1工程の基本特性;その2

前回、工程がひとつだけの生産ラインの基本特性について調べてみました。Ti(投入間隔)とPT(処理時間)の関係でPTf(手空き時間)が発生したりWTq(待ち時間)が発生したりすることがわかりました。

複数の工程がつながる生産ラインでは、ある工程で処理が終了した時刻と、次のオーダが終了するまでの時間間隔が次の工程の投入間隔となるという関係で工程が連結されることになります。

今回は生産ラインの性能を示すTH(スループット;完成数/単位時間)とFT(フロータイム;投入~完成までにかかる物理的時間)について調べてみたいと思います。


単位時間を1時間(60分)とすると、Ti=10(分)、PT=10(分)のときの稼働率;ρはPT/Ti=10(分)/10(分)=100(%)となり、その時のTHは1時間に6個完成しますので、

TH=6(個/時間)

となります。Ti=20(分)のときのρはPT/Ti=10(分)/20(分)=50(%)で、その時のTHは1時間に3個完成しますので、

TH=3(個/時間)

となります。図1の水色で示すように、ρに対しTHは比例します。ρが100%以上ではTH=6(個/時間)で一定となり最大となります。

1個が投入から完成までにかかる時間;FTは、

FT=10(分)

となります。ρが0~100%では、ρに関係なく一定となります。但し、100%を超えるとFTは、時間経過とともに長くなります。ρの影響は受けますが、単純な比例関係にはありません。図1ではイメージ的に矢印で表現しておきます。

WTqは、ρが0~100%ではゼロです。但し、ρが100%を超えるとWTqが発生し、ρが高くなればWTqも長くなりますが、単純な比例関係ではありませんのでイメージ的に矢印で表現しておきます。


図1 ρ;負荷率に対するTH、FT、WTqの関係

ザっと、まとめてみましょう。

投入間隔;Ti、処理時間;PTが一定の条件では、負荷率;ρ=100(%)を境に、まったく異なる特性を示します。

① ρが100%以下では
  *THはρに比例する
  *FTは一定となる
  *WIPqは発生しない
  *WTqも発生しない

② ρが100%を超えると
  *THは最大値で一定となる
  *FTは時間経過とともにオーダ数が増し、それに従い長くなる
  *WIPqは時間経過とともにオーダ数が増し、それに従い増える
  *WTqはWIPqの増加に伴い長くなる

表1にPTが10分一定で、Ti>10(分)、Ti=10(分)、Ti<10(分)のときのTHやFTの数値例を示します。尚、Odnはオーダの受注順番号です。


表1

図2に3つの領域の特性を例示します。Ti>PTはPTよりも来客間隔が長い場合です。このときのρは100%未満となります。この領域では、THとFTの基本特性はρに対する変化で捉えることができます。Ti<PTはPTよりも来客間隔が短い場合です。このときのρは100%を超えることになります。この領域では時間とともにWIPqやWTqが変化しますので、THとFTは時間軸(経過時間)に対する変化で捉えなければなりません。生産工程の能力を示すTHやFTは、ρ=100%を境に大きく変化することは、生産ラインの性質を理解する上で、極めて重要であることに留意したいと思います。


図2 Ti>PT、Ti<PTでのTHとFT

2回に分けて工程がひとつだけの生産ラインの特性について調べてみました。実際の生産ラインでは、前工程の終了時間間隔が次工程の投入間隔となるという関係でつながります。実際は投入間隔と処理時間が変動しますので、THもFTも複雑な動きとなり、単純な数理モデルでは表せなくなります。

ここ2回ほど「1工程の基本特性」という、味気のないテーマになってしまいました。次回は、「日本のものづくりが危機状態にある」原因は何か、というテーマに戻し、少々刺激的になるかもしれませんが、日ごろ思っている愚見を述べたいと思います。

生産ラインの基本特性については場所を ものづくり徒然集 に移し、引き続き議論をしてまいりたいと思います。

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1工程の基本特性をみてみる

日本の生産管理のコンサルタント(製造現場の改善コンサル、生産システム関連など)の大部分は生産ラインの基本特性を理解していないことが明らかになってきました。と言っても、「生産ラインの特性っていろいろありそうだけど、基本特性ってどんな特性?」と思われる方が多いのではないでしょうか。今回から何回かに分けて、この生産ラインの基本特性について解説してみようと思います。

