警鐘乱打が聞こえますか?

現在の生産管理・工場管理の問題として「ERPや生産スケジューラが動かない」とIVI理事長の西岡靖之氏は指摘します。この問題をそのままにしてDXは乗り切れるんでしょうか、という疑問が湧いてきます。西岡氏は「日本の強みである“現場力”をスマートシンキングで“つなぐ”」ことで乗り切れる、と期待しているようです。

IVIが設立されたのが2015年6月。もう6年半が経過します(2022年1月現在)。「スマートシンキングで進める工場変革」の巻末にある資料をみますと、2015年~2020年の業務シナリオ実証テーマは合計120件。その成果についての説明はありませんが、西岡氏の説明(2022年1月10日のメール)では、

ERPや生産スケジューラが動かないという問題は、複合的でありそれぞれの状況に応じていろいろな課題があるとおもいますので、そう簡単に解決できるとはおもっていませんが、スマートシンキングの手法がそのひとつの助けになればとおもいます。いずれにしてもこれからの取り組みですので、まだこれといった成果があるというわけではありません

6年以上経過しても「これといった成果はなし」。

テーマをみれば、各企業が抱える個別テーマが多く、「日本の強みである“現場力”をスマートシンキングで“つなぐ”」ことに関連したテーマはちらほら。「ERPやスケジューラが動かない」という問題にチャレンジするテーマは見当りません。成果が出るわけはありません。

成果らしきことといえば、先月(2021年12月)西岡氏が出版した書(「スマートシンキングで進める工場変革」)ぐらいかな。中身のポイントは3つぐらいあって、
・「ERPやスケジューラが動かない」という問題、
・スマートシンキングで“つなぐ”という手法、
・120件の具体的テーマ。

これらの間に“つながり”がほとんどみあたらない。チグハグというか、バラバラというか、まとまりのない感じがします。

IVIって、Websiteをみると、広報活動は活発なようです。書の出版も広報活動の一環?。でも、裏目に出ているんじゃないでしょうか。

5年後、10年後、、IVIから何らかの成果が出る可能性は限りなく“ゼロ”、でしょうね。何年たっても、、、。

なんでこんな組織が平然と存在しているのか、の方が不思議なんですが、その背後に「日本の製造業が危機的状態に陥った」病根が隠されているように思います。

このBlogでも関連する事象をいくつか取り上げました。「生産スケジューラが動かない」って言ってんのに、AsprovaやFlexscheなどのスケジューラベンダーは、見込生産、受注生産なんでもゴザレ、秒単位で最適スケジュールを組めます、リスケジュールで変動に即座に対応できます、、、と万能ぶりを。これって、虚偽広告じゃないでしょうか。

薬だったら、、大問題になりますよ。薬事法違反とか、、で。

Asprovaの会長、高橋邦芳氏は「Asprova解体新書」なんていう本を出して、拡販に一生懸命です。この書の13ページに、こんな説明があります。
米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。その理由として、マスターデータの作成と維持が困難であることを上げている。ゴールドラットが挫折したのも、マスターデータが理由だったのだろうか。マスターデータとはそんなに怖いものなのか。米国はその後、生産スケジューラの失敗の後遺症から立ち直っていない。しかし、現在のテクノロジーなら可能なのかもしれない。

「スケジューラが動かない」のはマスターデータが原因だ。我が社ならその問題を解決できるのだ、といいたいのでしょうか。

米国の生産スケジューラベンダーは2000年代後半(リーマンショック頃)には、そのほとんどが姿を消しましたが、それを逆手に取った、きわどい自社宣伝。マスターデータの作成・維持困難を理由に挙げて、我が社なら解決できるとほのめかす。背後にある根源的な原因には気が付いていないようです。米国が生産スケジューラ失敗の後遺症から立ち直っていない、のではなく、Asprovaが生産ラインの基本特性を正しく理解していないだけ。もしも、生産スケジューラが動かない原因をわかっていてAsprovaの万能ぶりを宣伝しているとしたら、虚偽広告となりますからね。知らないということで悪者にならずに済んでいる、、。

