年号とともに、頭の切り替えも、、

平成最後の年の流行語大賞は “そだね~” だそうで。これに触発されてか、私の耳に残った言葉は、“フェイクニュース”。 “フェイクニュース”を“そだね~”と拡散する、今のネット情報社会の危うさを思い起こしたからです。“フェイクニュース”の発信者は、それがフェイクであることを認識していますが、受け手側は、フェイクなのか正しいのか、わからない。情報量が増えれば、その質は落ちる、ぐらいならまだしも、悪貨が良貨を駆逐するみたいなことにならないように、、と、、。

ものごとの“真贋”、“正誤”を見極めることって、そう簡単ではありません。生産管理・在庫管理の世界でも、そうです。巷にあふれる関連書籍、Websiteに並ぶ数々の諸説・解説、コンサルタントの指導・手法、成功事例の物語、生産管理・在庫管理用ソフトの宣伝文句、、などなど、すべて正しいのか、、うーん、怪しいのもありそう、、。発信側は正しい情報を発信しているつもりなのでしょうけど、、。

この種の情報は、概ね、いいことしか書いてありませんので、ついつい、“そだね~”となってしまいます。きちんと理解できているわけではありません。なんとなく“そだね~”と。でも、同じような“説”、“話”が何回か、複数個所で目にすると、いつの間にか“定説”になったりします。

世界中に知れ渡ったトヨタ生産方式。多くの人がその方法と効用を認めます。しかし成功事例となると、限られた件数しかありません。トヨタ生産方式は本当に使えるのか? これだけ知名度のある生産方式でもグレーな部分があります。

生産管理のコンサルタントは、生産計画が基本だ、と強調します。生産計画がころころ変わるのであれば、毎日でも生産計画をつくり直しなさい、と。ぐずぐずしていると、“あなたの会社の管理能力は低い”、といわれて、ピリオド。

生産管理について物申すグループがもう一つあります。コンピュータ屋さんです。昨今、生産管理システムはコンピュータ無しでは成り立ちません。見込生産であろうと、受注生産であろうと、。生産管理をスムーズに行うためにコンピュータを入れようと思っていたら、「コンピュータに合わせて、管理の仕方を変えてください」、といわれて「えっ!??」。コンピュータ屋さんからみると、コンピュータに合わせて現場を管理することが基本、のようです。

少々強引ですが、生産管理にかかわる人、主義・主張を3つのグループに分けてみました。その他に、一気通貫生産方式とかAPS(Advanced Planning and Scheduling)なんていうのもありますが、論理性がなく、現実的な実行可能性はほとんどありませんので、省略します。

3つのグループを次のように仮称します。

① トヨタ生産方式基準―JIT系
② 生産計画基準―MRP系
③ コンピュータシステム基準―SE系

①のJIT系はトヨタ生産方式をベースにした生産管理方法。②の生産計画基準の生産管理は、最もオーソドックスなスタイルで、大量生産の進化の過程で形成されてきました。大量生産では、材料や部品をいかに準備するかが重要。そのためにMRP(Material Requirements Planning)が開発されました。MRPは部材の数量確保ですが、能力や時間も考慮しないと、生産計画に繋がりません。そのため、MRPII(Manufacturing Resource Planning)が開発されます。その後、いろいろ改良が加えられて、現在の生産計画をベースにした生産管理手法となったと考えられます。これをMRP系と呼んでおきます。そして、③、コンピュータ屋さんが主張するコンピュータシステム基準の生産管理をSE(System Engineer)系と呼んでおきます。

この3つ、ベースが異なるので、それなりの違いはあります。しかし共通点もあります。どれも生産管理を対象にしていること。これに異論はないと思います。その他に、共通事項は?

その他の共通項とは? 生産管理の本質にかかわることです。実は生産管理でもっとも重要な要素が抜けているんです。最も重要な要素って? そう、そう。バラツキです。

JIT系はバラツキの排除を条件として掲げています。そういう意味では、トヨタ生産方式の適用範囲は明確に示されているわけです。バラツキがあったのでは(実際は3%程度のバラツキは許容しているようですが)、平準化もかんばん方式も成り立ちません。ですから、トヨタ生産方式がうまくいかない主な理由は、バラツキ排除という条件を満たしていないからだ、と。では、バラツキを排除するためにはどうするか。そこで出てくるのが、ムダの排除、標準化、タクト生産、ラインバランス、、、等々の現場改善。ところが、この現場改善がうまくいかない場合があります。そんな時、JITのコンサルタントは、「現場改善力がない」とか「やる気がない」とか言いうわけです。

実は、バラツキの根源の多くは、社内ではなくて、社外にあるんです。主なものは需要の変動です。この種の変動は現場改善だけでは防ぐことはできません。別の手段でこの変動を遮断できるかどうか、これが、トヨタ生産方式がうまくいくか行かないかの大きな要素になります。具体的には、生産計画の固定です。生産計画が固定されていないと平準化はできません。平準化ができなければかんばん方式もうまくいきません。生産計画を固定できるのは見込生産だけです。つまり、トヨタ生産方式は見込生産と生産計画固定が絶対条件。ほとんどのJIT系コンサルタントは、この最も重要で基本的な条件を知らないようです。この条件が満たされない生産環境でJIT系コンサルタントを入れたりすると、かなりの確率で、うまくいきません。

