Flexscheの解説;チコちゃんの反応は?

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「Asprova解体新書」をきっかけに、生産スケジューラの機能などについて調べてきました。ザックリと言えば、「固定時間しか扱えない生産スケジューラでは、バラツキを避けられない現実の環境で、実行可能なスケジュールを生成することはほぼ不可能である」、となります。もちろん限定的な条件では使えるケースもあると思いますが、、。

Asprovaだけか? という疑問が湧いてきます。「生産スケジューラー 製品ランキング」をみますと、生産スケジューラ・ヴェンダーって、いっぱいあるんですね。他の生産スケジューラって、どうなってんだろう、、。
生産スケジューラのWebsiteをググっていると
「多様な製造業のニーズに適応するための柔軟性」
「時間軸を重視した工場運営」
「鍵は生産リードタイム短縮」
なんていう文面でひっかかりました。Flexscheという会社です。私が気にしている生産スケジュールの柔軟性とは、主に、時間軸上の柔軟性ですから、もしかしたら、秘策があるのでは、、。ということで、FlexscheのWebsiteを覗いてみることに、、。「解説記事」にいろいろ書いてありそうです。

「Asprova解体新書」で得られた知見をベースに、キーワードを挙げると、生産リードタイム、作業時間、待ち時間、、、そして変動、ゆらぎ、バラツキ。マスタデータのフォーマットも重要ですね。

(1)生産リードタイムと待ち時間

解説記事 生産スケジューラ導入の秘訣
第2回:生産リードタイムを短縮せよ(Website リンク)
に次のような説明があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

生産リードタイムには、正味の作業時間と待ち時間とが含まれます。このうち、通常は、待ち時間の方が圧倒的に長く、また、短縮もしやすいものです。待ち時間は様々な原因によって発生します。それらを明らかにして、影響や効果の大きいものから改善していくべきです。

なお、どこでどのような待ちが発生しているかも、生産スケジューラであぶり出すことができます。 さらに、どのような改善を行えばどのような効果が得られるかも、生産スケジューラを活用すれば定量的にシミュレーションすることができます。


「生産リードタイムは作業時間と待ち時間が含まれ、待ち時間の方が圧倒的に長い」
同感ですね。そして、
「どこでどのような待ちが発生しているか、生産スケジューラであぶり出すことができ、改善効果も定量的にシミュレーションできる」
と。待ち時間を定量的にシミュレーションできるとありますが、、、本当なんでしょうか?
メールしてみました。

「生産スケジューラで、待ち行列現象による待ち時間を分析できますか?」

こんな返事が来ました。

「質問内容の抽象度が高いため、メールにて弊社見解をお伝えすることは難しいと考えております。」

字面はともかく、背後の意味は「できません」。って、すぐわかりますよね。苦し紛れの典型みたいな回答でした。

(2)変動、ゆらぎ、バラツキ

待ち時間の発生に関係する要因として、バラツキがあります。変動が大きいと、特に稼働率が高い領域では、待ち時間は急激に長くなります。サイト内の検索機能がありましたので、変動、ゆらぎ、バラツキなどをキーワードにして、検索してみました

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える(Websiteリンク)
に次のような説明があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

現実の世界ではさまざまな変動要因や「ゆらぎ」が不可避なものとして存在するので、生産スケジューラがはじき出した「理論上の納期」をそのまま顧客に伝えるのではなく、安全のためにバッファ時間を加算して回答しましょう。

突発的に発生する変動要因には以下のようなものがあります。発生時に速やかに計画を更新するとともに、「ありうべきこと」としてあらかじめある程度計画に余裕を持たせておくことも必要です。

 機械の故障
 作業員の欠勤
 緊急の飛び込み受注
 資材入荷の遅れ
 外注先からの納品の遅れ

一方、確率的に常に発生するゆらぎの要因には以下のようなものがあります。計画段階で時間的なバッファをある程度持たせることによって、これらを織り込んでおく必要があります。

 気温や湿度による作業時間の変化
 調達した原料の品質のばらつき
 不良品の発生
 人手による不定な作業時間


変動、ゆらぎ、バラツキなどを不可避なものと捉えていることには同意します。主な対応策はバッファー時間、余裕時間を入れること、という説明です。

しかし、やっぱり、待ち行列現象による待ち時間はどこにも見当たりません。待ち行列現象による待ち時間って、そこに挙げてある時間変動よりはるかに大きいんですがねぇ~。

(3)どのようなデータを扱うことができるか

マスタデータのフォーマットをみてみましょう。時間値は、他の生産スケジューラと同じで、固定値です。確率変数や確率分布で入れられるようにはなっていません。だとすれば、待ち行列現象による待ち時間は計算できません。

(4)「待ち時間」に関する記述

サイト内の検索機能で、すべての「待ち時間」を検索して、待ち行列現象による待ち時間の説明があるかどうか、調べてみました。残念ながら、そのような説明は見つかりません。

[結論]

Flexscheは、オーダ(ワーク)投入時間間隔や作業時間(処理時間)の変動(ゆらぎ、バラツキ)がある環境で、実行可能な作業開始・終了時刻を指定するスケジュールの生成は、ほぼ、不可能である。

第3回:生産スケジューラの活用方法のバリエーション(Websiteリンク) に活用方法が紹介されています
(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)
活用方法1 シミュレータとして
活用方法2 スケジューラとして
  活用方法2-1 中央集権型
  活用方法2-2 分権型


実行可能なスケジュールの生成ができないとなれば、このような活用方法は、“絵にかいた餅”、、じゃないでしょうか。他の使い方は、、あるかもしれませんが、、。

(5)チコちゃんに叱られないようにしましょう!