Flexscheの創業者 浦野幹夫氏も、メールで意見交換しましたが、理解している様子はありませんでした。

生産システム・業務改善コンサルタント、本間峰一氏の「製造時間でなく待ち時間を短縮しよう」というコラム。生産リードタイムは製造時間が20%、滞留時間(待ち時間)が80%、だから生産リードタイムを短縮するには滞留時間を短くするのが効果的、という話。私も同感でしたので、どのようにして滞留時間を短くするのか、聞いてみました。

詳細は、下記の私のBlogを参照ください。
業務改善コンサルタントの手法 
現場改善コンサルの規範;指示通りにやれ! 
生産ラインの基本特性も理解しないで、、 

本間氏の改善手法は先ず、リードタイム分析を行い、異常な滞留時間の原因を突き止めるんだそうで。原因の多くは、
・実績データの入力漏れやミスが放置されていた
・別のオーダ番号の伝票を先に処理していた
・納期に余裕のある製造指示書が放置され忘れられていた
・・・・・・詳細は、こちら

と、人為的ミスが大部分。管理レベルが低いからだ、と。異常値がなくなったら待ち時間の平均を下げる対策に進む、という手順とのこと。

一般的な改善手順としてはいいんですが、こと、待ち時間に対しては、このアプローチ、まったく効果なし。彼も待ち時間のメカニズムが理解できていないために、効果の出ない方法で顧客企業の指導を行っているんですね。

そういえば、ずいぶん前(2014年7月)のことですが、本間峰一氏が代表幹事を務める東京都中小企業診断士協会、中央支部、生産革新フォーラム で話をさせていただいたことがあります。私が伝えたかったことは生産ラインの待ち時間に関する特性でした。

参加者の反応は本間峰一氏も含めて“イマイチ”でした。が、おひとり、理解していただけたかな、という方がおりました。佐藤知一氏です。彼は「革新的生産スケジューリング入門」など多数の著書があります。

理解していただけたかなと感じたのは、数日後にアップされた 稼働率100%をねらってはいけない と題する彼のBlogでした。「待ち行列理論」を持ち出して、バラツキが避けられない生産環境では、稼働率を高くすると仕掛が増える、と解説。彼の情報発信力に期待して生産ラインの待ち時間のメカニズムに対する認識が広まれば、と願いつつ、、。

その後、彼の発信する情報を時々チェックしておりましたが、期待した待ち時間に関しての発信はありませんでした。どんな様子かと思い、2020年2月ごろ、メールで意見交換してみました。かみ合わないところがありました。象徴的な一節は、

・生産スケジューラは需要変動による待ち行列の発生を予測できないから、使えない
・生産スケジューラは固定時間しか扱えないから、作業時間が変動する現場には使えない
というご主張なら、いずれも反証がありますので同意しかねます。


と、やっぱり、おわかりになっていなかった。どんな反証をするのか、興味はあったのですが、彼の思考の間違い箇所がわかったので意見交換はおしまいにしました。

佐藤知一氏の思い違いとはどこにあるか。メールの中で、彼はバラツキがあっても、実用上は使えると再三主張しました。多分、彼の仕事はプロジェクト管理が多いんでしょう。その経験で裏打ちされたことなので、「反証」に自信をもっていたのだろうと察します。

これが落とし穴なんですね。プロジェクトと生産ラインでは待ち時間の発生メカニズムが大きく異なるんです。

詳しくは下記のBlogをご覧ください。
生産スケジューラとプロジェクト管理スケジューラは何が違うのか 
待ち行列現象の待ち時間の特徴

簡単に言いますと、
プロジェクト管理では、待ち時間も含めて、バラツキ(分散)を統計理論で予測できるが、生産ラインでは、待ち時間の平均はある程度計算できても、分散を予測する数理モデルがみつかっていない、
ということです。

