スマートシンキングでDXを乗り切るつもりですか?

インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)って、どんな組織なんでしょうね。

「ものづくりAPS推進機構」の解散と関係があるんでしょうか。解散した理由は書いてありません。Websiteをみると「APSサミットシンポジウム」も2018年を最後に開催されていないようです。ただ講演は2021年3月、解散する月まで行われていた、、。

目指した目標が達成されたので“解散”する、という場合もありますが、「ものづくりAPS推進機構」の解散は、最近の活動状況からみると、そのような理由ではないことは確かでしょう。まぁ、俗に言えば、目標達成の見込みが立たなくなり頓挫した、ということ?

「PSLXコンソーシアム」はIVIに引き継がれていますが、「ものづくりAPS推進機構」は解散。引き継ぐ価値もなし? じゃ、IVIって、どんな組織?

母体は、日本機械学会生産システム部門の中にある研究分科会
“インターネットを活用した「つながる工場」における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会”
という、長ったらしい名前の分科会。2014年9月設立、2016年2月終了。主査は西岡靖之氏(法政大学)。

そしてIVIの設立が2015年6月。理事長は西岡靖之氏。あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」を製造業に活用し、大幅に生産効率を上げようとするドイツや米国の動き、が設立の背景。そしてIVIのねらいは、
“製造プロセスイノベーションを行い、日本的な「つながる工場」を実現する”
だそうで、、。

そういえば、「PSLXコンソーシアム」も「ものづくりAPS推進機構」も“つながる”をテーマにしていました。なるほど、“つながる”をキーワードに“つながってん”だ。ガッテン、しました、、。ぬぬっ! つなぐ人影が、、西岡靖之氏、、。PSLXもAPS推進機構も、そしてIVIも先導役は西岡靖之氏。西岡靖之氏=“つながる”かぁ~、、。

2021年12月、「スマートシンキングで進める工場変革」という本が出版されました。著者は“つながる”人、西岡靖之氏。

この本を読めばIVIの狙いや活動状況がわかるんじゃないかと思い、早速注文。

私の関心事は、生産スケジューラに見切りをつけた欧米に対して、日本はどのような方向に向かうのか、です。PSLXやAPS推進機構が掲げたバラ色の世界は、その片鱗さえもいまだ見えません。日本独自のスケジューリング技術で生き残りを図るのか、対抗する新しい方向性を示すのか、あるいは欧米に追従するのか、、。

書を読み進めて14ページ。現状の問題が列記されています。
・ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた
・スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった
・最新鋭の設備を導入したが、スループットが上がらない
・進捗管理システムはあるのに現場がデータを入力しない


続いて、現状を説明しています。文章をそのまま引用するのではなく、その内容を図1に因果関係でまとめてみました。文言は多少加筆していますが大部分は原文のまま。矢印の矢尻が原因、矢先が結果。楕円がAND、楕円なしがOR。


図1 現状の説明

図2にスマートシンキングの目的みたいのを対立図で示してあります。図中Aは共通目標、B,Cは重要な必要性、DとD‘は行動や方法で互いに対立する。「属人的にITを利用する」と「社内・社外とITでつながる」ことを阻害する。「社内・社外とITでつながる」と「属人的にITを利用する」ことを妨げる。対立の背後には「企業ノウハウ・機密情報を保護する」必要があるから。・・・で、解決の方向性は「“ゆるやかな標準”云々・・・」。


図2 スマートシンキングの目標

「ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた」、「スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった」という現状問題を「“ゆるやかな標準”云々・・・」というスマートシンキングで達成する、ということだろうか?

早速、西岡氏にメールで聞いてみました。こんな返事が返ってきました。
ERPや生産スケジューラが動かないという問題は、複合的でありそれぞれの状況に応じていろいろな課題があるとおもいますので、そう簡単に解決できるとはおもっていませんが、スマートシンキングの手法がそのひとつの助けになればとおもいます。

「ERPや生産スケジューラが動かないという問題は、・・・そう簡単に解決できるとはおもっていません」と吐露し、「ひとつの助けになれば」と控えめ。このスマートシンキングで、いまだ実現には程遠いPSLXやAPS推進機構の目標達成を意識している様子はありません。

つまり、「ERPを導入したらかえって手間が増え、在庫も増えた」、「スケジューラを導入したが1年後には使われなくなった」という問題は放置したまま、スマートシンキングで「つなぐ」ことでDXの波を乗り切ろうということなんでしょうか。

書はスマートシンキングについて詳しく書いてあります。しかしこの手のシンキングメソッドは昔からたくさんあります。古くはKJ法、、最近ではクリティカルシンキング、ロジカルシンキング、システムシンキング・・・と。サラッと読んだ限りでは、特に目を引くものもなく、問題解決というよりは、使えても“現状まとめ”程度かな、という感じです。とても、とても「ERPやスケジューラが動かない」問題を解けるとは思えません。

筆者はスマートシンキングがDXを乗り切る“切り札”だ、と本気で思っているわけではないようです。かと言って「スケジューラが動かない」という重大な問題を20年間も放り投げておきながら、それを解決しようとする意思もなし。せめて、問題の原因追及の素振りぐらいは見せておかないと“無責任”のレッテルを貼られますよ。

役立ちそうにないスマートシンキングとかで、しかも、合わせた照準はドハズレ。これでDXを乗り切ろうとする西岡氏率いるIVI。「危機的状態にある日本の製造業」を象徴しているようにみえます。

DPM研究舎

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