解説記事 時間と闘う製造業の生産スケジューリング
第2回 生産スケジューリングで製造業を変える(Websiteリンク)
に次の記述があります。(引用部分は文字色を変えてあります。引用元全文のコピーを文末に掲載し、引用部分は赤字で表示しております。)

1990年代には米国でも数多の生産スケジューラのパッケージソフトウェアが販売されていましたが、ほとんどはERPヴェンダーに買収されてしまい、MRPの下位モジュールと位置付けられました。そのため単体製品としての生産スケジューラはあまり出回っていないようです。

一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無かったため、日本の生産スケジューラは独自の進化を続けており、機能的には世界でもトップレベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え続けているからでしょう。


米国で生産スケジューラが出回っていない、というのは同感です。2000年中~後半にかけて、ほとんどなくなったのではないでしょうか。なぜか? 「Asprova解体新書」にその手掛かりが書いてあります。

米国の大学生向けの教科書的な本は、「生産スケジューリングは絶対に無理なのでやめるように」と明言している。(13ページ)

背景を簡単にまとめますと、1990年、米国Northwestern UniversityでMaster of Management in Manufacturing programが始まりました。教科書として用いられたのが、Factory Physics; Hopp、Spearman著、Waveland Press発行。

Factory Physicsでは書名が示すように、生産ラインのメカニズムを物理的・工学的に解析、分析しています。その中で、変動、ゆらぎ、バラツキがある一般的な生産環境では、作業開始・終了時刻を指定する実行可能な生産スケジュールの生成は不可能である、と説明しています。この考え方が定着してきて、生産スケジューラ・ヴェンダーは撤退していったとみるのが妥当だろうと思います。

それも知らずに「世界のトップレベルにある」とは、、。こんなふうに書き換えればいいんじゃないでしょうか。

;一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無 を知らなかったため、日本の生産スケジューラは独自の進化 退化を続けており、機能的には世界でもトップレベル 最低レベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え レベルを劣化させ続けているから ことでしょう。;



チコちゃんに叱られないようにしましょう!

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株式会社フレクシェ 代表取締役 浦野 幹夫様より、本Blog掲載に際して、以下のメールをいただきました。Web会議の要望がありましたが、「会話の内容を公にしない」という条件付きでしたので、それには同意しませんでした。2番目の要望は、引用元全文(メールも含めて)を示せ、とのことでしたので、こちらの要望に応じることにしました。

以下、メールのコピー
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株式会社フレクシェの浦野と申します。
弊社の望月とのやりとりを引き継がせていただきます。

貴殿のブログの草稿を拝見しました。

当方からはWeb会議であれば応じさせていただく旨をお伝えしたにもかかわらず、その事実を伏せた上、文面を部分的に引用して「苦し紛れの典型みたいな回答でした」と言われるのは私としては甚だ不本意です。

貴殿の質問に回答するにはそれなりの工数・コストを要します。存じ上げもせず自己紹介すら無い方からの不躾な質問に、手間をかけて回答文面を作文する必要はないと判断しましたが、短時間のWeb会議であれば時間を割くことには吝かではありません。知らない方から唐突に攻められる理由が分からず当惑しているのですが、それを明らかにするためにも、ぜひともWeb会議でお話をさせていただく存じます。

それでもなお貴殿がWeb会議を避け、ブログ掲載だけを強行されるというのであれば、やむをえません。ただし「恣意的な抜粋」ではなく(当メールも含めて)文面全体を漏れなく改変なく引用してください。「恣意的な抜粋」をされるのであれば、しかるべき対応を検討せざるをえません。

生産スケジューリングに関して貴殿個人の意見・評論を表明することはもちろん自由ですし、生産スケジューリングの議論の活性化につながるのであれば好ましいことですが、そのために弊社を一方的に踏み台にして巻き込まないでいただきたいです。

よろしくお願いします。
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以下は、引用元全文のコピーです。引用部分は赤字で示しております。
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第2回:生産リードタイムを短縮せよ
2011.11.30