彼の著した「革新的生産スケジューリング入門」にもプロジェクトと生産ラインの待ち時間の違いについての言及はまったくありません。

マイクロソフトがプロジェクト管理ソフトは出していますが、生産スケジューラは出していない理由は、、おわかりですよね。

まとめますと、
*生産スケジューラベンダーは、スケジューラは万能だと主張する
*現場改善コンサルタントは、異常に長い待ち時間の原因を人為的ミスだとする
*生産ラインもプロジェクトと同じように管理できると考える
*現場力をつなげてDXを乗り切ろうとする

これらはどれも大間違いです。多方面に深刻な悪影響を及ぼしている重大な過失です。生産スケジューラベンダー、生産システム・改善コンサルタント、オピニオンリーダそして大学教授に産業界・学会、、が歩調を合わせて間違った道を歩んでいます。さらに悲劇的なことは、これが問題であることを指摘する声が聞こえないことです。

お気付きの方がおりましたら、ぜひ、声を上げ、警鐘を乱打してください。日本の製造業救済のために。

原因は、ひとつ。生産ラインでの“待ち時間の特性”を理解していないこと。欧米では、専門家の間で、20年も前に知られていたことです。それに気が付けば「危機的状態にある日本の製造業」を救うきっかけをつかめるかもしれません。

DPM研究舎

スマートシンキングでDXを乗り切るつもりですか?

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)って、どんな組織なんでしょうね。

「ものづくりAPS推進機構」の解散と関係があるんでしょうか。解散した理由は書いてありません。Websiteをみると「APSサミットシンポジウム」も2018年を最後に開催されていないようです。ただ講演は2021年3月、解散する月まで行われていた、、。

目指した目標が達成されたので“解散”する、という場合もありますが、「ものづくりAPS推進機構」の解散は、最近の活動状況からみると、そのような理由ではないことは確かでしょう。まぁ、俗に言えば、目標達成の見込みが立たなくなり頓挫した、ということ?

「PSLXコンソーシアム」はIVIに引き継がれていますが、「ものづくりAPS推進機構」は解散。引き継ぐ価値もなし? じゃ、IVIって、どんな組織?

母体は、日本機械学会生産システム部門の中にある研究分科会
“インターネットを活用した「つながる工場」における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会”
という、長ったらしい名前の分科会。2014年9月設立、2016年2月終了。主査は西岡靖之氏(法政大学)。

そしてIVIの設立が2015年6月。理事長は西岡靖之氏。あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」を製造業に活用し、大幅に生産効率を上げようとするドイツや米国の動き、が設立の背景。そしてIVIのねらいは、
“製造プロセスイノベーションを行い、日本的な「つながる工場」を実現する”
だそうで、、。

そういえば、「PSLXコンソーシアム」も「ものづくりAPS推進機構」も“つながる”をテーマにしていました。なるほど、“つながる”をキーワードに“つながってん”だ。ガッテン、しました、、。ぬぬっ! つなぐ人影が、、西岡靖之氏、、。PSLXもAPS推進機構も、そしてIVIも先導役は西岡靖之氏。西岡靖之氏=“つながる”かぁ~、、。

2021年12月、「スマートシンキングで進める工場変革」という本が出版されました。著者は“つながる”人、西岡靖之氏。

この本を読めばIVIの狙いや活動状況がわかるんじゃないかと思い、早速注文。

私の関心事は、生産スケジューラに見切りをつけた欧米に対して、日本はどのような方向に向かうのか、です。PSLXやAPS推進機構が掲げたバラ色の世界は、その片鱗さえもいまだ見えません。日本独自のスケジューリング技術で生き残りを図るのか、対抗する新しい方向性を示すのか、あるいは欧米に追従するのか、、。

書を読み進めて14ページ。現状の問題が列記されています。
・ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた
・スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった
・最新鋭の設備を導入したが、スループットが上がらない
・進捗管理システムはあるのに現場がデータを入力しない


続いて、現状を説明しています。文章をそのまま引用するのではなく、その内容を図1に因果関係でまとめてみました。文言は多少加筆していますが大部分は原文のまま。矢印の矢尻が原因、矢先が結果。楕円がAND、楕円なしがOR。


図1 現状の説明

図2にスマートシンキングの目的みたいのを対立図で示してあります。図中Aは共通目標、B,Cは重要な必要性、DとD‘は行動や方法で互いに対立する。「属人的にITを利用する」と「社内・社外とITでつながる」ことを阻害する。「社内・社外とITでつながる」と「属人的にITを利用する」ことを妨げる。対立の背後には「企業ノウハウ・機密情報を保護する」必要があるから。・・・で、解決の方向性は「“ゆるやかな標準”云々・・・」。


図2 スマートシンキングの目標

「ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた」、「スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった」という現状問題を「“ゆるやかな標準”云々・・・」というスマートシンキングで達成する、ということだろうか?

