DBRを支える理論はあるのか

TPS(トヨタ生産方式)の失敗例が増えるに従い、TPSの限界が知られるようになってきました。バラツキ、変動を許容しないTPSは、変動が避けられない生産環境ではうまくいかないんですね。そんな時、出てきたのが、TOC(制約理論)のBDR(ドラム・バッファー・ロープ)。バラツキ、変動があってもいいよ。ボトルネックに集中して管理すればいいんだよってすごく簡単。

知りたかったのは、DBRを支える理論でした。バラツキ、変動を許容しながら、生産ラインをうまくコントロールする論理的根拠は何か? しかし、理論らしきものは何も見つかりませんでした。

DBRって、本当に機能するのか? 巷でも疑問の声が聞かれました。「多くの生産ラインは、ボトルネックは複数あり、しかも動き回る。どうするんだ?」

タイムバッファーも、入り口工程とボトルネック工程間だけではなく、流れが集中する工程には組立バッファー、出荷スケジュールを守るための出荷バッファーと3種類あって、ちょっと規模の大きな生産ラインでは、バッファーの数がたくさん出てきてしまう。タイムバッファーごとにスケジューリングをしなくちゃいけません。タイムバッファーの時間をどのように設定したらいいのか、バッファー間の整合性をどうとるのか、、、。ボトルネック工程だけスケジューリングすればいいよ、なんていう話ではなくなって、複雑怪奇なことになってきたんですね。

で、タイムバッファーを出荷バッファーだけにするS-DBR(Simplified DBR)が登場するわけです。DBRの簡易版なんですが、私の関心事は、根本問題が解決されたかどうか。

S-DBRでは「計画負荷」という考え方が出てきます。すでに投入済みのオーダーがどのくらいあって、ラインアウトまでどのくらいの時間がかかるのかを知り、出荷予定が守れるかどうかをみるわけです。計画負荷の算出基準は、ボトルネック工程の能力です。その能力で計画済みのオーダーは何日分あるか、これが計画負荷ですね。

ここで、前回指摘した、ボトルネック工程の稼働率(負荷率)と待ち時間の関係が考慮されているのかどうかがポイントになります。S-DBRの提唱者のエリ―・シュラ―ゲンハイムの著書を丹念に調べてみたんですが、稼働率と待ち時間については何も書いてありません。フロータイムの跳ね上り(稼働率が70%、80%と高くなると指数関数的にフロータイムが長くなる現象)についての言及がありますが、S-DBRには反映されていないようです。

ということで、S-DBRもやっぱし、ダメ。TOCでよく見かける5ステップ。
ステップ1;システムの制約条件を見つける
ステップ2;制約条件を徹底活用する
ステップ3;制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる
ステップ4;制約条件の能力を高める
ステップ5;制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る

これも、ほとんど、使いものにならないということですね。簡単に言えば、DBRは生産ラインの能力はボトルネック工程の能力で決まるという表面的な1現象から想起された方法論で、それを支える論理的根拠がないとなれば、DBR、S-SBRは、極めて限られた条件下では機能するかもしれないが、一般的な生産ラインの管理方法とはなりえないんじゃないでしょうか。

科学的、物理的根拠のないもっともらしい話は、世の中には、ごまんとあります。生産管理、在庫管理には、この手の話が多いように思います。

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