キーワードは「多品種少量・短寿命・短納期」

造業を取り巻く環境は大きく変化しています。
かつて日本が貧しかった頃は、欲しい物は皆同じでした。たとえば「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」が「三種の神器」と呼ばれました。その後、高度成長期に入ると、今度は「カラーテレビ・クーラー・自動車」が「3C」または「新・三種の神器」と呼ばれるようになりました。
その後も、色々な「三種の神器」が提案されたのですが、これらの名称はほとんど浸透しませんでした。その理由は、名称が定着する前に商品自体が普及してしまったからだろうと思います。例えば「デジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型テレビ」が「デジタル三種の神器」と呼ばれたそうですし、2003年にも小泉首相が「食器洗い乾燥機・薄型テレビ・カメラ付携帯電話」を「新三種の神器」と命名したそうです。「カメラ付携帯電話」とは、今にして思えば「普通のケータイ」のことです。「神器」というほどの希少性はもはやありません。今の神器は「3Dテレビ・乾燥機付き洗濯機・スマートフォン」というところでしょうか。ただしこれらも数年のうちに一般家庭に普及することでしょう。
市場で認識されてから普及するまでの期間がこれほどまでに短くなると、「神器」も大変です。あっという間に世代交代を余儀なくされます。
日本の製造業が努力を続けて品質を向上させ、輸出を拡大した結果、皮肉なことに円高が進み、現在では安価な輸入品があふれるようになりました。それに対抗するために日本製品の価格も下がり、さらに少子化も加わって、日本は深刻なデフレに長く苦しんでします。価格競争を続けるのは苦しいので、付加価値で差をつけようと、各社が激しい製品開発競争を繰り広げています。そのスピードは非常に速く、正に日進月歩です。
その結果、長期にわたる大ヒット商品は影を潜め、多様な商品が登場しては消えていくようになりました。つまり「多品種少量」かつ「短寿命」です。短寿命となると、販売店は必然的に「売れ筋の商品を早く持ってこい」と要求します。つまり「短納期」です。
こうして、多くの製造業が「多品種少量・短寿命・短納期」への対応を迫られるようになりました。

「製造業のジレンマ」

この「多品種少量・短寿命・短納期」という要求は、実はかなりの難題です。
まず「多品種少量」、すなわち、多くの種類の製品を少しずつ生産すると、段取り替えが増え、生産性が低下します。また他の製品が生産されている間、待たされることになります。さらに、どの製品の生産を優先するかの判断が難しくなります。その結果、通常は、生産リードタイムが長くなります。
でありながら「短納期」です。もしも納入に許されるリードタイムが生産リードタイムよりも短いのなら、注文を受けてから作り始めたのでは納期に間に合いませんから、あらかじめ作りだめしておくしかありません。生産リードタイムが長くなるほど、その間の機会損失を減らすためには多くの在庫を確保しておくことが必要になります。たとえば、生産リードタイムが1年で要求が即納の場合は、1年分の需要を予測し、その分の在庫を抱えておくことになります。生産リードタイムが1カ月なら1カ月分、1日なら1日分で済みます。さらに「多品種」の場合には、在庫を確保しておくべき品種数も多くなります。在庫切れを防ぐための安全在庫を一品毎に確保しようとすると、少品種多量生産に比べてトータルの在庫量も多くなってしまいます。
これに「短寿命」が追い打ちをかけます。貯め込んでおいた在庫品も、そのうち消費者の関心を失い、売れなくなってしまうのです。いわゆる「不良在庫」です。特に完成品の不良在庫は最悪の無駄です。材料を使って人手と時間をかけて生産して、さらに場所を取って保管して、その挙句に捨ててしまうのですから。
つまり、「在庫を持たなければ納期遅れor機会損失」「在庫を持てば不良在庫」というわけです。今、多くの製造業が、このジレンマに苦しんでいるはずです。
ではどうすればよいのでしょうか?

鍵は「生産リードタイム短縮」

この難題を解決するための鍵は、「なんとかして生産リードタイムを短縮すること」です。
生産リードタイムを短縮して、要求リードタイムよりも短くできれば、受注してから生産すればよく、在庫が不要になります。こうなれば理想的ですが、そこまで短縮できなくても、生産リードタイムが短いほど機会損失を防ぐための在庫量が少なくて済みます。また生産リードタイムを短縮することで、半製品や共通部品を在庫として蓄えておき、受注してから生産に着手しても間に合うようになれば、完成品在庫を保持するのに比べて不良在庫化リスクを減らすことができます。また生産リードタイムが短いほど、需要予測の期間が短くなり、したがって予測の精度も上がります。
このように、生産リードタイムを短縮すればするほど、在庫を減らすことができ、キャッシュフローを改善できるだけではなく、不良在庫の危険も小さくなります。

生産リードタイムを短縮するには

ではどうすれば生産リードタイムを短縮できるのでしょうか。

生産リードタイムには、正味の作業時間と待ち時間とが含まれます。このうち、通常は、待ち時間の方が圧倒的に長く、また、短縮もしやすいものです。待ち時間は様々な原因によって発生します。それらを明らかにして、影響や効果の大きいものから改善していくべきです。
なお、どこでどのような待ちが発生しているかも、生産スケジューラであぶり出すことができます。 さらに、どのような改善を行えばどのような効果が得られるかも、生産スケジューラを活用すれば定量的にシミュレーションすることができます。


