと


「ジョブの投入時間間隔がランダムで、処理時間が変動しても、マネジメントのレベルが高ければ、それらのバラツキを生産スケジューラが機能する程度に管理することができ、生産スケジューラを重要なマネジメントツールとして使うことができる。」

というのが彼の主張のようです
~~~~~~

「生産スケジューラは実行可能なスケジュールを生成できない」
とするFactory Physicsに対して
「マネジメントレベルが高ければ、投入時間間隔や処理時間の変動があっても、生産スケジューラをマネジメントツールとして使うことができる」
とする佐藤知一氏の主張。さて、どちらに軍配が上がるのでしょうか。

「生産スケジューラは実行可能なスケジュールを生成できない」最も大きな理由は何でしょうか。もう少し詳しくみてみましょう。「処理時間のバラツキ」や「ランダムなジョブの投入」があるとどのような物理現象が起きるか。このBlogでは再三取り上げておりますのでお分りだと思います。“待ち行列現象”です。待ち行列理論で詳しく論じられています。

待ち行列理論でその現象がわかっているのなら、投入時間間隔や処理時間のバラツキから待ち時間の長さを求めることができないのか。もちろんできます。しかし、簡単に求められるのは待ち時間の平均で、その分散は簡単には求められないんです。様々な近似式が提案されていますが、どれも難解で、限定的で、誰でもどこでも簡単に使える式ではありません。分散の特性は、バラツキが大きくなり、稼働率が高くなると、平均と同じように急激に大きくなります。また、待ち時間の確率分布形状は釣鐘状からは程遠く、片側に山のすそ野のように、ダラダラと広がります。ですから、持ち時間を点推定することは、ほとんど、不可能となります。

しかし、佐藤知一氏は実際、スケジューラを使っていると言ってます。
「わたしの業界では、計画策定時に、作業期間が確率的に変動するようなスケジューラを、必要に応じて各社で使っています」
これはどういうことなんでしょうか。彼が使っているのはプロジェクト管理です。生産管理ではありません。プロジェクト管理と生産管理で何が違うのか。生産ラインでは待ち行列現象が必ず、強烈に起きるのに対して、プロジェクトのスケジュールでは、部分的、限定的にしか起きません。プロジェクト管理では、タスクの平均時間や分散は加法性が成り立ち、統計理論を利用して、必要なタイムバッファーなども計算できます。

詳しくは、こちらのBlog をご覧ください。

生産スケジューラとプロジェクト管理スケジューラは何が違うのか;2020年4月
待ち行列現象の待ち時間の特徴;2020年5月

お分かりいただけたでしょうか。佐藤知一氏はプロジェクト管理のスケジューリングと生産ラインのスケジューリングの根本的な違いをご存知ないようです。。

こんな話もあります。2年ほど前、このBlogに“生産管理システム活用の盲点…工場管理8月号[特集1]”を投稿しました。工場管理2018年8月号の特集記事「生産管理システム活用の盲点」の中身の貧弱さに驚き、私見を綴ったものです。

この記事の執筆者は生産管理のコンサルタントです。プロジェクト管理だという逃げ道はありません。生産ラインの物理的特性、工学的特性を理解しないまま、つまりそれらが”盲点“に入ってみえないから、こんな的外れな記事になるのかな、と思います。記事そのものが「生産管理システム活用の盲点」を具現化している、とみると、おもしろい記事です。ちなみに、この記事を書いたのは本間峰一氏です。興味のある方はBlogを覗いてみてください。

「Asprova解体新書」を解体してみました。生産スケジューラがいかに有用か、もりたくさんの機能がわかりやすく説明されています。生産スケジューラから出力されたスケジュールを本来の目的通り現場では使われていないことや、実際は2カ月かかっているものが生産スケジューラだと2週間でできることになるとか、正直ベースで書かれていることにも好感が持てます。

しかし、
米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。
という情報をどのように理解したのでしょうか。

教科書的な本」を調べてみたんでしょうか? 