生産ラインは複数の工程の連鎖で構成されています。そこに被加工物(ワークとかオーダと表記します)が投入され最終工程で完成します。最も単純な生産ラインは工程が1つしかない生産ラインです。ラインというイメージはわきませんが1工程の生産ラインのメカニズムが複数工程からなる生産ラインのメカニズムを理解する上で重要です。

先ずは、1工程からなる生産ラインのメカニズムをみていきましょう。

詳細な検討に入る前に、生産ラインの能力をどのように表せばいいか、検討しておきます。ここでは1工程だけですが、複数の工程が連なる生産ラインも視野に入れて、考えておきます。生産ラインの能力を決める主な要素を図1に示します。1工程の機能を表す単位をiPoユニット(in-Process-outユニット)と呼んでおきます。見慣れないアルファベットがたくさんありますが、基本的な要素をできるだけ正確に定義しておくためです。ご容赦ください。
図1 生産ラインの特性を決める要素

各要素を簡単に説明しておきます。

Ti;投入間隔、受注間隔、到着間隔
「iPoユニット」へのワークの投入時間間隔。受注時刻=ライン投入時刻とみなせるときは受注間隔にも用いる。

PT;Process Time 処理時間、作業時間、製造時間
工程での正味処理時間。作業開始から終了までの時間

PTf;Process Free Time 手空き時間
稼働できるが、処理するワークがない状態の時間

WTq;Waiting Time in a Queue
ワークが工程に到着して処理が開始されるまでの処理待ち時間

WIP;Work In Process 生産ラインにある仕掛
WIP=WIPs+WIPp+WIPq
WIPs;WIP in a Stock;処理が終了したワーク、初期に設置した処理終了品 処理終了仕掛
WIPp;WIP in a Process ;Processで処理中のワーク 処理中仕掛
WIPq;WIP in a Queue ;Process前で処理を待つワーク 処理待ち仕掛

ρ;負荷率、稼働率
Process可能時間に対する実際の処理時間の割合。

TH;Through Put 完成数/単位時間
設定された時間単位内に完成する数量。

FT;Flow Time 投入~完成までにかかる物理的時間
類似した言葉に“生産リードタイム”があるが、さまざまな場面で使われ、定義も微妙に異なるので、ここでは、投入~完成までにかかる物理的時間をFTとする。

ここで挙げた要素がすべてではありません。様々な生産環境、生産方式などがありますので、必要に応じて追加されることになります。

では、ひとつの 「iPoユニット」 で構成される最も簡単な生産ラインの基本的な特性をみていきたいと思います。先ずは、バラツキがまったくない条件でどうなるかをみてみます。これを条件0とします。

「iPoユニット」の基本特性;
条件0⇒バラツキなし

初期状態は、生産ライン内にWIPqもWIPpもないとします。オーダが入ると直ちに作業を開始します。わかりやすいように具体的な数値で考えてみます。工程の作業時間;PTは10分、一定とします。この場合、客は注文してから10分後に完成品を受け取ることができます。

では、オーダが、それぞれ別々の客から、受注間隔;Tiが10分、一定で来る場合はどうなるでしょうか。PTは10分ですので、10分ごとに完成して、それぞれの客は10分後に製品を受け取ることができます。

工程の稼働状態をガントチャート形式で示せば図2上部のようになります。横軸は時間軸で単位は分。赤のダイヤ印が受注のタイミングを示します。オーダ⑩は90分に受注して100分に完成することを示しています。

次に、Tiが20分間隔一定の場合はどうなるでしょうか。PTは10分ですので、それぞれの客は10分後に受け取ることができます。但し、次の注文が来るまで10分間の手空き時間;PTfが発生します。ガントチャートは図2の上から2番目のようになります。