早速、西岡氏にメールで聞いてみました。こんな返事が返ってきました。
ERPや生産スケジューラが動かないという問題は、複合的でありそれぞれの状況に応じていろいろな課題があるとおもいますので、そう簡単に解決できるとはおもっていませんが、スマートシンキングの手法がそのひとつの助けになればとおもいます。

「ERPや生産スケジューラが動かないという問題は、・・・そう簡単に解決できるとはおもっていません」と吐露し、「ひとつの助けになれば」と控えめ。このスマートシンキングで、いまだ実現には程遠いPSLXやAPS推進機構の目標達成を意識している様子はありません。

つまり、「ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた」、「スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった」という問題は放置したまま、スマートシンキングで「つなぐ」ことでDXの波を乗り切ろうということなんでしょうか。

書はスマートシンキングについて詳しく書いてあります。しかしこの手のシンキングメソッドは昔からたくさんあります。古くはKJ法、、最近ではクリティカルシンキング、ロジカルシンキング、システムシンキング・・・と。サラッと読んだ限りでは、特に目を引くものもなく、問題解決というよりは、使えても“現状まとめ”程度かな、という感じです。とても、とても「ERPやスケジューラが動かない」問題を解けるとは思えません。

筆者はスマートシンキングがDXを乗り切る“切り札”だ、と本気で思っているわけではないようです。かと言って「スケジューラが動かない」という重大な問題を20年間も放り投げておきながら、それを解決しようとする意思もなし。せめて、問題の原因追及の素振りぐらいは見せておかないと“無責任”のレッテルを貼られますよ。

役立ちそうにないスマートシンキングとかで、しかも、合わせた照準はドハズレ。これでDXを乗り切ろうとする西岡氏率いるIVI。「危機的状態にある日本の製造業」を象徴しているようにみえます。

DPM研究舎

日米の生産スケジューラの動きを振り返る

ここ2回ほど、ちょっと堅苦しい内容になってしまいました。「日本のものづくりが危機状態にある原因は何か」、というテーマに戻りたいと思います。

みなさんは、「PSLXコンソーシアム」をご存知でしょうか? https://pslx.org/index.html 
この組織って、どんなのか、Websiteを覗いてみました。

[設立の動機]
・日本の生産の仕組みにあった日本発のスタンダードを確立する
・APSという新しい技術を実際に普及させ、旧来の仕組みを置き換える

[組織の発足のきっかけとなったAPS(Advanced Planning and Scheduling)]は、
・現在の製造業の管理のしくみを、根本的に変革する技術である

[コンソーシアムの目的]
本会は、生産計画・スケジューリングに関する情報記述の標準化と、それを利用した製造業のより戦略的なIT化の推進を行い、その結果、わが国の製造業がもつ世界最高水準の生産管理技術を、IT産業と製造業と学術研究機関とが協力しながら、ものづくりの技術と情報技術とが融合した“製造IT”として、今後さらに国際競争力のあるものへ進歩・発展させていくことを目的とする。

PSLXの標準規約の策定が進み、それを普及させるために、2007年、特定非営利活動法人「ものづくりAPS推進機構」が設立されました。http://apsom.org/

設立趣旨書をみてみますと、
2001年に任意団体「PSLX コンソーシアム」を設立し、・・・日本発の APSを提案してきました。・・・そしてさらに、2006年に入り、・・・より現実的で効果的な仕様を完成させました。

これまでの活動を通して、・・・APSを核とする製造業の現場と経営部門が一体となった意思決定のしくみを・・・企業の枠を超えたネットワークによって全体に普及させていく・・・必要があるという結論に至りました。