MRP系もSE系も、実は、ある期間(月次生産なら1カ月間)生産計画を固定しないとダメなんです。ところが、生産計画はコロコロ変わっても大丈夫ですよ、って言ってるんです。それを可能にする技術があるのか、というと、何もない。生産管理のスピードを上げて、とかなんとか、パットしない方策を掲げてはいますが、、、。

3つに共通していること。それは、生産管理では避けることのできない変動、バラツキへの対応がない、ことです。但し、JIT系は、バラツキ排除を条件に掲げておりますので、そこをきちんと守れば問題はないでしょう。MRP系とSE系は、あたかも、バラツキを許容するかのような説明をしながら、具体的な方策は何もなし。これが混乱の元になってるんですね。

バラツキ、変動に対処する機能がないこと。これが現在の生産管理が抱える中核問題。解決の方向はどちらにあるのでしょうか。JIT系で行くのか、MRP系で行くのか、それともSE系か、、。

私見を述べましょう。JIT系は適用条件(バラツキを許容しない)をきちんと守ることに留意して、このまま改善を積み重ねていけばいいかなぁ、と思います。

MRPも見込生産にしか使えません。受注生産で使っている話も聞きますが、うまくいくわけありませんね。もともとバッチ処理が条件ですから、そのバッチをいくら小さくしても受注生産には使えません。もともとMRP系が時間管理に向いていないことは、生まれ育ちをみれば明白。先行き、利用範囲は狭くなっていくでしょうね。

残るはSE系。実は、SE系もMRP系の流れを汲んで、生産計画基準の生産管理システムになっています。計画変更に対応する努力は続いておりますが、コンピュータ側で対応できる部分は限られていて、生産計画を頻繁に変更しなければならない環境では使えません。SE系もダメか、、。

で、どうするか。

問題の本質は、何だったんでしょうか? トヨタ生産方式はバラツキを排除しました。それにより、生産ラインのメカニズムがすごく簡単になったんです。例えば、1工程10分、10工程の直列ラインでは、生産リードタイムは100分。投入から100分経過以降は10分に1個のペースで完成する、、、という具合に。

で、10分の処理時間が標準偏差2分のバラツキがあったらどうなりますか? 標準偏差が3分だったら、、? 1工程の処理時間が異なる製品が入り混じって投入されたら、、? 生産リードタイムも単位時間当たりの完成数も、判らなくなります。こうなると生産管理は成り立ちませんね。

バラツキが少し加わると生産管理は崩壊してしまいます。これが、現在の生産管理システムが抱える根本的な弱点なんです。AI(人工知能)技術が脚光を浴びているこの時代に、ですよ。

ちょっと、視点を変えてみます。今年は早くから、よく台風が来ました。台風の進路予想、最近は精度が良くなりましたね。気象衛星などの情報収集能力、過去のデータの蓄積、処理能力の高いコンピュータ、、などなど、関連技術の進歩があったためでしょう。

これから投入されるオーダーの進路予想をしてみましょう。仕様が決まっていて、通過する工程もわかっています。投入工程の前にはどのようなオーダーが投入を待っているのか、工程仕掛がどの工程にあるのか、、、などなど、必要なデータをとることは容易にできます。新たに投入するオーダーがいつ完成するかを予測するわけですが、台風の進路予想と似ていると思いませんか。生産ラインの中で起きる現象ですから、気象現象に比べれば、必要なデータ量は微々たるものです。パソコンでも処理できるんじゃないかな。

納期予測は、台風の予想のように確率分布になります。例えば、平均20日、標準偏差2日なんていう具合に。26日なら99.9%、24日なら97.7%、22日なら84.1%の確率で、、と。今の納期って、間に合うか、間に合わないか。つまり、0%か100%か、でしょ。それさえもはずれますからね、、。

品質管理の世界では、100年も前から、統計理論を使ってきました。同じ生産現場で、生産管理ではなぜ統計理論を使わないんでしょうか? これだけ、IT技術が進歩しているわけですから、技術的な問題はないと思いますよ。問題があるとすれば、、、。

コンピュータの使い方を根本的に変える必要があるのではないでしょうか。生産計画基準ではなく、需要基準へと。そのためには、生産ラインの物理特性をベースにしなければなりません。バラツキがあると、稼働率が60%~70%ぐらいから生産リードタイムは急激に長くなります。この特性をベースに、投入されるオーダーをリアルタイムに処理する、そんな生産管理システムにする必要があるのではないかなぁ。

稼働率に対する生産リードタイムの計算はそれほど難しくはありませんし、シミュレーションで求めることもできます。実績値を蓄積し、フィードバックすることもできます。生産リードタイムをある時間以下に制限するのも簡単です。ラインにある工程仕掛数を制限すればいいのです。稼働率が上がってくると投入口に待ち行列ができます。その長さで、投入待ちの時間が分かります。生産リードタイムも分かりますので、受注から完成までの時間の確率分布を計算することができます。

コンピュータって、このような計算、得意ですよね。SE系のみなさま、生産管理システムを入れてもうまく動かないのは、管理が悪いからだ、なんて人のせいにしないで、コンピュータの使い方を替えることを考えてみてください。おもしろいと思いますよ。年号も替わることだし、、。

“そだね~”って、言ってもらえるかなぁ~。

では、良いお年を。

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