Tiが8分間隔、一定ではどうなるでしょうか。図2の上から3番目にそのガントチャートを示します。PTは10分ですので、オーダ①の作業が終わらないうちにオーダ②が来ます。オーダ②はオーダ①が終わるまで2分間、待たなければなりません。待ち時間;WTqが発生します。オーダ②の作業をしているうちにオーダ③が来ます。オーダ③のWTqは4分となります。時間の経過とともに、オーダのWTqは長くなります。48分から50分の間、オーダ⑥とオーダ⑦の2つのオーダが待ち状態となります。56分から60分の間はオーダ⑦とオーダ⑧が待ち状態になります。

オーダが6分間隔で受注する場合のガントチャートを図2の最下部に示します。待ちオーダの数;WIPqと待ち時間;WTqが長くなります。

図2 Tiを振ったときのPTf、WTqの様子

PTとTiの関係でWTqやWIPq、PTfの発生状態が変化します。まとめますと、次のようになります。

 Ti>PTでは、PTf>0、WTq=0、WIPq=0 で工程に手空き時間が発生する。ρ<100%、TH<6、FT=10 となる。
 Ti=PTでは、PTf=0、WTq=0、WIPq=0 手空き時間も待ち時間も発生しない。
ρ=100%、TH=6、FT=10 となる。
 Ti<PTでは、PTf=0、WTq>0、WIPq>0 オーダに待ち時間が発生する。ρ=100%、TH=6、FT>10 となる。

まとめますと、表1のようになります。
表1 TiとTPの関係と工程の特性

これがひとつの工程の基本特性です。どんな条件のとき処理待ち時間や手空き時間が発生するか、おわかりになると思います。

さらに条件を振って、基本特性の全体像をみてみたいと思います。つづく、、、

DPM研究舎

生産ラインの基本特性も理解しないで、、

ピンク色の部分が本間峯一氏のメールから引用した部分です)

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだ。

当たり前のアプローチ」の背後には、製造現場は上からの生産指示に従わなければならない、という前提があることがわかりました。そのような基準だとすると、生産指示に従わないことが「異常滞留」の発生原因にされてしまいそうですが、、、

異常滞留の事例とその発生原因は、
親会社の内示で生産開始したら、途中で親会社が納期変更したのでそのオーダーは現場の班長の独自判断でストップさせて別の製品の加工を先に動かした。その結果そのオーダー加工品は工程途中で半年以上止まっていたが、誰も気づかなかった。
やっぱし、生産指示に従わず「現場の班長の独自判断でストップさせたこと」が異常滞留の発生原因だ、とされているようです。

異常滞留(最大待ち時間)の発生原因調査では、
最大待ち時間の発生要因を調べると工程待ちよりも人間の手続きミスや判断ミスが原因となっていることが多い。
人間の手続きミスや判断ミス」って、生産指示に従っていても防げなかったのか、指示に従わなかったから起きたのか。前者であれば、生産指示そのものが適切ではなかったとかその仕組みに欠陥があったとか。後者であれば人間のミスつまり「属人的なもの」が原因だ、と。いずれにしても、異常滞留発生の原因は企業(製造現場)にあることになりそうです。

製造現場の状況は、
私のコンサル先をみていると私が指摘するまで行われていないところがほとんどです。そうでなければ200日なんて工程滞留が見過ごされているはずがありません。理由の一つに過度な製造時間短縮に目が行き過ぎていることがあるように思います。その背景には原価管理とTPSがあるのではないかとみています。
私が指摘するまで行われていない」・・・「私の指摘が絶対に正しいのだ!」という上から目線的雰囲気が感じられます。「その背景には原価管理とTPSがある」・・・製造時間ではなく待ち時間だよ、という本間氏の主張の背景のひとつ、でしょうか。しかし、違和感がありますね。

待ち時間がダントツに短いのはTPS(トヨタ生産方式)ですよ。今、待ち時間を短くしようとしているときにTPSこそ良きお手本になるんじゃないでしょうか。「TPSに目が行き過ぎているから滞留が見過ごされている」、、TPSも悪者扱いですか。

で、本間氏の改善コンサルの具体的な方法は、
原因の多くが属人的なものが多いので地道に皆でデータを見ながら話し合うのが筋だと思っています。コンサルがそのトリガーになれれば十分だと思います。
つまり、異常値の原因は製造現場で働く皆さんの問題だから、みんなで話し合って解決策をみつけなさい、ということのようです。これで、コンサルを依頼した企業側は満足するんでしょうか。

