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 在庫流動管理 [基礎編 その2] 抄録

  はじめに;在庫管理論統一への道筋
  第1章 在庫流動管理の基本
  第2章 在庫流動モデルでの補充発注方法
  第3章 定件発注方式
  第4章 定期発注方式
  第5章 定量発注方式
  第6章 定件・定期・定量発注の比較
  第7章 現行在庫管理の成り立ちと「在庫流動管理」
  第8章 “かんばん方式”との比較
  まとめ 在庫管理論の統一

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はじめに;在庫管理論統一への道筋

「在庫流動管理 [基礎編 その1]」に続いて、[基礎編 その2]を発行します。[基礎編 その1]は、基礎的、原理的な部分に焦点が当たってしまい、あまり、おもしろい内容ではなかったかもしれません。“在庫半減達成の秘策”とか“在庫ゼロをめざして”、、そして“在庫管理システム導入ですべて解決”など、など、巷には興味をそそる美辞麗句があふれておりますので、、。

在庫管理ではなく、「在庫“流動”管理」としたところに、ちょっとした“意地”があります。在庫そのものではなく、

「在庫の“流れ”を管理するんだよ!」

と。“流れ”という概念は特に珍しいものではありません。サプライチェーンでは、「上流から下流にものが流れる」という表現をよく使います。[基礎編 その1]では、ボトル茶の事例を観察しながら、最も基本的な一筋の“流れ”を捉えてみました。“流れ”をあるがままに記述しただけですので、何の変哲もない当り前の“流動現象”、、。

しかし、よくみると、揺れながら動く“流れ”に一定の繰返しがあることがわかります。それをモデル化したのが「在庫流動モデル」です。論理構造を「在庫流動方程式」としてまとめ、確率分布から成る数理モデルを導き出しました。

しかし、現実の“流れ”は複雑です。サプライチェーンのあらゆる場面に適用できるように、在庫管理やサプライチェーンに内在する特有の条件を「在庫流動方程式」に取り込む必要があります。

一般的に在庫管理は、定期不定量発注とか定量不定期発注など、発注方法で特徴付けられます。「在庫流動方程式」が基本としたのは、

“需要があった(出荷した)分を直ちに補充発注する”

です。1人の客が買ったら、直ちにその分を補充発注する。1件の注文が来て出荷したら、直ちにその分を補充発注する。この補充発注方法を“定件発注”と呼ぶことにします。

“定件発注”を“定期発注”や“定量発注”に変えたとき、「在庫流動方程式」にどのような修正、追加が必要になるのか、検討してまいります。

そして、最大の課題は、“かんばん方式”との融合です。

製造業のみならず、流通・販売はもとより、郵便事業、官公庁、医療業務、、、とあらゆる産業、業種、業態に導入が試みられました。生産管理や在庫管理に直接かかわりのない方も聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、報じられる成功事例の裏に、それをはるかに上回る失敗事例があることはご承知の通り。

“かんばん方式”は、“トヨタ生産方式”の中でしか使えないのだ、、。

“かんばん方式”は、トヨタに匹敵する優秀な企業でしか使いこなせないのだ、、、。

一般の在庫管理とは“別もの”である、という認識が定着していった”かんばん方式“を、「在庫流動方程式」からみたら、どのようにみえるのでしょうか。

不思議なことに、違和感はほとんどありません。

「在庫流動方程式」で識別した“受注件数/時間”と“数量/件”は、“かんばん方式”では、

受注件数/時間 → かんばん枚数
数量/件     → 収容数

となります。そして、“収容数”は一定。消費数も“平準化”生産で一定なので、かんばんの総枚数も一定。

なんのことはありません。「在庫流動方程式」の変動要素をゼロにすればいいだけ。「在庫流動方程式」の簡易版が“かんばん方式”、でもあります。

“かんばん方式”からみれば、変動要因を扱えるように拡張したのが「在庫流動方程式」。多少のギャップはあるかもしれませんが、両者間の行き来は自由です。

「在庫管理論」統一への道筋がみえてきました。

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第2章 在庫流動モデルでの補充発注方法

2・1 在庫管理側で決めること

在庫流動管理[基礎編その1]では、受注し、出荷した時、直ちに出荷した分を補充発注するという条件で、「在庫流動モデル」を組立ました。それをベースに「在庫流動管理」の論理的枠組みを構築してまいりました。現行在庫管理の慣行をできるだけ尊重しつつ、実務的条件をどのように取り込んでいくか、検討してまいります。

