フェイクニュース;「モラルの低下」と「知の劣化」

ここ数年、フェイクニュースという言葉を頻繁に見聞きするようになりました。トランプ大統領のツイートあたりからですかね。もちろん背景にあるのはインターネットの普及。誰でもが気軽に情報発信・拡散できるようになったことが大きく影響しているのでしょう。真意不確かな情報が世界を飛び回っています。

そして、ウクライナ戦争。ロシア発の情報。どうみてもフェイクニュース満載のプロパガンダ。国連の安全保障理事会常任理事国のロシアが発信する情報であることを考えると、この世の終わりか、とさえ思えてきます。

フェイクニュースとは、ザックリと言えば、

「事実とは異なることが真実のように伝えられる情報」

という感じ、、かな。

情報はある点から発信され、ある点で受信されます。ひとつの発信点に対して受信点は複数あるのが一般的です。受信した情報の処理をどうするか、送るのか送らないのか、送るとすればどこに、誰に送るか、、、。

情報を発信する、あるいは、受け取った情報を拡散するのは、人間の“意思”が関係しているのではないか。今流に言えば“AI”もかかわってきそうですが、ここでは簡単に“人間の意志”に注目してみたいと思います。

どんな意思かといいますと、例えば、

・世論を操作したい

・アクセス数を増やしたい

・センセーショナルで面白いから

・・・

他にもいろいろありそうですが、大きく2種類の人がいるのではないか。

ひとつは、その情報が“フェイク”であると知っている人、

もうひとつは、その情報は“事実”であると信じている人、

もちろん、半信半疑という人もいるでしょう。

“フェイク”だと知って情報を発信・拡散する人には悪意があり(悪人であり)、

“事実”だと信じて情報を発信・拡散する人には善意がある(善人である)。

少々、乱暴な分類ですが、そんな感じがします。但し、これが宗教・哲学・思想・政治・・・等の話になると、途端にややこしくなりますので、深入りしないことにします。

ここまではイントロです。

主題は、華麗な宣伝メッセージを発信するAPS/生産スケジューラ・ベンダー、そしてAPS/生産スケジューラを応援するコンサルタント、SEエンジニア、大学の教授陣は悪人なのか善人なのか、、という話。

APS/生産スケジューラ・ベンダーもコンサルタントも、SEエンジニアも大学教授も、みんな、“APS/生産スケジューラは万能である”と信じている方々ですから“善人”ですよね。世の中の生産管理にまつわる諸問題を解決し、日本製造業復活に寄与したいと崇高な目標に向かって日夜努力している紛れもない“善人”。

現実はどうか、といいますと、生産スケジューラで生成したスケジュールに従って生産活動を行うことは、ほぼ、不可能。ほぼ、といったのは、限られた限定的な条件では実行可能ですので、、でも、、10件に1件もないでしょうね。適用できる工程も部分的、期間も短期間、、、。

生産現場には改善魂に満ちた生産スケジューラ信奉者もおりますが、生産スケジューラをうまく使いこなせない経験のある人、まったく使い物にならないと思っている人もいます。前者(生産スケジューラ信奉者)は“善人”の言うことを信じ、同意し、肯定的でしょうが、後者は否定的でしょう。この二分化はこの20年~30年、ズーっと続いています。

APS/生産スケジューラを押す専門家集団(“善人”)は、生産現場で生産スケジューラが使えないのは、「使い方が悪いから」だとか、「管理のやり方に問題があるから」だ、と理路整然と生産スケジューラのロジックをまくしたてます。

生産現場で働くAPS/生産スケジューラ信奉者は、“善人”の説明は自分に都合が良いためか、簡単に受け入れます。しかし、否定的な人は納得できません。納得できないと言っても、“善人”の説明のどこが間違っているのか、指摘することはできず。自分たちの経験と異なるから、というのが主な理由のようです。

APS/生産スケジューラが、生産現場で使いものにならない理由についてふれられている説明は、どこにも見当たりません。

その理由って、実は、すごく単純なんですがねぇ~。

“待ち時間”の説明がないんです。

“待ち時間”とは、ワーク(被処理物)が工程での処理を“待つ時間”です。

もちろん、生産スケジューラの生成するスケジューリングではワークが工程で待つ時間が正確に表示されます。例えば、ある工程で処理が終了する時刻は9:10、前のワークが次工程での処理が終わるのが9:15だとすれば、5分間の待ち時間が発生します。各工程ごとにすべてのワークの待ち時間がわかります。生産スケジューラは秒単位で正確にスケジューリングできる、という宣伝文句に嘘はありません。問題は、このスケジュールが実行可能か、どうか、、。

これが実行できるかどうか、というと、話はまったく変わってきます。

実際の待ち時間は、スケジュール通りにはなりません。バラツキがあるからです。

バラツキなら統計理論で説明できるのでは? 分散の加法性を利用して、、。

ところが、生産工程を流れるワークの待ち時間は統計理論ではうまく処理できません。待ち時間の平均はなんとか計算できます。・・が、確率分布を計算することができません。ザックリと言えば、山のないだだっ広い分布形状です。これだと統計理論を利用することはできない。

この現象は“待ち行列理論”で詳しく解説されていますのでご参照ください。

“待ち行列現象による待ち時間”は、平均で処理時間の数倍、数十倍に、バラツキは低くだだっ広い台形状なりますので、多くの場合、生産スケジューラが生成したスケジュールとはかけ離れた時刻に作業開始することになります。これが生産スケジューラの生成したスケジューラは実行がほぼ不可能だ、という根拠です。

APS/生産スケジューラ・ベンダーもコンサルタントも、SEエンジニアも大学教授も、誰一人としてこの“待ち行列現象による待ち時間”について言及する方はおりません。APS/生産スケジューラを支援するこのような方々を“善人”としてきましたが、ちょっと、違いそうですね。

“待ち行列理論”って、100年も前に知られていましたので、APS/生産スケジューラ・ベンダーもコンサルタントも、SEエンジニアも大学教授も、知らない、ということはないと思います。スーパーマーケットのレジで起きる待ち行列、ディズニーのアトラクションに並ぶ人の行列、昼休みのATM前の人の行列・・・どれも日常見かけることの多い待ち行列現象ですからね。

生産ラインは専門家諸氏にとって“土俵”ですよ。そこで“待ち行列現象”が起きていることに気付いていないのでしょうか。APS/生産スケジューラの万能ぶりを、持論を振りかざして支援する専門家たちよ、、。日本製造業の低迷を支えていることにはなっていませんか?

APS/生産スケジューラに関する情報って、“フェイクニュース”じゃないの?・・とふと思ったことをきっかけに、つらつらと書いてきました。

「事実とは異なることが真実のように伝えられる情報」がフェイクニュースだとしたら、APS/生産スケジューラに関する情報もフェイクニュースといえるかもしれません。しかし、フェイクと知って情報を拡散する“悪人”ではなく、良かれと思って宣伝する“善人”が主役のフェイクニュース。

どちらのフェイクニュースも困ったものですが、前者を“モラルの低下”、後者を“知の劣化”としたら、後者の方がより深刻なのではないでしょうか。

欧米では既に、20数年前に気が付いていたこと。日本では、いまだに“知の劣化”の進行が止まらないようです、、。

失われた10年が20年に、そして30年に・・・、、。“知の劣化”を食い止めることが焦眉の急ではないでしょうか・・・

DPM研究舎; https://www.tocken.com/