以上のような経緯から、いままでの活動を、これから特定非営利活動法人として行うことで、より社会に対して責任ある組織活動として発展させ、・・・技術や知識を広く一般市民で共有化することで、豊かで充実した社会づくりに寄与するために、特定非営利活動法人「ものづくり APS 推進機構」を設立します。

そして2021年3月に、「ものづくり APS 推進機構」は解散し、PSLXコンソーシアムは一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)へ移管されました。IVIってどんな団体なの?、と気になりますが、それは後回しにして、「ものづくり APS 推進機構」が解散した背景、理由などを探ってみたいと思います。

日本では、
2000年代初め、生産スケジューリングに関する書が相次いで発刊されました。
2000年4月、「革新的生産スケジューリング入門」佐藤知一著
2001年5月、「ザ・ゴール」邦訳 ゴールドラット著
2001年12月、「APS 先進的スケジューリングで生産の全体最適を目指せ!」西岡靖之著
(「ザ・ゴール」が生産スケジューリングとどんな関係にあるのか、については後述する)

そして「PSLXコンソーシアム」の発足が2001年7月、発起人は西岡靖之氏(法政大学教授)。こうみてみると2001年あたりが日本の“APS/生産スケジューラ元年”、という感じがします。PSLX標準規約の策定が進み、次に普及活動のため「ものづくり APS 推進機構」が設立されたのが2007年。設立代表者が西岡靖之氏。

そして、2021年3月、「ものづくり APS 推進機構」は解散。「PSLXコンソーシアム」は一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)https://iv-i.org へ移管。IVIの理事長が西岡靖之氏。PSLX、APS推進機構、IVIと常に主役は西岡靖之氏です。

米国ではどのような動きがあったのか、歴史的背景をザット、振り返ってみたいと思います。

大量生産時代に入り、生産管理にコンピュータが利用されるようになりました。必要な部品数や資材を算出するMRP (Material Requirements Planning;資材所要計画)が出現し、それに時間計画要素を加えたMRPⅡへと発展していきます。

多品種化するに伴いMRPの時間粒度(タイムバケット)の粗さが目立ち、うまく使えないケースが目立つようになってきました。そんな時(1984年)、「The Goal」が出版されます。それがきっかけにボトルネック工程だけをスケジューリングすれば良いというDBR(Drum Buffer Rope)が注目を浴びるようになります。


生産スケジューラをさらに進化させたAPS(Advanced Planning and Scheduling)という考えが出てきたのが1990年頃。

そして、視点の異なる動きも始まります。1990年からNorthwestern UniversityでMaster of Manufacturing programが始まり、生産ラインを物理現象的視点で捉えなおすFactory Physicsが取り入れられました。

一時脚光を浴びたDBRですが、1990年の後半、スケジューリングを廃止したS-DBR(Simplified DBR)に後退。DBR対応スケジューラと喧伝していた生産スケジューラベンダーも2000年に入り減り始め、2000年代後半にはほとんど姿を消しました。

生産スケジューラベンダーが姿を消した背景にはDBRスケジューリングの失敗やFactory Physicsの影響があるように思います。

一方、日本では2000年~2001年にかけて、「ザ・ゴール」の邦訳版や生産スケジューラ、APSに関連する書が相次いで出版されました。新規参入スケジューラベンダーが増え、一般のソフトパッケージベンダーの中にも生産スケジューラを取り扱う企業が一気に増えました。その勢いは今でも続いているように思います。それを支えてきたのが「PSLXコンソーシアム」であり、「ものづくりAPS推進機構」でした。

米国での生産スケジューラの衰退は日本にも影響を及ぼすのは必然です。米国から遅れること十数年、「ものづくりAPS推進機構」の解散はその表れかも知れません。これがそのまま、日本の生産スケジューラ市場の衰退につながるのか。それとも、日本独自のスケジューリング技術で生き残るのか。

「PSLXコンソーシアム」を引き継いだIVIの動きをみればわかるかもしれません。

DPM研究舎