不確定要素を扱える生産理論はあるか

DBR(ドラム・バッファー・ロープ)を支える理論はありませんでした。というと、TPS(トヨタ生産方式)には理論はあるのか、と聞かれそうです。実は、TPSにはきちんとした理論があるんです。

1をみてください。P1~P1010工程直列ラインを例に、TPSの生産理論についておはなしします。TPSはバランスラインを目指します。理想的にはラインバランス100%。なので、P1P10の各工程の処理時間は全部同じ。生産ラインは各工程の処理時間(PT)と工程数(Np)で定義できるんです。

1  10工程直列生産ライン

PTNpで定義された生産ラインで重要な特性は何か? と聞くと、、。生産能力に工数、治工具、部品に工程仕掛、生産リードタイム、それから、、歩留まりに機械の故障、生産計画の変更、特急オーダーの飛び込み、、いやいやまだまだある、、。つぎからつぎと出てきます。が、本当に必要な特性項目は次の3つ。

①フロータイム(FT);投入から完成までの時間

②生産率(TH):単位時間当りの完成数

③工程仕掛(WIP

FTは次の式で求められます。 FT=PT x Np

THは次の式で求められます。 TH=1/PT

FTTHWIPの関係は次のようになります。 WIP=TH x FT

これだけ。簡単でしょ。ほんとかな、って疑ってますか? 数値を入れて確かめてみましょうか。

1工程の処理時間PT=10分、工程数Np=10 としてみます。投入はPTに合わせて10分ごとに1個投入することにします。FTTHWIPを計算してみます。

FT=10() x 10 = 100()

TH=1/10()

WIP=100() x 1/10()10()

生産率は10分間に1個、生産リードタイム100分、その時抱える工程仕掛は10個、ということになりますね。10分間に1個投入するということは、生産能力に対しては100%の負荷をかけている、ということになります。 

投入負荷率をρとすると、FTTHWIPは次のようになります。

FT=PT x Npt

TH=(1/PT) x ρ

WIP=TH x FT

ρ=50%とすると、次のようになります。

FT=10() x 10 = 100()

TH=1/10() x 50(%)=1/20()

WIP=100() x 1/20()5()

ρが100%以上ではどうでしょうか。この場合、投入口で待ち行列ができるだけで、これをWIPの増加ともみれますが、工程には入っていきませんので、投入が制限されるとみることもできます。ここでは後者の視点で捉え、上記の適用範囲をρ100% としておきます。

これって、理論というほどのものじゃありませんね。ちょっと考えればわかる、常識の範囲。これに、かんばん方式のかんばん枚数を計算する式を加えれば、TPSの理論武装は、まぁ充分でしょう。

平準化、バランスライン、ムダの排除、一個流し、標準作業、サイクルタイム、、、TPSで出てくる格言めいた言葉の数々は、どれも、この簡単な生産ラインの原理が働くようにしているのだ、とみると、TPSの理解も進むのではないかと思います。

現実には、変動がまったくない、なんていうことはありえません。TPSでは実用的な許容変動幅は3%以内、なんて言ってますが。それが5%になったからって、急にTPSが成り立たなくなるわけではありませんが、変動をありのまま受け入れるとなったら、それはダメ。変動が大きくなると、前記の簡単な生産ラインの基本式が成り立たなくなるんです。

一般の生産環境は、TPSが成り立つ場合よりも、成り立たないほど変動が大きい場合が圧倒的に多いんです。そのような環境にTPSを導入すると、全然ダメかというとそうでもなく、めちゃくちゃな生産ラインが多少はましになったり、の効果はあるわけです。が、トヨタを再現するほどうまくはいかないんですね。

変動を受け入れた生産理論を探し求めた背景は、TPSの限界に気付いたことでした。で、TOCDBR(ドラム・バッファー・ロープ)に興味を惹かれたわけです。約10年、TOCを研究してきましたが、生産理論らしきものは何も見つからなかったというわけです。

DBRだけじゃなくて、他の生産方式も調べてみました。一気通貫生産方式っていうの、ありますね。説明は次のようになっています。

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一気通貫生産方式とは、多品種少量生産の進展や商品ライフサイクルの短期化に伴い、短納期化のニーズが高まっている時代背景の中から生まれた生産方式である。初工程から最終工程まで停滞を排除し一気に生産を進めることから一気通貫生産方式と命名された。

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「多品種少量生産の進展や商品ライフサイクルの短期化」はさまざまな変動を伴います。一方、「初工程から最終工程まで停滞を排除し一気に生産を進める」ためには変動を排除しなければなりません。この矛盾をどのように解消しているのか。背後に、変動を許容する生産理論があるのかな、という淡い期待をもって調べてみました。

やっぱ、何もありませんでした。当該会社にも問い合わせてみましたが、的外れな回答だけ。一気通貫生産とは、フィクションによってカモフラージュされた幻想である、と言ったらいいすぎかな。

生産スケジューラー。使っている方も多いんじゃないかと思います。効能書きをみますと、多品種少量生産に対応し、日程計画等の変更に柔軟に対応、、、といった説明が、どのソフトにもあります。不確定要素をどのように取り入れているのか、興味がありますよね。こちらの方は、論理ロジックを使ったコンピュータソフトですから、一気通貫生産のようなフィクションとは違って、ちゃんとした理論や方法があるんじゃないかな、と。

何社か、スケジューラーのメーカに聞いてみました。こんな質問で。

「納期を確率でだせますか?」

例えば、105日の納期なら70%の確率、107日なら95%の確率、というような。できる、と答えたところはどこもありませんでした。OKかダメかの答えしか出せないとのこと。

変動分を見込んで、加算する程度のことならどのスケジューラーもやっているようですが、不確定要素を入れたスケジューラーというのは、まだ世の中にはないようです。人工知能がもっと発達したら、出てくるのかなー。いやいや、その前に生産理論みたいなものがないと、プログラムの組みようがない、、のかも、、。

変動(不確定要素)を排除したTPSの生産理論は、常識で考えてもわかるほど、簡単ですが、不確定要素が入ってくると途端にむずかしくなる。コンピュータをもってしても、うまくいかない。まだ、発展途上にあるんですかね。

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