いくら何でも、これが改善コンサルのすべてか、と思うと、寒気さえ感じてしまいます。何かもっとまともな考えもあるはずだ、と思い、定量的な側面の質問に変えてみました。

「属人的なもので発生する異常値をなくすことで、80%を占める待ち時間を短くできる根拠は何ですか?」 定量的な説明を抜粋してみます。

異常値の性質というか、特性について言及しています。
異常値というのは工程間でそのワークだけが1か月以上滞留している話で、沖電線の資料でいえば最大値になります。通常の滞留は中心値ですので、異常値とは処理時間の何倍ではなく通常の滞留実績時間(中心値)の何十倍という数字です。原因は、200日になると現場が故意にストップさせたか、伝票処理のミスが中心です。滞留させたからといって納期遅れにはつながらないのでずっと放置されるというのが多いです。

異常値とは、滞留時間の中心値(中央値のことと解釈します)の何十倍も離れていることを異常値と捉えることから、定量的な分析をしようとする意思は感じられます。でも「納期遅れにはつながらない」んだったらいいんじゃないの?と言ったら元も子もなくなりますか。

最初に企業の管理レベルが十分でないというお話ししましたが、定量的な問題を議論するような状況ではない工場がほとんどです。

定量的な分析ができないのは「企業の管理レベルが低いから」。「そんな工場がほとんど」だから、定量的な分析をできない理由は企業側にある、と言いたいのでしょうか。

異常値が大きすぎて平均値が使えないので、中心値で比較するようになりました。それでも中心値が異常値に影響して長くなりがちです。属人的な異常値の原因を洗い出してつぶすだけでもかなりの時間がかかります。・・・的外れにならないように必ず改善による結果数字を確認するようにします。組織が細分化されている大企業ほどこの結果確認作業をしていないことが多く、信じられないような異常値が放置されています。ただ、このフェーズのコンサルができるデータが得られない工場の方が多いのが実状です。

異常値が大きすぎ、、平均値が使えない、、中心値が異常値に影響、、、データの分布状態が予想したものとは違っているようですね。その理由は、異常値の原因が物理的なものではなく「属人的なもの」だから、と言いたいのでしょうか? さらに「結果数字を確認しようとしても確認作業をせず、放置している」と、企業側に非があることを繰り返します。

最大待ち時間の発生原因を分析しているところが少ないことを問題にしています。

「待ち時間を短くするためには、最大待ち時間の発生原因に手を打たなければならない。なのに、その分析をしているところが少ない」。原因分析をしない企業に問題がある、と。

最大待ち時間が平均待ち時間もしくは中央待ち時間の3から5倍以上の数字・・・を異常値(異常滞留)と呼んでいます。・・・佐々木さんは異常値を処理時間の何倍と定義していましたが、そんな定義はしていませんので訂正してください。

先に言及しましたが、本間氏は「異常値大きすぎ、、平均値が使えない、、中心値が異常値に影響・・・」と言いながら、「使えない平均値を基準に使う」って、矛盾していませんか? 待ち時間の平均値は、平均処理時間に工程への到着間隔と処理時間の変動が影響しますので、そのバラツキは平均処理時間のそれより大きくなり、不安定になります。平均待ち時間を基準にすると、平均処理時間を基準にするより、定量的判断の精度が低くなってしまいます。(待ち時間発生の詳細については後述します)

最大値が排除出来て、待ち時間が平均値付近に集中してきたら次は工程負荷が待ち時間の発生要因になっていないかの検討をします。

最大値が排除出来て」って言いますけど、待ち時間の発生メカニズムも曖昧なままで、原因は企業の管理レベルが低く、属人的なものだということなら「最大値が排除出来る」のに何年かかるんでしょうね。「生産性が低いのは管理レベルが低いからだ」って、30年前にも聞いたことがありますよ。まぁ、いいかっ。仮に、仮にですよ「最大値が排除できた」として、、、も、