「在庫流動モデル」の基本を「在庫流動方程式」で確認しておきます。

[初期在庫] ={補充在庫}+((実在庫))=[流動在庫]

{補充在庫}={発注量}+{需要/納入LT}
       ={発注量}+{(数量/件)*(件数/納入LT)}

ここで、[ ]、( )、(( ))、{ }は下記の意味で使っています。

[xxx]   定数
(xxx)  確率変数
{xxx}  複数の確率変数から成る合成確率変数
((xxx)) 従属確率変数

{補充在庫}の平均・分散式

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記号の意味は次の通りです。

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「在庫流動方程式」の中には、市場の需要変動項目と在庫管理側で操作できる項目があります。市場の需要変動はそのまま受け入れるしかありません。在庫管理レベル向上策として、在庫管理側でできることはどんなことでしょうか。

在庫管理側でできることでもっとも重要なことは、これまでの検討経過からも推察されますように、「適正在庫」の設定、および補充発注のタイミングと発注量の決定です。ここまでは、“受注した時に、受注した量”、つまり、1件受注した時に、その受注数量を補充発注するという条件で分析してまいりました。

しかし、受注件数が多い場合、頻繁に補充発注しなければなりません。そのようなとき、1件ずつ発注するのではなくて5件とか、10件とか、まとめて発注する方が効率的です。

2・2 発注方法の選択;時間か量か件数か

少し考えてみましょう。まとめ方は受注件数だけでしょうか。現行の発注方式をみると、定期発注とか定量発注とか、あります。ある時間(発注サイクル)でまとめれば定期発注、ある数量でまとめれば定量発注。「在庫流動モデル」でもこの発注方法は有効でしょう。

ある一定の時間サイクルで発注する定期発注では、{発注量}は発注ごとに変動しますので、定期不定量発注となります。毎回一定量を発注する定量発注では、定量に達するまでの時間がバラツキますので、定量不定期発注となります。

件数でまとめる場合、ある一定件数に達したら発注する方法を定件発注と呼んでおきましょう。定件発注では、設定件数に達するまでの時間は変動し、1件あたりの数量もバラツキますので、受注数量も一定ではありません。つまり、定件発注は不定期不定量発注となります。

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図2-1 補充発注条件;定件、定期、定量発注のイメージ

需要の基本要素は、ランダムな“時間”間隔で到着する受注“件数”と注文ごとの受注“数量”です。つまり、“時間”と“件数”と“数量”の3つの要素のいずれかを定点として需要を捉え、補充発注方法とすることができます。時間間隔を一定とする定期発注は件数と発注量がバラツキ、数量を一定とする定量発注は件数と時間が変動し、そして件数を一定とする定件発注は時間と数量が不定となります。

「適正在庫」は「在庫流動方程式」でみれば、[流動在庫]の中の{補充在庫}の分布から算出されます。{補充在庫}は{発注量}と{需要/納入LT}を合算したものです。{需要/納入LT}はどの補充発注方法でも同じですが、{発注量}は発注方法によって異なります。発注方法によってどのように{発注量}に違いが出るのか、そして{補充在庫}にどのような影響があるのか等を調べてみたいと思います。

2・3 受注件数;データ集計時間と納入LT

発注方法の検討に入る前に、確認しておきたいことがあります。受注件数は、通常、日常の在庫管理の中で都合の良い時間間隔で集計されます。日、週、月がよく使われます。一方、「在庫流動方程式」の中の{需要/納入LT}では、「納入LT」間の受注件数や受注数量となります。「納入LT」は納入業者や運送業者などにより様々ですので、それぞれの「納入LT」での受注件数や受注数量を算出する必要があります。集計時間Taでの受注件数平均をNaバー、分散をVna、として、「納入LT」;Tでの受注件数平均Nバー、分散Vnは次のようになります。