生産スケジューラを上手に活用することで、短期的なものから長期的なものまで、様々な意思決定のための判断材料が得られます。

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第2回:生産スケジューリングで製造業を変える

生産スケジューリングとは何か

前回は製造現場の計画立案全般についてお話ししましたが、今回は生産スケジューリングおよび生産スケジューラについて詳しくご紹介します。
前回の記事で紹介したように、多くの計画手法では概(おおむ)ね「今日はこれとこれをやって、明日はあれとあれをやる」というように、ある一定の時間枠(1週間、1日、1時間などのタイムバケット)の中で行うべき仕事を積み上げていきます(負荷山積み計画)。それに対して生産スケジューリングは「何時何分から何時何分の間にこれをやって、その後何時何分まであれをやる」というように、1つのリソース(機械や人など)で同時に実行できる作業の数や量の範囲内で時間軸上に並べていく方法です。生産スケジューリングが有限能力スケジューリングともいわれる所以です。
また負荷山積み計画では、一連のいくつかの作業を便宜的に1つの工程とみなすことが多いようです。1つの工程が1つのタイムバケットの最初から最後までを占めるため、工程を細分化すると全体のリードタイムが極端に長くなり使い物にならないでしょう。それに対して生産スケジューリングでは、基本的には利用するリソースが変わる都度、独立した工程であるとみなします。


図1 負荷山積み計画と生産スケジューリング

各リソース上において異なるロットの作業同士の相互干渉を解決しつつ、連続した時間軸上で各工程の作業時間と時間帯を緻密に(秒単位まで!)計算することで、工程間の無駄な待ち時間を削り落としてリードタイムを短縮すること。これが生産スケジューリングの本質であるといえます。工場内の各リソース上での作業を時間軸上でシミュレーションするわけです。
ところで、場合によっては広義に「生産スケジューリング」という用語が負荷山積み的手法まで含むものとして使われることもありますが、本稿での「生産スケジューリング」はあくまで狭義に時間軸上に作業を並べていく手法だけを指しているものとしてご理解ください。

リソースガントチャート

生産スケジューリングの中心的な表現手段はガントチャートです。
ガントチャートとは、20世紀初期に米国のHenry L. Ganttがプロジェクト進捗管理の手段として考案した視覚化ツールであり、横軸を連続した時間軸とし、作業の開始日時と終了日時を横棒(バー)で表現した図表です。
ガントチャートの縦軸は目的によりさまざまです。多くの場合、縦軸は工程(作業)であり、1つの行には1本のバーが描かれます。一方、生産スケジューリングで主に利用するガントチャートは「リソースガントチャート」と呼ばれるもので、工程ではなく機械や人などのリソースが縦軸となります。工場では1つのリソースを多くのロットが順番に利用していくわけですから、リソースガントチャートの1行には多くのバーが時間軸方向に並んで描画されるのが特徴的です。これにより、有限能力ならではのロット同士の排他的な関係(山積みされないこと)が表現されるのです。


図2 生産スケジューラのリソースガントチャート

「モデリング」と「ルール」が肝

生産スケジューリングにおいて、現実の工場での作業の流れを適切に表現するために、どのようにリソースや工程を表すべきかを決めるプロセスを「モデリング」と呼びます。モデリングとはガントチャート上で最終的にどのような絵が描かれるべきかを考えることである、と捉えることもできます。例えば、人が事前に準備(段取り)しておくだけで製造は自動実行されるということであれば、下図のようにモデリングします。


図3 自動製造のモデリング

モデリングの結果、各ロットの個々の工程のための「作業(operation)」が無数に出来上がります。リソースガントチャートの各リソース上に作業を割り付ける処理が「スケジューリング」というわけです。
無数にある作業をリソースガントチャート上にどのようにどのような順番で並べていくか決めるための手順は「ルール」「ロジック」などと呼ばれます。工場によって事情は異なるので、現場とニーズをしっかり分析して適切にルールを組み立てることが重要です。例えばある工程において作業順序が切り替えコストやスループットを左右するのであれば、単に実行可能なだけでは不十分で、作業の並び順を適正にコントロールしなくてはなりません。従来は計画担当者の頭の中にあったノウハウをルールとして客観化して実行するのです。
具体的なモデリングの方法とルールについては回を改めて紹介しますが、ひとまずここでは、生産スケジューリングの肝は「モデリング」と「ルール(ロジック)」である、とだけ理解していただければ十分でしょう。

それって、やり過ぎではない?

「何時何分何秒まで計算するだって? それはやり過ぎでしょ。そんな計画を立てても、現場で実行できるわけないじゃない!」
直感的にそう思われたとしても仕方ないでしょう。実際、計画と実行は一致しないことを前提として運用するべきです(そのために生産スケジューラには実績情報も入力するのですが、それについては別の回で)。重要なのは、できるだけ計画に沿って作業する努力をすること、そして少なくとも「この計画どおりに作業をすれば、回答した納期どおりに完成させられる」という確信を持てるということです。
目標とすべき計画が存在しなければ製造現場は五里霧中で不安となり、各工程の前に仕掛かり品(中間在庫)の山を積み上げてでも前倒しで作業を進めたくなります。あるいは優先すべき作業を気付かずに後回しにしてしまうかもしれません。
「理想」の近似としての計画があれば、たとえその通りに実行できなかったとしても現状を「理想」からの差異として客観的に把握できます。だからこそ、製造現場は整然と機能するのです。そして計画の精度が高ければ高いほど、現場のレベルも引き上げられることになります。計画と実績の差を縮めるべく頑張ることが明確な目標となるのです。「どうせ実行できないのだから、精度の高い計画は要らない」と言い訳すべきではありません。
計画とはそういうものなのです。