「Asprova解体新書」では、生産ラインの物理特性や工学的特性についてはまったく触れられておりません。物理学、工学を無視した生産スケジューラがツールとして機能する根拠はどこにあるのでしょうか。まったく使いものにならない、とは申しません。“おにぎり大の石ころ” も “かなづち”  の代わりになる程度の、あるいはそれよりは多少マシな使い方はあるかもしれません。

「Asprova解体新書」をお読みになる方々の参考にでもなれば幸いです。

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“米国の大学生向けの教科書”に書いてあること

「Asprova解体新書」から見えてきたAsprovaの致命的欠陥。それは、一般的な生産ラインでは、必ず起きる“待ち行列現象”を考慮に入れていないことではないか。と言いながらも、ちょっと、ひっかかるものがあります。13ページにある記述です。

米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。

著者は、米国では「生産スケジューラは絶対に無理」だと言われていることをご存知だったんですね。そして、さらに、

米国はその後、生産スケジューラの失敗の後遺症から立ち直っていない。しかし、現在のテクノロジーなら可能なのかもしれない。

と。

現在のテクノロジーなら可能なのかもしれない

著者はどんな可能性を思い浮かべているのでしょうか。この文脈から推察すると「米国の大学生向けの教科書的な本」に手がかりみたいなものが書いてあるのでは? どんなことが書いてあるのか、気になりだしました。実はこの本、心当たりがあるんです。たぶん、これしかないかな、と思う本が。

書名;FACTORY PHYSICS
著者;Wallace J. Hopp、Mark L. Spearman
出版社;Waveland Press,Inc.
Amazonでみる

B5サイズで700ページ。ぎっしり書いてあります。1990年、Northwestern大学のMaster of Management in Manufacturingで本格的に使い始めたようです。今回は、第15章 Production Scheduling(516p~552p)辺りにどんなことが書いてあるか、覗いてみましょう。

はじめに、少し、補足しておきます。第15章では、生産スケジューリングを生産方式、ジョブの流し方、人間の経験則などなど、様々な角度から多面的に捉えています。ここでは、コンピュータによる生産スケジューリングに的を絞って考察してみたいと思います。そのために、初めに、生産スケジューラ(コンピュータ)の機能、役割を確認しておきます。

生産スケジューラに期待される機能としては、
① 工場(企業)の利益向上のため、生産リードタイム、工程仕掛、稼働率などの最適なバランスを提示する →目標を達成する最適スケジュールの生成
② それを実現するための具体的なスケジュール(作業者・機械などの開始・完了時刻)を生成する →実行可能なスケジュールの生成

とします。


第15章の初めで、スケジューリング研究の歴史を振り返っています。本書から引用します(要約)。

実務としてのスケジューリングは生産と同じぐらい古いが、研究としては1900年代初めの科学的管理法の動きまでさかのぼる。しかしスケジューリング問題に本格的に取り組み始めたのは1950~1960年代にコンピュータが現れてからである。

MRP,MRPII,and ERPについての記述があります。

コンピュータが使われ始めたのはMRPあたりから。MRPの特徴は、

 1、リードタイムは部材に結び付けられ、生産現場の状態には無関係。生産能力は無限。
 2、過剰在庫より仕事遅れの防止を重視し、リードタイムはひとつ。そのため、リードタイムが長くなりやすい。投入を早めて、待ち行列が長くなり、サイクルタイムが長くなる。

MRPの単純なモデルでは有効な結果は出せないことがわかると、スケジューリングの研究者や実務者はMRPIIそしてさらにERPを志向するようになる。JITに傾く者もいた。しかしながら大部分のスケジューリング研究者は、オペレーションリサーチの領域で数理的体系化を目指した。

スケジューリングの数理問題を解く条件を次のように単純化しています。

1、すべてのジョブは問題の初めに準備ができている(すなわち、処理が始まる前にジョブは到着している)。
2、処理時間は決定している
3、処理時間はスケジュールの影響は受けない(つまり、段取りはない)
4、機械は絶対に故障しない
5、優先使用はなし(すなわち、一旦、ジョブ処理が始まったら、中断なく終わらなければならない)