Ta

簡単に言えば、受注件数平均もその分散も時間(集計時間、納入LT、発注サイクル、、等)に比例します。

また、(数量/件)の平均Qバー、変動係数Cqから分散Vqを求めるときは次の関係式を使います。

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2・4 発注方式の評価方法について

次章以降で3つの発注方式の特徴を調べていきますが、どのような方法で調べるかについて簡単に説明しておきます。

ここまで、「在庫流動モデル」の仕組みを理解する方法として2つのアプローチをとってきました。1つは分布形状アプローチ、もう1つは平均、分散を計算する数理アプローチです。この2つの方法で、在庫管理で最も重要な「適正在庫」の決め方を検討してまいりました。各発注方法の特徴も、この流れに沿って、調べてみたいと思います。分布形状アプローチと数理アプローチを簡単にレビューしておきたいと思います。

分布形状アプローチ

分布形状アプローチは、直観的にわかりやすいのではないかと思います。(件数/納入LT)はポアッソン分布、(数量/件)はガンマ分布に近似するとします。エクセル表で両者の分布を合成して{需要/納入LT}の分布を求めます。それに発注条件を満たす{発注量}の分布を加えて、{補充在庫}の分布を求めます。サービス率と同じになるその分布の累積確率の在庫量が「適正在庫」となります。尚、エクセル表で合成した分布を「データ分布」と呼んでおきます。分布形状アプローチの流れを図2-2に例示します。

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図2-2 分布形状アプローチの流れ

数理アプローチ

数理アプローチでは(件数/集計時間)、(件数/納入LT)、(数量/件)、{需要/納入LT}、{発注量}など、それぞれの平均と分散から{補充在庫}の平均と分散を数理モデルで求めます。それぞれの確率分布形状は問いませんが、{補充在庫}は、近似する確率分布を設定し「適正在庫」を計算します。分布形状アプローチでわかるように、{補充在庫}の分布形状は正規分布やガンマ分布に近似できますので、計算で得られた{補充在庫}の平均と分散から、正規分布やガンマ分布で近似したときの「適正在庫」をエクセル関数で求めます。数理アプローチの流れを図2-3に例示します。

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図2-3 数理アプローチの流れ

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まとめ 在庫管理論の統一

大量生産時代に形成され始めた現行の在庫管理は、市場の多様化とIT技術が同時進行する中、方向性を見失っているようにみえます。論拠の不明な奇説、珍説、愚説にあふれる市販の在庫関連書をみれば、その程度は深刻。根本的な在庫管理理論の再構築が必要な時を迎えているのではないでしょうか。

在庫の動きを観察すれば、出荷→補充発注→発注残→入庫→在庫と、状態循環しながら現物は流動しています。この在庫循環の一区切りを捉え、中を覗き込むと、流動する現物がどのような物品であろうと、シンプルかつ共通のメカニズムがあることに気が付きます。これを「在庫流動モデル」としてモデル化し、それをベースに、「在庫流動管理(論)」として体系づけました。

「在庫流動モデル」での在庫の動きは「在庫流動方程式」で表されます。「在庫流動方程式」は{発注量}や(件数/納入LT)、(数量/件)の確率変数の合成で表されます。それを可能にしたのは、

・“受注件数”と“1件当りの受注数量”を識別して受注量を捉える
・受注(出荷)した分を補充発注する

の二点です。このことにより、

・発注毎に予測する定期発注方式や在庫量を発注点とする定量発注方式の発注条件を包括できる
・件数、数量/件などを確率変数のままで、“かんばん方式”のメカニズムを取り込むことができる

ようになります。これまで、“かんばん方式”は、“平準化”を前提として、バラツキを排除してきました。バラツキを何とかしようとする一般の在庫管理とは区別され、特別扱いされてきました。が、「在庫流動方程式」は、“かんばん方式”のメカニズムをベースに、バラツキを許容する確率変数を取り扱うことができます。

ここに、発注方法など、必ずしも統一感のない現行在庫管理と、バラツキを許さない異次元的な“かんばん方式”がひとつの「在庫流動方程式」で扱えるようになりました。“在庫理論の統一”ができた、といえるのではないでしょうか。

とはいっても、生産・流通環境は多種多様です。具体的な実践的応用を通じて“在庫理論統一”の有効性を証明してまいりたいと思います。

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