図4 計画のレベルが現場のレベルを制限する

「データの設定が大変でとても使えない!」という声もあるでしょう。もちろん、生産スケジューリングに最高の成果を求めるのであれば、かなり詳細にモデリングし、大量のデータを用意することは避けられません。とはいえ、まずはシンプルなモデリングで限定的に運用し、スキルの向上に伴って次第にデータを詳細化していく、あるいは対象工程を広げるといった進め方をすれば、無理なく導入できるでしょう。
そこそこの運用でもそれなりのメリットは引き出せますが、生産スケジューリングの真価を発揮するためには気概と不断の努力が求められます。モノづくりとは、本来そういうものではないでしょうか。

変動要因とゆらぎ

現実の世界ではさまざまな変動要因や「ゆらぎ」が不可避なものとして存在するので、生産スケジューラがはじき出した「理論上の納期」をそのまま顧客に伝えるのではなく、安全のためにバッファ時間を加算して回答しましょう。
突発的に発生する変動要因には以下のようなものがあります。発生時に速やかに計画を更新するとともに、「ありうべきこと」としてあらかじめある程度計画に余裕を持たせておくことも必要です。
• 機械の故障
• 作業員の欠勤
• 緊急の飛び込み受注
• 資材入荷の遅れ
• 外注先からの納品の遅れ
一方、確率的に常に発生するゆらぎの要因には以下のようなものがあります。計画段階で時間的なバッファをある程度持たせることによって、これらを織り込んでおく必要があります。
• 気温や湿度による作業時間の変化
• 調達した原料の品質のばらつき
• 不良品の発生
• 人手による不定な作業時間


一般に完成までの工程数が多いほどゆらぎの影響を受けやすく、バッファも余分に必要となります。変動やゆらぎの程度はまちまちなので、工場によっては多くのバッファを必要とするかもしれません。そこで「結局バッファが必要になるのならば、精度の高い計画は要らないじゃないか」という意見もありそうです。しかしこれは、計画自体の精度の低さを補うためのバッファと、変動・ゆらぎを吸収するために論理的に不可欠なバッファを混同するために起こる誤りであり、精度の高い計画立案の意義を損なうものではありません。精度が高いからこそ、バッファを最低限で済ませられるのです。
変動やゆらぎを過度に意識して悲観的になる必要はありません。主に人的要因による変動やゆらぎが極端に多い分野を扱う「プロジェクト管理」では、一連の工程の各段階にある程度大きなバッファ時間を持たせなくては達成可能な計画が成立しませんが、各工程の作業時間を比較的安定して見積もれる製造業において事情は遥かにましです。各工程間のバッファは少なく抑えて、生産スケジューラを利用して総リードタイムが短いタイトな計画を立て、回答納期にある程度の余裕を持たせるといった使い方が通用するからです。当然ながら、どの程度計画をタイトにできるかは工場によって異なります。
製造業でも、ボトルネック工程の前には計画段階で十分なバッファを持たせなくてはならない場合がありますが、これについては次回以降で述べます。また変動・ゆらぎの多い分野(造船、大型装置製造など)での生産スケジューラの活用についても次回以降で。

生産スケジューラ

その処理量の膨大さと複雑さのため、通常は生産スケジューリングを手作業で行うことはありません。「生産スケジューラ(Production scheduler)」と呼ばれるコンピュータソフトウェアを利用します。
ちなみに、近ごろは”APS(Advanced Planning and Scheduling)”という米国製3文字語が出回っているようです。本来の言葉のニュアンスとしては生産計画(Planning)と製造計画(Scheduling)が組み合わさった高度なものを指しており、さらには製造業の遠大な理想とその実現を目指す意思を表す観念たり得るものだと思います。しかし現実には生産スケジューラと呼ばれているものをマーケティング用語として単に言い換えているに過ぎない場合がほとんどであり、理想が 矮小化されてしまっているのが実に残念です(世の中で多々見受けられる現象ですが)。また個人的には、”Advanced”という漠然とした言葉で意図的に煙に巻こうとする感じがどうも好きになれないので、本稿では敢えて「生産スケジューラ」と呼ぶことにします。
また、米国で”APS”というと、MRP計算の結果を基に山崩しをして実行可能解を導出するモジュールを指す場合が多く、はじめから有限能力で計算をする日本の「生産スケジューラ」とは隔たりがあると考えた方が良いでしょう。1990年代には米国でも数多の生産スケジューラのパッケージソフトウェアが販売されていましたが、ほとんどはERPベンダに買収されてしまい、MRPの下位モジュールと位置付けられました。そのため単体製品としての生産スケジューラはあまり出回っていないようです。
一方、日本ではなぜかしらそのような経緯が無かったため、日本の生産スケジューラは独自の進化を続けており、機能的には世界でもトップレベルにあるはずです。それはたぶんおそらくそれは、卓越した日本の製造業のハイレベルなニーズに日々応え続けているからでしょう。


日本製の生産スケジューラは単に自動スケジューリングするだけでなく、人が操作して手修正をするための機能(ユーザーインターフェイス)が充実していることも大きな特徴です。かつて文章を書くための紙とペンからワープロへ移行したのと同様に、日本においては手書きしていたガントチャートをコンピュータで描けるようにし、さらにそれを自動化していったという、実務者由来のボトムアップ的な発想が色濃く表れています。つまり「計画担当者の道具」として発展してきたのです。米国では上位システム(たいていはMRP)で“決めた”計画に一方的に従うトップダウン式であるのに対して、現場レベルでの自律的な改善努力を重視する日本の製造業の文化が端的に反映されており、興味深いところです。