6、ジョブのキャンセルはなし


現実は次のようになっています。

1、常に2台以上の機械がある。従って、生産リードタイムを最短にするジョンソンのアルゴリズムやその他の派生アルゴリズムは直接役に立たない。
2、処理時間や需要はバラツク。ランダムなバラツキは生産システムに多大な渋滞を生じさせる。これを無視すれば、スケジューリング理論は非現実的な動きをベースにすることになる。
3、課題の前提条件となるジョブの準備が整っていない。工場が稼働している間、新しいジョブは入り続ける。工場を“からっぽ”にしてから新しいジョブを始める、という条件などは現実的ではない。
4、処理時間は時には順序依存性がある。段取り回数はジョブの順序に依存する。似たような部分のあるジョブは段取りを共通にできるが似ていないジョブはできない。これはボトルネック工程のスケジューリングでは重要。


つまり、生産スケジューリングを生成する数理モデルの条件と現実の生産ラインの状態には、根本的な違いがある、ということです。最も重要な違いを2つ挙げておきます。

*処理時間のバラツキ
様々な要因で処理時間はバラツキます。ところが、生産スケジューラの条件では、「処理時間は決定」していますので、矛盾します。

*需要発生のバラツキ
工場には常に新しいオーダー(ジョブ)が入り続けます。予めどのようなジョブが来るかきめられませんが、生産スケジューラでは、「処理が始まる前にどのようなジョブを処理するかわかっている」という条件です。これも矛盾します。

この違いが生産スケジューリングの機能にどのような影響を与えるのか、考えてみます。

ひとつ目の「目標を達成する最適スケジュール」を生成することはできるかをみてみます。
数理的条件で考えてみます。機械1台で25種類のジョブを処理するとします。組み合わせは、25!。25の階乗です。エクセルで計算したら、
15,511,210,043,331,000,000,000,000
と出ました。すごい数ですね。ビックリマーク(!)の意味がわかります。スーパーコンピュータ富岳の計算スピードが41.5京回/秒 だそうです。チェックするプログラムってどんなのかわかりませんが、単純に割り算すると、433日かかることに、、。現実の工場には、機械は数台、数十台ありますので、数理モデルで最適解をもとめるのは、“不可能”ですね。(NP困難問題)

実際はさらに、“処理時間のバラツキ”と“需要発生のバラツキ”があります。仮に上記の計算が数日で済んだとしても、処理を実行するときは、条件が変わっていて、最適解の意味はまったくなくなってしまいます。

結論は次のようになります。
「生産スケジューラが目標達成のための最適スケジュールを生成することは“不可能”である」

次に、二つ目の機能について検討します。

実行可能なスケジュール

ひとつ目の「目標を達成する最適スケジュール」を生成することは不可能ですが、“まぁまぁ”のスケジュールを生成することはできます(後述)。問題は、それに従って実行できるかどうか。

ある時、工場で処理する「オーダー(ジョッブ)」とそれらの処理時間を決めます。その決められた数値でスケジュールが生成されます。現実は、新しいオーダーがランダムに入り続け、処理時間もバラツキます。“まぁまぁ”のスケジュールでも、できるだけ高い稼働率を狙います。すると、その工程では、処理時間の数倍の待ち時間が生じてしまいます。この待ち時間を挽回することはできません。累積され、後ろの工程になればなるほど、処理開始時刻がどんどん遅れることになります。

「スケジュールでは昨日の午前9:00から始めることになっていたジョブが今日の午後3:00にやっと着いた」、なんていうことが頻発することになります。

結論は次のようになります。
「実行可能なスケジュールを生成することはできない」
あるいは、
「生産スケジューラから出力されるスケジュールに従って作業を行うことはできない」

このような結論となるわけですが、Factory Physicsでは、これに対する解決策も提案しています。どんなものか、みてみます。

先ず、生産方式の改善で対処するアプローチはお馴染みです。例えば、「フォード生産方式」。コンベヤーに台車を等間隔に投入することで「需要発生のバラツキ」をなくします。生産車種はT型1車種、作業を分業してコンベヤーに沿って人を配置して「処理時間のバラツキ」をなくします。この考えを多車種生産に広げたのがトヨタ生産方式。ただ、トヨタ生産方式のようにバラツキがなくなると(小さくなると)、ジョブは等間隔(サイクルタイム)で流れてきますので、生産スケジューラが出力するような細かなスケジュールは不要になります。