待ち時間が平均値付近に集中」するような分布はしないんですよ。そして、

工程負荷が待ち時間の発生要因になっていないかの検討をします」ですかぁ。検討なんかする必要はありません。工程負荷と待ち時間のおおよその関係はすでに解明されていますから。(これも詳細は後述します)

そこではじめて製造能力の問題がでてきますが、・・・あくまでもここまでいくまでが大変だという話をしています。

「時間の最大値(異常値)」は「製造能力」と深くかかわっています。異常値の原因を分析するときも製造能力を無視できません。本間氏の説明の中では最大値の原因分析に製造能力の話はまったく出てきません。だから「最大値を排除」できるわけはないのですが、「最大値が排除できたら、そこではじめて製造能力の問題が出てくる、、、」となると、、、論理が崩壊していますね。 待ち時間の発生メカニズムについての理解がまったくないようですね。

今回のBlogの後半は、待ち時間発生のメカニズムに関する話になり、わかりづらくなってしまいました。しかし、ここが最重要ポイントになります。待ち時間発生のメカニズムは生産ラインの基本中の基本的な特性です。すべての生産ラインに、例えひとつの工程しかない生産ラインにでも、共通する特性です。

簡単に言えば、工程間(前)の待ち時間は、工程に到着する時間間隔と工程の処理時間(製造時間)で決まります。到着間隔と処理時間はバラツキます(変動します)ので、待ち時間もバラツキます。そのバラツキ具合が、われわれの常識と異なるんです。大きく異なるんです。だから、「先ず最大値を排除して、次に平均値の短縮、、という“当り前のアプローチ”」が機能しないんです。

本間峰一氏とのメールを題材にしておりますが、本間氏ひとりの問題ではありません。生産改善コンサルタント、生産スケジューラの開発者・ベンダー、関係する学界など、ほとんどの方々がこの生産ラインの基本的特性を理解していないようなのです。

1990年代に米国では、Factory Physicsが大学のプログラムに加わり、生産ラインの物理的特性の理解が進みました。2000年代後半には、ごく限られた条件でしか使えない生産スケジューラのほとんどは姿を消しました。日本では、生産スケジューラ・ベンダーが美辞麗句の誇大広告合戦を繰り広げております。日本の生産管理は30年遅れてしまいました。

本間峰一氏のメールにあったメッセージです。

最近日本のものづくりが危機状態にあるという話がよく出てくるようになりました。

生産ラインの特性を正しく理解することなく、大量生産時代には有効だったかもしれない「当り前のアプローチ」を、馬鹿の一つ覚えよろしく振り回す改善コンサルにも責任の一端があるのではないでしょうか。

次回から、生産工程間で発生する待ち時間について、物理的、工学的側面に重きを置いて検討してまいりたいと思います。

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現場改善コンサルの規範;指示通りにやれ!

製造時間でなく待ち時間(滞留時間)を短縮しよう」と主張する本間峰一氏。工程を流れる製品の生産リードタイムの中で待ち時間は80%を占めるという。だから生産リードタイムを短縮するためには待ち時間を短くする方が効果的だ、と。で、具体的なアプローチは?

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだ。

というフレーズを手掛かりに、前回、本間峰一氏の改善ロジックを概観してみました(前回のBlogをご参照ください) 「当り前のアプローチ」というなら、多くの人が納得する論理があるはずですが、それがよく見えない。裏に何か隠れているロジックがあるのでしょうか? メールから関連する説明を抜粋し、彼の改善コンサルの手法や背景をもう少し詳しくみてみましょう。


待ち時間対策がより重要だという話は沖電線の対策検討をする中ででてきました。当初の悩みはスケジューラの活用がうまくいかないことだったように思います(アスプローバはすでに導入して使っていました) そもそもなんで現場で製造順番が変わるのかという会議での疑問が発端だったように思います。

その後沖電線以外の工場でも工程リードタイム分析をするようになってどこも同じような状況だということがわかってきました。それで現在の私のコンサルでは入口で滞留時間を分析するようにしています。


コンサルの初めに滞留時間分析をすることになった経緯はわかりました。スケジューラ通りではなく現場で勝手に製造順番を入れ替えることが待ち時間が長期化する原因のひとつではないか、との思いがあるようです。そして、