繁なリスケジュール

生産スケジューラを利用するメリットの1つが、頻繁に「リスケジュール(再スケジュール)」できるということです。新たな情報を追加・変更して何度でも繰り返し短時間で計画を更新できるのです。
手作業で計画を立案する場合は、情報量・処理量が膨大過ぎて、先に挙げたさまざまな変動要因が発生したときに即座に適切に対応することは到底無理です。たいていは製造現場での対応に任せることになるために計画と現場が一致しなくなり、計画が軽視されるようになります。そうなると計画の価値は失われ、単なる「目安」に成り下がってしまいかねません。回答した納期も裏づけを失い、混沌(こんとん)に逆戻りしてしまうでしょう。
変動に応じてリスケジュールして実行可能な新たな計画を速やかに現場へ提供することで、製造現場と計画担当者の間の信頼に基づく好循環が得られるようになれば、混乱に振り回されることなく本来のモノづくりに専念できる工場を実現できるはずです。

生産スケジューラで何を目指すか

そもそも生産スケジューラを使って目指すものは何なのでしょうか。単に計画担当者の業務を軽減することでしょうか? 確かに余裕ができれば、現場、資材調達、営業などの各部門との間の人的な調整作業など、本来行うべき高度な仕事に専念できるようになりますが、それでも投資対効果は不十分と評価されるかもしれません。実用レベルの生産スケジューラ(パッケージソフト)であれば数百万円はしますし、効果的に運用するためのシステムとして構築するには1000万円を超えるからです。また、データを整備するために要する労力も決して小さいものではないでしょう。
生産スケジューラの直接的な効果は、資材調達から出荷に至るまでのリードタイム(総時間)をできるだけ切り詰めて工場内での滞在時間を短くすることです。リードタイム短縮は多くの製造業にとっては大きな目標であり、特に多品種少量生産の製造業にとっては、重要ではあるが達成困難な「悲願」といっても良いでしょう。
• 無駄な滞留在庫がなくなる
納期に間に合わせるために前倒しで作る必要もなくなるので、資材、仕掛かり品、製品の在庫を減らせます。無駄な資産が減ることでキャッシュフローが大幅に改善されます。
• 顧客の短納期要求に応じられる
業種によってはコアコンピタンスになり得るほど、受注リードタイムの短縮は競合他社と競争する上で重要な要因でしょう。
• 論理的裏づけのある納期回答ができる
生産スケジューラの回答納期はシミュレーションの結果なので、計画に従って作業をすれば納期達成できるのだという確信を持てます。工場内の秩序の確立に寄与するという副次的効用もあります。多くの工場にとって、これも実に価値ある効果とみなされ得るでしょう。
• 視覚化される
ガントチャートを見れば、工場の中で何がどうなっているのかが一目瞭然です。
• 製造現場任せにならない
製造現場での局所的な判断が、全体にとって良いとは限りません。何でもかでも「現場判断」にむやみに頼るのではなく、正しい棲(す)み分けが大切です。
• 整然とした製造現場
前述のように滞留在庫が減るので、各工程前に積み上がっている雑然とした仕掛かり品の山が小さくなります。
• ノウハウの脱属人化
計画担当者のノウハウがモデリングおよびルールとして客観化されます。担当者の配置換え、急病、退職の際にも慌てることもありません。
ノウハウをルール化して詰め込むことで、“コマンド一発”で何度でも速やかに質の高い計画を得られることも、生産スケジューラを使うメリットです。例えば、ボトルネック工程の切り替えを極力減らして最大限に休まず活用する計画を立てることで、工場全体のスループット(=生産量)を向上させることもできます(「TOCスケジューリング」などと呼ばれます)。手作業による計画立案では、変動要因発生時には過剰な仕掛かり在庫や納期遅れなどの代償無しには対応できないでしょう。
当然ですが、これらのことが生産スケジューラを導入するだけで実現するわけではありません。全体システムの適切な構想・実装のみならず、関係者全員の弛まぬ努力も必要です。しかしこれらは少なくとも、生産スケジューラがまさに狙(ねら)っている効果であり、生産スケジューラを利用せずに達成するのは非常に困難でしょう。生産スケジューラの「運用サイクル」が本格的に回り出したとき、そのインパクトに目を見張るに違いありません。
生産スケジューラの「運用サイクル」については、次々回以降であらためて言及します。
◇◇◇
ここまで理屈ばかりを並べてきた感がありますが、それだけではなかなか理解が進まないでしょう。そこで次回は簡単な生産スケジューリングのためのデータを作成して計画を立案するまでの流れを具体的に示すことで、実際の生産スケジューラがどのようなものであるかを感じ取っていただこうと思います。

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第3回:生産スケジューラの活用方法のバリエーション
2013.02.25