その他、小さな改善も含めれば数え切れないほどの方式が提案されています。

では、「処理時間のバラツキ」も「需要発生のバラツキ」も扱えない生産スケジューラではどのような改善策があるのでしょうか。大きく2つあるようです。

ひとつ目は、「処理時間のバラツキ」や「需要発生のバラツキ」の少ない生産方式と生産スケジューラの組み合わせです。バラツキを扱えない生産スケジューラでもバラツキが小さくなれば、使える可能性は出てきます。第15章では“動的管理”としてCONWIPと生産スケジューラの組み合わせが紹介されています。

動的管理:システムの物理的特性を利用することで、リスケジューリングすることなく、需要や生産能力のランダムな変化に対応できる動的管理ができる。動的管理の一例は統計的スループット管理(STC)とフレキシブルなキャパシティバッファー(例えばシフトの追加)のあるCONWIPである。生産ラインの長期的生産量に影響のない小さなランダムなゆらぎがあっても一切、調整はしない。さらに、このようなシステムは、予定よりも生産能力が大きいときは“前倒し生産”となる。これを詳細なスケジュールで行うことは難しい。

もうひとつは、“ヒューリスティック(Heuristic)”。発見的という意味だそうですが、分かりにくいですね。試行錯誤とか経験則と言った方がわかりやすい。論理的ではなく、必ずしも“最適解”ではないが、まぁまぁの答えとなる、ということのようです。

実際、生産スケジューラがHeuristicを使っているのは“NP困難問題”に対しです。AsprovaではGreedy AlgorithmというHeuristicを使っているようです。

実行不可能なスケジュールでも現場作業監督者は作業者に指示を出さなければなりません。新参者にはできません。試行錯誤の経験則(Heuristic)が物言うところです。

しかし、問題としている「処理時間のバラツキ」と「需要発生のバラツキ」を固定値しか扱えない生産スケジューラで処理しなければならないという矛盾をHeuristicなアプローチで改善できるか、というと、答えは、明らかに“否”。

ということで、Factory Physicsが示す、スケジューリング問題に対する解決策は、すべて周辺(生産方式とか)の条件を変えるもので、2点の対立を解消するものではありません。

従って、Factory Physicsが示す生産スケジューラの機能についての結論は次のようになります。

「生産スケジューラが目標達成のための最適スケジュールを生成することは“不可能”である」
「実行可能なスケジュールを生成することはできない」


著者は「生産スケジューラは絶対に無理」の意味を理解しているのでしょうか、、。それは失礼ですね。ちゃんと理解してますよね。

と、すると、「現在のテクノロジーなら可能なのかもしれない」と宣う著者は、Factory Physicsも気が付いていない「生産スケジューラ・起死回生の秘策」を持っているのではないか。「Asprova解体新書」をもう一度、見直してみたいと思います。

DPM研究舎

「Asprova解体新書」から見えてくる致命的欠陥

生産スケジューラでスケジューリングしたらリードタイムが1/4になったという話
生産スケジュール本来の機能は使わずに、生産の準備とか、原材料の所要量計算とか、だけに使うという話

なんで、そういうことになっちゃうのか、納得できる説明はありません。生産スケジューラの機能の中に隠れているのかもしれません。どのようなデータを入れて、どのような結果が出るのか、基本的なところを確認しておきます。

登録しておく製造BOMなどの「マスタデータ」は次のような事項です。
*品目(コード、種別)
*製造BOM(品目、工程番号、工程コード、指図コード、品目/資源、前段取り、製造時間)
*資源(機械、人員など)
*シフト(稼働時間のパターン)
*カレンダ

オーダに関連するオーダーコード、品目、納期、数量、優先度など入力します。

出力される項目は次のような内容です。
*作業テーブル(コード、品目、数量、資源、製造開始日時、終了日時、製造時間)
*資源ガントチャート
*オーダガントチャート

マスタデータに登録するコードとか工程番号などのデータはすべて確定値というか、固定値というか、そういうものです。現実と合わなければ修正しなければなりません。マスタデータが間違っていれば、結果も間違いを含んだものになります。当たり前の話なんですが、、。

ここで注目しておきたいのは製造BOMの中の“製造時間”です。製造時間って、バラツキますよね。まったく同じ品目でも、ある時は50分、別のときは65分とか、、。マスタには一つの固定値しか入れられませんので、“平均+バラツキ分” で設定するんでしょうか。固定値は固定値ですがね、、。