私は現場は指示通りには動いていない可能性が高いという前提から現状確認に入ります。現場が勝手に製造順を入れ替えることは普通だという前提で工場を見るようにしています。

だから先に先入先出を徹底させる現場コンサルが必要だと申しあげているのです。

現場が勝手に製造順を入れ替えるのはけしからん。生産計画で指示した通り、先入先出でつくるようにさせるのがコンサルの役目だ、と彼の強い矜持が感じられます。

このような考え方は、生産管理の基本として製造業に広くいきわたっています。これを“生産計画基準”と呼んでおきます。この生産計画基準の工程管理ですが、うまく機能する企業は極限られ、多品種少量生産とか変動のある生産環境など大部分の企業ではうまくいきません。企業ごとに工夫し、独自の生産管理方法をとることになります。

ところが、ほとんどの生産改善コンサルタントはこの生産計画基準の考え方を採っています。「生産計画通り生産をしないのは製造の管理が悪いのだ」。本間峰一氏も、「現場コンサルの仕事は、現場が指示通りに動くようにすることだ」、と。

では、生産リードタイムが長くなる、ここでは工程間の待ち時間が長くなるのは、現場が指示通りに動かないことが原因なのか。例えば、「製造現場で勝手に製造順番を変える」と生産リードタイムは長くなるのか?

私の製造現場での経験から言えば、Noです。納期に余裕のあるオーダーを後回しにして、納期に遅れそうになったオーダーを優先して流す。これって、納期管理の基本。後回しにしたオーダーの生産リードタイムは確かに長くなりますが、優先して流したオーダーの生産リードタイムは短くなる。どこの生産現場でもやっていることじゃないでしょうか。

具体的例としては、
親会社の内示で生産開始したら、途中で親会社が納期変更したのでそのオーダーは現場の班長の独自判断でストップさせて別の製品の加工を先に動かした。その結果そのオーダー加工品は工程途中で半年以上止まっていたが、誰も気づかなかった。

現場班長の独自判断って、間違っていたんでしょうか? 半年以上先に納期が延びたのに当初の計画通り完成させても半年以上、在庫となるだけ。製造能力をもっと優先度の高いオーダーに振り向ける方が工場の生産性は高くなります。だからストップした。これって、正当な優先順管理じゃないでしょうか。

製造現場で勝手に製造順番を変える」という表現がよくありませんね。
製造現場では生産状況を監視し、納期に間に合うよう製造順番をコントロールする」ってことじゃないでしょうか。

滞留させたからといって納期遅れにはつながらないのでずっと放置されるというのが多いです。

現場が納期管理を行っている証左ではないでしょうか。

現場が行う正当な納期管理も、生産計画基準では、「勝手に製造順番を変える」“悪者”となるんですね。

生産改善コンサルタントって、大部分が生産計画基準です。このような改善コンサルタントが現場に入るとどうなるか。生産リードタイムが短くなるはずもなく、現場はめちゃめちゃになりませんか? 沖電線に聞いてみたいものです。

当り前のアプローチ」の背後にどのような論理があるのか探ってみました。見えてきたのは、生産計画基準という生産管理の規範です。現場改善コンサルタントの大部分は生産計画基準。「製造は、上で決めた生産計画に忠実に従って生産を行わなければならない」、とうそぶく。現場を上から目線で捉え、心底は現場は指示を無視して勝手な順番でつくる」という猜疑心に満ち溢れている様子がうかがえます。

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業務改善コンサルタントの手法

本間峰一氏は月刊工場管理に記事を連載し、また多数の関連書を執筆しております。日本を代表する改善コンサルタントの一人であり、 “危機的状態にある日本のものづくり”を救ってくれるのではないかとの期待とともに、その言動に注目が集まっています。

メール交換を通して彼の“生産現場の業務改善手法”の一端を覗いてみたいと思います。

メールの一部を抜粋します。

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだと思います。

異常値について、本間氏の説明のポイントをまとめますと、
●異常値(最大値)の特徴
   1カ月~半年以上滞留
   異常値が大きすぎて平均値が使えないので、中心値(中央値のこと?)で比較する
   通常の滞留は中心値ですので、異常値とは処理時間の何倍ではなく通常の滞留実績時間(中心値)の何十倍という数字です

