“一気通貫生産方式”考、初めに、、

前回、次代の生産管理の課題は「受注順生産問題」と「処理時間変動問題」ではないか、と申し上げましたが、さっそく、反論の声を耳にしました。

「そんな問題はとっくに解決済みだ」
「一気通貫生産方式を知らないの?」

一気通貫生産方式って、もちろん聞いたことはありますよ。数年前に、ちょっと、調べてみたんです。思しきところに何回かメールして、質問したこともありますが、まともな応えはありませんでした。で、またもや、一気通貫生産方式が目前に現る。「受注順生産問題」と「処理時間変動問題」は一気通貫生産方式で解決済み、と言われれば、多少は“反応”せざるをえません。前回調べたときの結論としては、裏付ける論理的根拠のない、思い付き的生産方式である、でした。ですから、一気通貫生産方式がふたつの問題を解決するとは信じがたい話なんですがね。でも世の中には、100%ダメ、ということもなく、ダメなりにも何かヒントになることがあるかもしれないという寛容の心をもって、一気通貫生産方式を見直してみますか。

ということで、肯定的且つ公平に、そして、物理的論理性を重視して、一気通貫生産方式をレビューしてみたいと思います。で、手始めに、一気通貫生産方式を推進しているWebsiteを覗いてみました。なるほど、なるほど、いいこと書いてありますな。その一部を拾ってみると、、

$$ 一気通貫生産方式とは多品種少量生産や在庫の削減、超短納期生産など現代の製造業が抱える問題点を解決するために生まれた新しい生産方式で、生産の仕組み改善(モノの流れと情報の流れを革新する)を通じて低コスト体質を作り上げて行く生産革新手法です。$$

$$ 一気通貫生産では圧倒的なリードタイム短縮を実現することにより、見込みではなく確定受注で生産することを可能にするため、混乱のない安定した生産を行うことができます。$$

$$ いわゆる多品種少量生産企業や短納期を要求されている企業、急な減産で生産ラインが混乱している企業、製品ライフサイクルが短い企業などには最適な生産方式と言うことが出来ます。$$

$$ 一気通貫生産方式とは詳細な生産計画に基づいて停滞することなく物を流していく生産方式で徹底的なリードタイム短縮を実現する方法。$$

ポイントになりそうなところを抜き出すと、
*多品種少量生産や在庫の削減、超短納期生産など現代の製造業が抱える問題点を解決する
*各工程の通過時間は詳細な生産計画で規制していく
*詳細な生産計画に基づいて停滞することなく物を流していく生産方式
*圧倒的なリードタイム短縮を実現する

なるほど。字面から、「受注順生産問題」と「処理時間変動問題」は解決済み、と読み取れますね。“肯定的且つ公平に、そして、物理的論理性を重視して”、見ようと思うのですが、直観的には、APS(先進的スケジューリング)と同じような雰囲気が漂ってますね。

APSは「詳細スケジューリング」を中核に据えていますが、それが実現する可能性がある条件とは、
*見込生産
*ある期間の生産計画固定
*スケジューリング時の生産条件と実行時のそれとの乖離がない(極小である)こと
といった、限られた範囲だ、ということを申し上げました。で、実際は、そうでない環境が圧倒的に多く、端的に言えば、“多品種少量生産や超短納期生産”環境では、APSが主張する実行可能な「詳細スケジューリング」の立案は物理的にほぼ不可能だ、と。一気通貫生産方式も上記のようなことが、実現できるのかどうか、APSが掲げた「詳細スケジューリング」がダメなのと同様に、一気通貫生産方式もやっぱし、ダメか、といった雰囲気が、ねっ、似ていると思いませんか、、。

“肯定的且つ公平に、そして、物理的論理性を重視して”観てゆきたいと思いますが、もうひとつ感覚的なことを付け加えますと、この一気通貫生産方式というネーミング、“イマイチ”ですね。50年前なら、まぁっ、いいかな、っていう感じですが、今どき、こんな名前で出ています、ですか。一気通貫って、麻雀用語ですよね。その意味を広げて生産方式に使ったことは、まぁ、いいでしょう。いやむしろ、投入して一気に完成まで流す、という生産のやり方を端的に表現している、言葉の使い方としては、ある種のインパクトがある、とも感じられるわけです。

で、実は、そこが問題じゃないでしょうか。50年前なら投入して一気に完成まで流すというやり方は、ある意味で、理想的な生産ラインだ、と受け止められたんじゃないかと思います。一気通貫生産方式を取り入れれば、詳細な生産計画に基づいて停滞することなく物を流し、徹底的なリードタイム短縮が実現できる、と。何せ、大量生産時代。つくれ、つくれの時代でしたからね。工場内部は仕掛在庫の山、生産リードタイムは数カ月がザラ。飛びつく人は、結構いたんじゃないでしょうか。

が、その後市場環境は変わり、多品種少量生産時代に。売れるモノしかつくっちゃいけなくなりました。散々苦労した生産リードタイムの短縮、在庫削減。それなりに効果はありましたが、あるところで停滞。そしてJITだ、かんばん方式だ、在庫ゼロだ、、という言葉に疲れてきて、原理的な限界を経験しました。そんな空気が漂う中、それが簡単にできるかのようなネーミング。一気通貫生産方式。このネーミングが、かえって、中身のなさをほのめかし、胡散臭い雰囲気を醸し出す、、。

ネーミングはさておき、この一気通貫生産方式、生産方式の主流ではありません。傍流の末流をちょろちょろと流れている、っていう感じでしょうね。時間を割くのももったいない気はしますが、話題としては面白いかも、、。少しまじめに捉えるならば、現在の生産管理が抱える本質的な問題と関連しているのではないか、なんていう面もあるかもしれない。となれば、“肯定的且つ公平に、そして、物理的論理性を重視して”、見直してみる価値もあり、、かな、、。

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