生産スケジューラの活用方法のバリエーション

生産スケジューラの導入を成功させるためには、そもそもどのような活用方法があるのか、そしてそれらにはどのような特徴があるのかを理解しておくことが重要です。
生産スケジューラの活用方法には、大きく分けると2通りあります。
1つは、納期予測や材料手配、要員計画等のために、シミュレータとして活用するもの、もう1つは、作業指示のために文字通りスケジューラとして活用するものです。

活用方法1 シミュレータとして

この活用方法では、作業指示を出すことよりも、未来にどうなるかを可視化し、事前に対策を講ずることに重点を置きます。
例えば、以下のような使い方です。
• 仮オーダーに対して、納期を予測し、回答する。
• 受注済みオーダーに対して、完成予定日時を予測する。納期に対する余裕度合いを日々確認し、余裕が小さくなってきているものについてはそれ以上遅れないように重点的に管理する。
• 設備や機械、作業者の負荷を確認し、問題があれば、残業や休日出勤、外注手配、さらには要員配置の見直しや多能工化の推進、設備投資などを検討する。
• 各資材が将来どのように推移していくかの予定を確認し、タイムリーに入荷されるように資材の調達を手配する。
いわゆる「見える化」に似ています。ただし、通常の見える化は「今どうなっているか」を見えるようにしますが、この場合は「将来どうなるか」を見えるようにします。これにより、問題が発生するまでまだ時間的な余裕がある間に、つまり、様々な手段を選ぶ自由度が残っている間に、しっかりとした措置を講ずることができます。いわゆる「泥縄」で後追いで対策するのに比べて、効率的に対処できます。
シミュレーションの精度
生産スケジューラを使うと、精度の高いシミュレーションが実現できます。例えば、ExcelやMRPで無限能力で山積みする方法では、製造量が多い時と少ない時との違いをシミュレーションできませんが、生産スケジューラで有限能力でシミュレーションすれば、設備や作業者の負荷を考慮した上で完成予定日時を算出することができます。有限能力かどうかだけでなく、他にも、段取り替えや作業者の負荷や、作業の優先順など、実際にモノを製造していく上での様々な操業ルールや制約条件を課してシミュレーションすることによって、より精度を高めることができます。
シミュレーションと実際の製造とがかけ離れていると、色々と問題が出てくる可能性があります。例えば、シミュレーションで当初予測した完成時期が実際とはズレていると、納期直前になって残業や外注などで対応することになるかもしれません。また、材料の実際の消費のタイミングがシミュレーションよりも早くなると、材料不足のために作業ができなくなるかもしれません。
また、シミュレーション上は特定の機械や作業者の負荷が高いように見えても、実際の製造では作業の順番を調整することで段取り替え(切り替え)を短縮しており、実際の負荷はそれほど高くないかもしれません。また逆に、シミュレーションでは負荷が低くても、実際には多品種少量生産による段取り替えが頻発しているかもしれません。段取り替えも考慮して正確にシミュレーションすることができれば、無駄な設備投資や要員増強を避けることができます。ただしそのためには、実際に各資源でどのような作業順序で製造するかまでシミュレーションする必要があります。
なお、精度が低くても、運用を工夫することである程度カバーできますが、無駄は増えます。
例えば、納期回答では、精度が多少低くてもその分安全率を大きめにして余裕を持たせた納期を設定すれば、最終的な納期遅れの確率を小さくすることはできます。しかし、その分、顧客に対して確約できるリードタイムが長くなるので、受注できず機会損失が発生するかもしれません。
材料の調達も同様で、余裕を持って早めに手配すれば安全ですが、その分在庫が増えることになります。
ただし、精度の高いシミュレーションを実現するためには、精度の高いデータが必要になります。それらのデータを継続的にメンテナンスしていくことも当然必要です。また、必要な制約条件を生産スケジューラが表現できない場合、何とかして近似しようとすると大変に苦労することになります。
まとめると、シミュレータとして活用する場合、精度がそれなりでも効果もそれなりに得られますが、頑張って精度を上げればその分効果が大きくなります。ただし、精度を高めるには、それに応じた労力や眼力が必要です。したがって、適切な折り合い点を見出すことが大切です。
ともあれ、「成功か失敗か?」という二者択一に直面するわけではないので、リスクの低い活用方法だと言えるでしょう。

活用方法2 スケジューラとして

この活用方法は、上で述べたシミュレータとしての活用に加えて、日程計画を立案し製造部門に作業指示を出すものです。
この方法は、さらに2通りに分けることができます。
1つは、現場裁量を認めず、指示の通りに製造させる「中央集権型」、もう1つは、一定の基準を設けて現場の裁量を認める「分権型」です。

活用方法2-1 中央集権型

この方法では、生産管理部門が実行可能な日程計画を立案し、それに基づき製造部門に作業指示を出します。製造部門は原則として作業指示の通りに製造します。
長所および短所としては、以下が挙げられます。
◆長所
• 計画と実際の製造との乖離が小さくなるので、予定と実績の乖離も小さくなる
• 生産リードタイムを極限にまで短縮できる可能性がある
• 製造部門にとっては無理な指示を出されないので責任が明確になる
• 工場全体さらにはサプライチェーン全体を通した最適な生産が可能になる(かもしれない)
◆短所
• 現場の納得する計画を立案できないと稼動できない
• 製造部門からの抵抗、反発にあう可能性がある
• マスターデータの精度と適切なスケジューリングロジックが必要
• 製造や運搬、調達の実行における緻密な統制が必要
簡単に言えば「成功すれば絶大な効果が得られるものの、逆に失敗のリスクも高い」という「ハイリスク・ハイリターン」な方法です。
一般に、生産スケジューラの導入では、本稼働直前になって問題が多発するという「実稼働直前の壁」に直面することがありがちですが、この方法の場合は特にその可能性が高くなります。
この壁を突破するには、「的確なパッケージ選定」「高度なパッケージ利用技術」「しっかりした導入体制」が必要です。