●異常値原因
   故意にストップさせた、伝票処理ミス、、などの“属人的なもの”である
   状況;大企業ほどこの結果確認作業をしていないことが多く、信じられないような異常値が放置されている
    但し、滞留させたからといって納期遅れにはつながらない

で、対策は、
●異常値対策
   属人的な異常値の原因を洗い出してつぶすだけでもかなりの時間がかかる
   的外れにならないように必ず改善による結果数字を確認する
   原因の多くが属人的なものが多いので地道に皆でデータを見ながら話し合うのが筋

「原因の多くが属人的なものが多いので地道に皆でデータを見ながら話し合うのが筋」って、すごく日本的ですよね。「皆で話し合って答えをみつける」・・・昔の小集団活動を思い出します。異常値の原因の大部分が属人的なものだとすれば、「皆で話し合って答えをみつける」というアプローチは理にかなっているように感じられます。グループ、関係者の協力が重要なのも同意できます。

戦後、日本の製造業が右肩上がりの時代に形成された現場改善の規範といってもいいでしょう。

また、生産現場の“管理”という視点からみると、きちんと管理されていれば出るはずのない異常値。それが出るということは管理に欠陥があるのではないか。そして一番目に付きやすいのが異常値。異常値を手掛かりにすることで管理状態を手っ取り早く、効果的に維持できる・・・。

コンサルの最初の手順として最大値(異常滞留)の発生原因を分析してつぶしておく必要がある。業務改善コンサルなら当たり前のアプローチだと思います。

本間峰一氏が「当たり前のアプローチ」だと主張する根拠は、モノづくり日本の歴史を背景からみて、また生産現場の管理状態の維持向上という面からみても、納得できることでしょう。

本間氏だけではなく、多くの業務改善コンサルタントも、日夜現場で奮闘する方々も「当り前のアプローチ」として受け止めているのではないかと思います。

で、このアプローチで対策の効果は、つまり、待ち時間が劇的に短くなったのか、が気になるところです。

本間氏が実際に指導した沖電線の事例では、受注生産品の全体リードタイムが90日から40日弱に短縮したとのこと。営業の受注活動~生産計画~生産~納品までの全体リードタイムなので、課題としている工程間の待ち時間がどのぐらい短くなったのかはわかりません。参考データとして認識しておきます。

その他に工程間の待ち時間がどの程度短くなったか、再三聞きましたが、具体的な説明はありません。

では、本間氏の主張する「当たり前のアプローチ」で待ち時間が短くなる論理的根拠は何か。定量的な説明を求めました。私が知りたかったポイントはここにありました。

本間氏の応えは、

*最初に企業の管理レベルが十分でないというお話ししましたが、定量的な問題を議論するような状況ではない工場がほとんどです。
*異常値が大きすぎて平均値が使えないので、中心値で比較するようになりました。それでも中心値が異常値に影響して長くなりがちです。属人的な異常値の原因を洗い出してつぶすだけでもかなりの時間がかかります。
*的外れにならないように必ず改善による結果数字を確認するようにします。組織が細分化されている大企業ほどこの結果確認作業をしていないことが多く、信じられないような異常値が放置されています。ただ、このフェーズのコンサルができるデータが得られない工場の方が多いのが実状です。

まとめますと、
・管理レベルが十分ではないため、定量的な議論をできる状態ではない。
・異常値が大きすぎ、、平均値が使えない・・・データ処理がうまくいかない。
・的外れにならないように必ず結果数字を確認するようにしているが、それをしていない。
・異常値が放置されている

定量的な裏付けとなるデータを採っている企業は少なく、結果数値の確認もしなければ、異常値を放置したままだ、と。つまり、論理的根拠を示せないのは、企業側の問題である、ということなんでしょうか。

そして、待ち時間の異常値の原因は、属人的ミスが多く、管理レベルが低い、、、ことである、と。

この展開、みなさまは納得できますか? 論理的ですか?

どこに問題があるのでしょうか、、。

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