現実は、“製造時間”はバラツキます。製造時間がバラツクとどうなるんでしょうね。

このBlogでは、何度か、取り上げているテーマなので、繰返しになる部分もあると思いますが、生産スケジュールとの関係を気にしながら、簡単にレビューしておきます。

生産工程に影響を及ぼすバラツキは、大きく分けて、2種類あります。
①オーダの到着時間間隔(投入時間間隔)
②工程での処理時間(製造時間、作業時間、、)

わかりやすいように、ひとつの工程に注目します。注文はランダムに来ます。工程の処理能力には限界があります。例えば、工程の平均処理能力は1時間に6個としましょうか。平均の処理時間は10分ですが、オーダごとにはバラバラです。あるものは6分、別のオーダは13分というように。1時間に平均6個の処理能力があるところに、1時間に5個のオーダがあったとすれば、工程の稼働率は5÷6=0.83 で83%ということになります。

オーダはランダムに来ますので、その時、工程がビジーであれば、その処理が終わってから、新しいオーダの処理をすることになります。その時、そのオーダは待つことになります。どのぐらいの時間、待たなければならないのかの計算式があります。但し、これは、オーダ到着時間間隔も処理時間も指数分布に従うときです。

平均待ち時間=(平均処理時間)∙(稼働率/(1-稼働率))

平均処理時間;10分、稼働率;0.83で計算しますと、平均待ち時間は50分となります。オーダ到着時間間隔も処理時間も指数分布というのは、めいっぱいバラツク状態ですので、実際は、そんなにバラツキは大きくはないと思いますが、決して、無視できないことだけは確かです。

この待ち行列現象の厄介なところは、稼働率が高くなると急激に待ち時間が長くなるという特性です。生産スケジューラでは稼働率はできるだけ高くなるようスケジューリングしますので、考慮しなければならない重要な現象です。

Asprovaに戻ります。BOMの“製造時間”に入れることができるのは、“固定値”だけです。“確率変数”を入力することはできません。スケジューリングのロジックも固定値しか扱えないようになっています。

つまり、Asprovaは“待ち行列現象”による待ち時間をまったく考慮に入れていないことになります。

生産スケジューラでスケジューリングしたらリードタイムが1/4になったという話
を振り返ってみましょう。数値を入れて、ザックリと計算してみましょうか。40工程で生産リードタイムを40日(2カ月)としてみましょう。生産スケジューラでスケジュールすると、リードタイムは10日(2週間)になる、ということですね。

計算を簡単にするため、工程の作業時間をすべて同じとします。40工程で40日かかりますので、1工程は1日。1日は8時間とします。一方、生産スケジュールの結果は、40工程で10日ですので、1日に4工程、1工程は2時間、となります。生産スケジューラは待ち行列現象による待ち時間を無視していますので、それを加えたらどうなるか、大雑把な計算をしてみます。

各工程の稼働率を75%としてみます。前記の式に代入して計算してみます。平均待ち時間は次のようになります。

平均待ち時間=2(時間)×(0.75/(1-0.75))=6(時間)

処理時間;2時間に待ち時間;6時間を加えると8時間。現状に合いますね。

実際そうなるかどうかはわかりませんが、待ち行列現象の影響をザックリと感じることはできるかと思います。

生産スケジュール本来の機能は使わずに、生産の準備とか、原材料の所要量計算とか、だけに使うという話
はどうでしょうか。

生産スケジューラでスケジュールすると、投入時間間隔と製造時間のバラツキによる待ち時間が考慮されていませんので、作業開始時刻は早めにセッティングされてしまいます。早めにセッティングされた時刻に間に合うように原材料や生産の準備をしますので、問題は生じないでしょうね。さらに、製造時間の時間単位と原材料や生産準備の時間単位の違いもあると思います。多いのは、前者は“分”、後者は“日”。“日”は安全側にまるめられますので、さらに早くなります。

作業指示には使わないで、原材料や生産準備の予定にだけ使うのであれば、生産スケジューラなんて、使わなくてもいいんじゃないのかな。あれもできます、これもできますって、機能満載の生産スケジューラ。秒単位で作業指示が出せます、と言っていますが、“そんなの、かんけいねぇ”となりませんか。

「Asprova解体新書」から、Asprovaが抱える致命的欠陥がみえてきました。これはAsprovaだけの問題なのか、どの生産スケジューラにも共通して言えることなのか、、。

DPM研究舎