活用方法2-2 分権型

この方法では、製造部門は、生産管理部門からの作業指示にある程度従いますが、一定の裁量権を持ちます。
たとえば、「1日の中で作業の順番を入れ替えてもよい」という具合です。
長所および短所は以下の通りです。
◆長所
• 計画と実際の製造との乖離が(そこそこ)小さくなるので、予定と実績の乖離も(そこそこ)小さくなる
• 生産リードタイムを(そこそこ)短縮できる可能性がある
• 製造部門にとっては、無理な指示を出されるケースが減り、また一定の自由度も確保できるので、抵抗、反発が比較的少ない
◆短所
• マスターデータの精度やスケジューリングロジックのチューニングはそれなりに必要
• いったん「そこそこ」で満足してしまうと更に上を目指しにくい(?)
つまり、「完全に自由にしてしまうと日程計画の意味が無くなってしまうが、かといってがんじがらめにするのも非現実的」という場合のための、「理想と現実の間の折衷案」ともいえます。

どの活用方法を選ぶべきか?

これらの活用方法の特徴を踏まえた上で、自社にはどの方法が適しているかを見極め、選択しましょう。
「スケジューラの導入は難しい」という場合、上の中央集権型を指していることが多いのではないでしょうか? この方法は確かに非常に難しく、導入を成功させるには、高度な組織マネジメント、適切なパッケージ選択、およびその利用技術の確保、マスターデータの精度、継続的なメンテナンス、等が必要です。どれか1つでも欠けると、失敗確率が高くなります。特に、不適切なパッケージを選んでしまうと、まず間違いなく失敗します。導入プロジェクトを慎重に進める必要があり、稼動までの期間も長くなります。また、そもそも製造自体に不確定要素が多く、予定通りに製造できないことが多い場合には、中央集権型の運用はまさに「労多く益少なし」です。
ただし、完全に統制できる職場で、かつ、揺らぎが少ない(あるいは小さくできる)のなら、究極的にリードタイムを短縮できる可能性があります。
分権型の場合も、やはりそれなりの手間や労力は必要です。そもそも生産スケジューリングシステムの導入は、関与部門が多岐にわたり関係者の利害が複雑に絡むため、マネジメントの難しいプロジェクトです。導入を成功させるには中央集権型と同様の項目が必要です。そこまで究極的ではありませんが、油断は禁物です。現場に裁量を持たせるとしても、そもそも計画がデタラメなら作業指示を出す意味がありません。それなりの精度が必要です。
まとめると、無難なのは「シミュレータ」、頑張ってやるなら「分権型」、究極的には「中央集権型」、というところです。

導入効果を大きくするには

いずれの活用方法でも、生産スケジューリングシステムはあくまでもツールに過ぎません。生産スケジューラの導入効果は、生産スケジューラが立案したスケジュールを基に、人間がどのような活動を行うかによって変わってきます。
たとえば、特定のスキルの作業者が不足しているとわかっても、あからさまにすると角が立つからと情報をオープンにせず、多能工化を進めなければ、得られるはずの効果が得られなくなります。
また、立派な計画を立案していても、製造や搬送がそれに従わなければ意味がありません。とはいえ、きめ細かで膨大な指示に忠実に従うのは、現実的にはなかなか大変です。実行系における何らかの仕組みが必要なケースもあります。
どんなパッケージを選ぶべきか
これまで述べてきたように、スケジュールの精度が高い方が効果も高くなります。したがって、工場の様々な制約・制限を緻密に表現できるパッケージの方が良いということになります。特に、中央集権型を目指すのなら、相当なフィット性が必要です。
その見極めのためには、プロトタイプを作成し、実際にパッケージを評価することが大切です。ガントチャートだけを見ればどれも同じ、と思われるかもしれませんが、実際には各パッケージにはそれぞれの特徴があり、向き・不向きがあります。単に「安いから」「実績No1だから」「画面がきれいだから」という理由で選ぶのは非常に危険です。
しかしながら、どんな機能が必要なのかは、事前にはなかなかわかりにくいものです。システム構築を進めて本稼働直前に計画結果を確認した時に、「このパッケージではダメだ」ということが判明することも、決して珍しくありません。また、運用中に様々な変更があり、新たな要求が発生することもあります。というよりむしろそれが普通です。
したがって、当初は想定していなかった事態にも対応できるような「懐の広さ」「柔軟性」がパッケージには必要です。
• 今後、この工場にどんな変化が起こりうるだろうか?
• それに対応するためには、システムにはどんな仕組みが必要になるだろうか?
• その場合、このパッケージだと、どうなるだろうか?
そのような想像を働かせて、慎重にパッケージを選定すべきです。

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